幕間の物語 無料ガチャ4
「あら?まだ誰か出てくるみたいね」
☆3装備『FUJISANNの木刀』に続き、一人の男が召喚された。
シュバアアアアアアアアアア
「やぁ。私は日本の真面目な警官です。名前は津田三蔵という者でして・・・」
その男は確かに日本人の様だった。そして警官の制服を着ていた。ただ、若干黒っぽい色彩で、腰に警棒の代わりにサーベル。いや。あれは日本刀だ。刀を刺していた。
と、いうことはこの男は第二次大戦以前、明治大正時代の警官という事になるのだが。
「気をつけろっ!!その男、ただの警官じゃああないっ!!!幕末維新の激動の明治時代に潜んでいたという、人切りの目をしているぞっ!!!」
穏やかな表情の笑みを浮かべるその男に対し、弥一は本能的にそんな警告の声を発した。ほぼその場のノリである。だが、何故か当たっていた。
津田三蔵は弥一の警告と同時にピョートルに切りかかっていく。ピョートルもまたサーベルを抜き、津田の刀を受け止めようとした。が、明らかに力が及ばない。
ピョートルはサーベルを弾き飛ばされ、食堂のテーブルを3つほど越えて空中を飛ぶ。
だが、それは彼が態勢を立て直すチャンスでもあった。背中に背負っていたマスケットを回転しながら装填するとそのままテーブルの上に着地。走り寄る津田に向け銃弾を発射する。
しかし。
ガキィイイイン!!!
「なにぃっ!!!」
「んんーーー?知らなかったのか?銃弾はなぁあ?日本刀で切れるんだよ?くくく、いいかぁ?これは紛れもない事実!なんならヨウシベとかの動画サイトで調べてみてもいいんだぜぇ?」
そう言うとすぐそばのテーブルでお茶を飲もうとしていた仁老人から急須を奪い取った。
「ひいいぃい!何をするんじゃああああ!!!!」
「いいいかぁ?こいつは急須だぞおぉ?こいつの中にはお茶が入っているんだあ?当然、人間の飲める温度のお茶がなぁ?ほれ、爺さん飲んでみろ!!」
「うげぇ!うげげげ!!!」
津田は仁老人の口に急須を押し当て、注ぎ口から直接緑茶を飲ませた。
「な、なにをするんじゃあああ!!」
「くくく、このように人間の飲める温度のお茶だぞぉ?!そして人間の飲める温度のお茶をかけても熱膨張で銃は暴発しないからなぁ?よぉく覚えておけヨ?いや。もうすぐ死ぬ露西亜野郎には無意味な話だったかな?」
津田はお茶の入った急須をピョートルに向かって投げつける。そしてその後を追いかけるように日本刀を抜きながら迫る。
「くたばれイワンの糞やろうがっ!!!」
「く、こいつっ・・・!!!」
ピョートルはマスケット銃を構えた。しかし。
銃弾が発射されない。
弾丸も火薬も装填済みである。ならばなぜ。
「火縄がっ・・・!!」
そう。先ほどの熱膨張どうたら御託はピョートルの気をそらす為の演技だったのだ。そして本命は旧式のマスケット。すなわち火縄銃を撃つために必要な火縄に緑茶の水分をかけ、その火を消す事だったのである。
火の消えた火縄のついたマスケット銃の銃口を津田は自らの胸に押し当てた。
「これがゼロ距離射撃ってやつだ?命中率はもちろん百パーセントだぞぉ?もっとも、その湿気た火縄じゃあ弾丸を撃つ事なんてできやしないがな?つまりこの俺の」
津田は刀を振り上げる。
「日本刀こそが最強なのだッ!!!」
ガキィイイイン
「申し訳ございませんお客様。切符を拝見できますでしょうか?」
振り下ろした刀は突然現れた金属製のスパナによって受け止められた。
「貴様はっ!!イギリス人かっ!!!?」
「はい。このクロノスエクスプレスで車掌をしているスチーブンソンという者です」
スチーブンソンは帽子を被り直しながら名乗った。
「・・・イギリス人じゃあ切り殺せねぇな。命拾いしたな」
津田は去ろうとした。
「お待ちください。お客様」
「なんだ?」
「まだ切符を拝見しておりません」
そうだ。切符である。もしもっていなければスチーブンソンは遠慮なくこいつを。津田を『お仕事』で処理するだろう。
「ほらよ」
持っていた。
「拝見します。確かに確認しました。津田様は三等車のお客様ですね。どうぞ」
切符を確認された津田は去って行く。
「なんかこう。日本刀片手に異世界人を切り殺しまくる日本人転生者みたいだったな」
「あながち間違っておらんぞ弥一。あの津田という男。そのうちお主の敵に回るであろう」
仁老人は椅子につかまりながらよろよろと立ち上がる。
「いや。もう敵のような気がするんだけど?」
「あ奴はどういうわけか露西亜人を憎んでおる。露西亜の民が友好を望んでいるにも関わらず、それを憎悪で迎える。歪んだ正義感に囚われ、不必要な争いを引き起こすであろう」
「追い出した方がいいんじゃないかなぁ?」
「逆に言えば手近に置いておき、その動きを探る事もできよう。少なくともあ奴の動きに対応できる信頼できる英雄が必要であろうな」
「じゃあとりあえずこのピョートルって奴を鍛えて津田って奴に負けないようにした方がいいのかな?」
「そ奴を鍛える?誰がじゃ?」
「え?爺さんなんかそういうの得意そうだし手伝ってくれるんだろ?」
「儂も露西亜は嫌いでの。そ奴を鍛えるなら弥一。お主が勝手にやれ」
「おいおい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます