第32話 大阪の陣1
「この事は当面伏せろ。少なくとも豊臣を倒すまでだ」
家康の死骸を前に徐福はそう宣言した。
「ふむ。死体の隠蔽かね。実に素晴らしい発想だよ」
ネバンゲリオン風モニターが現れ、モリアーティ教授が賛美する。
「いや何呑気な事言ってんだよ爺さん!!」
「いや。これは必要な行為だ弥一君。病死、事故死、暗殺問わず家康が死んだとなれば淀君は和平を保護にして打って出てくる。それでは歴史が変わってしまう。我々の敗北だ」
「じゃあどうするんだよ!?」
「死んだのは家康様の影武者です。愛妾であるこの六が確認致しました」
「そうか。妾は妻も同然。六殿が申すなら間違いないな」
「何言ってんだよ。お六さんも政宗さんも。だいたい家康死んだらこの後誰が家康軍の指揮執るんだよ?」
「そりゃまぁ」
徐福は言った。
「本物の家康殿ですな」
政宗も言った。
「家康様が御無事で何よりでした」
お六も言った。
「そういうわけだよ弥一君」
モリアーティ教授も言う。
「は?何がだよ?」
「だからいるじゃないか。この状況を知っていて、口が硬くて、本物の家康様ができる人間が」
*
「本物の武者鎧って重いんだな・・・初めて知ったわ」
弥一は人生初の武者鎧装着感想を述べた。
「家康様は六がお守りします。ご安心ください」
「幸い家康殿から作戦は賜っている。大阪城の外堀埋め立てはこの政宗が行おう」
「さて、『本物の家康様』の準備ができたところで聞くが政宗。その西洋人の忍者か妖術師は確かに『ブルータス』と名乗ったのか?」
「うむ。死んだ豊臣方の武将の鎧を盗んで化けていたらしい。どうして外の見張りは気づけなかったのだろうか?」
「それは気配遮断のスキルだな。普通に忍者の凄い奴を相手にしていると考えてくれていいぞ」
徐福がブルータスの能力について説明する。
「南蛮忍者か。合いわかった」
「ブルータスは古代ローマの実在の人物だ。この時代からおよそ1600年ほど前の人物になる」
「なんでそいつが日本にいる?」
「確実に英雄だ。出現理由はここが時空歪曲点だからだろう」
「なんで襲ってきたんだ?」
「本人に聞かないとわからないな。少なくとも奴は敵であって味方ではない。家康を『生きている』事にするから弥一。お前の護衛として俺は残るべきだろうな」
「いえ。徐福殿は政宗殿との共に兵の指揮をお取り下さい」
お六が進言する。
「何?いやしかし」
「『家康様』をお守りするのがこの六の役目でございます。どうか勤めを果たさせてくださいませ」
「わかった。弥一・・・いや『家康』の警護は君に任せる」
「あとさ。お六さん」
「なんでござりましょうか家康様」
「この鎧って本物家康がウンコ漏らした時に着てた奴だよね?なんか臭わない?」
「それ、十五年前の事じゃないですか。ちゃんと洗ってありますし、臭うわけございません」
*
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