資料解説 クロノスエクスプレス2

「機関部先頭車両を出るとまずは一等車。客室も廊下も豪華な造りになっているわ。すべての客室にトイレとお風呂が供えつけられているの。モリアーティ教授やアバズレビッチ婦人は一等車ね」


「なぁ。あそこに掃除しているメイドがいるけど、この機関車メイドなんていたか?」


「あ、今時系列的に一章関が原の戦乙女終わった直後くらいだから当然いるわよ」


「なるほど。その後で入って来たのか」


「次は食堂車。列車の構造上一等車二等車三等車の乗客全員が同じ場所で食事をする事になるわ。朝昼晩の食事時間帯はコックがいないから当番メイドによる簡易な食事の提供になるわね。あと、厨房は二等車側にあるわ」


「ほうほう」


「で、二等車。二等車からトイレ及び浴室は共用の物を使用する事になるわ」


「なぁ。ここの開けっ放しの部屋。玩具とか絵本とかあって子供部屋みたいだぞ?」


「当然よ。子供の英雄がいるんだもの」


「子供の英雄って、どんな奴だよ?」


「関が原の直後に仲間になるわ。次は倉庫ね。食料品を始めとする物資の他、こんな事をしている人もいるわ」


 ガラ。っと眼鏡女は扉を開ける。


「おや。何かようかね二人とも」


 そこにいたのはモリアーティ教授だった。何か複雑なコンピューターの前にデーターの計測をしているらしかったが。


『うがあああ!!く、食われるううう!!!』


『おのれ化けトカゲめ、弥一殿を放せ!!!』


「あれ?なんか俺がいる?しかもなんかティラノサウルスに食われかけてんだけど?」


 モリアーティ教授はモニターに映った弥一と自分の前にいる弥一を見比べ。


「ああ。そうか。君は過去の時代から来た弥一君なのか。なるほどなるほど。これはやがて君が辿る過酷な運命だよ。せいぜい死なない様に頑張りたまえ」


『大丈夫ですか、弥一殿?』


『教授?ねぇモリアーティ教授聴いてるーーー?ドラゴン退治得意な英雄呼んでよおおお~~~~』


「おっと。『過去の弥一君』。ちょっとそこに隠れてくれたまえ。今から『現在の弥一君』と会話しないと駄目らしいからな」


 モリアーティ教授は弥一をテーブルの下に押し込んだ。


「どうしたのかね弥一君?」


『だから恐竜ってドラゴン属性でしょおおおお?竜退治得意な英雄出してよおおおおおおおお』


「私を押し入れの中に隠れ潜む青狸か何かと勘違いしていないかね?まぁいい。ドラゴン退治の英雄と言えばペルセウス。ジークフリート。そしてセントジョージだ。彼らを探したまえ。きっと力になってくれるだろう」


 教授は通信を切った。


「さ、『現在の弥一君』に出逢ってタイムパラドックスでも起こったらマズい。行きたまえ」


「教授。タイムパラドックスってなんすか?」


「んなものシロノトリガーやれば理解できるわよ」


 モリアーティ教授の代わりに即答する眼鏡女。そして弥一は三等車にやって来た。


「ここが三等車。トイレは廊下にあるけど、シャワーは二等車の奴を借りないとだめね。あと部屋は複数人で共通」


「一番扱いが悪い連中が入る所か」


「ちなみにアンタの部屋はもちろんこの三等車。一番後ろね」


「やっぱりそうなのかよ・・・」


 弥一は自分の部屋の扉を開けた。四人部屋らしい。左右に二つ。二段ベッドがある。

 そして。

 部屋の中央に布団が敷かれ、指をついて女が正座して座っていた。


「えっと。お六さん?」


「はい。六でございます」


「何してんの?」


「もちろん世継ぎを造る為に待機しておりました」


 お六の隣を素通りし、ベッドでアイドルとシャンシャンするゲームをやり始める眼鏡女。


「あ、私もこの部屋だから」


「この部屋だからって・・・」


「気にせずやってていいわよ。子造」


 弥一は考えた。如何にすべきだろうか。

 そうだ。こうしてみたらどうだろう?


「ちょっと待っててください」


 一旦自室を離れる弥一。


「ここが弥一君のお部屋なの?お邪魔して宜しいのかしら?」


 弥一はアバズレビッチ婦人を連れて来た。


「何用だ吸血鬼?」


 お六さんは刀を抜いた。


「いえ。弥一君に部屋に遊びに来て欲しいって頼まれたもので」


「貴様のような魔性の者に弥一様の寝床を跨ぐ資格などない。そうそうに立ち去るがよい!!」


「ええ?でもせっかく御呼ばれしたのですから・・・」


 アバズレビッチ婦人は弥一の部屋に足を踏み入れる。


「下郎が!!」


 お六の方は威嚇の意を込めて突きを繰り出す。するとその剣戟をアバズレビッチ婦人はドレス袖のジッパー金具で受け止めた。


「何ッ!!!?」


「アバズレちゃん~~~。ちゃんと手加減してあげなさいよ~~~」


 アイドルとシャンシャンするゲームを続ける眼鏡女。


「ええ。もちろんわかってます」


「おのれっ!!!」


 刃とジッパーが激突する音を聞きながら、弥一はベッドに潜り込んだ。


 ああ。今日はよく眠れそうだ。

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