幕間の物語 無料ガチャ3

 シュバアアアアアアアアアア


 再び英雄が召喚された。なんだかナポレオンが着ているような軍服を着た若い男だ。


「よう。俺はピョートル。クラスはアーチャーになるのかな?よろしくな」


 マスケット銃を携えた青年はそう名乗った。


「ええっと、ナポレオン・・・じゃあないな?ヨーロッパ人だと思うけど。そもそも何処の国の人なんだアンタ?」


「そうだな。お前イヴァン雷帝って知っているか?」


 そのピョートルの質問に対し、弥一は自信たっぷりにこう答えた。


「もちろん知っているさ!!イヴァン雷帝はマイナス100度の世界で生きるマンモスの怪物で狼男の群れを率いて襲ってくるんだ!!!」


 ヒュン!!


 その瞬間血だまりに沈んでいたはずのオムツライオンが消えた。

 と、次の瞬間!


「余は、イヴァン雷帝である」


「う、ぐあああああああああああ!!!!!!!」


 オムツライオンは弥一の後頭部に瞬時に移動し、その皮膚に爪を立て、頭蓋骨に穴を開け始めた!!!


「こ、こいつ!!は、はなれ!!離れろっ!!!!」


 弥一は頭の後ろに手を回し、オムツライオンを引きはがそうとした。しかし。


「んぎゃあああああ!!!」


 激痛が走る。


「駄目よ弥一!オムツライオンはギャグ世界の住人よ!!例え魔法学科の特別扱い生だろうとどんな相手でも瞬時に殺せる能力を持ったイキリ異世界太郎であったとしてもギャグキャラだけは倒せないわ!!!」


 眼鏡女の言うとおりだ。引きはがそうと力を込めるとその分のダメージはすべて弥一に跳ね返ってくるのだ。


 だらだららだらだら~~~~~


 弥一の髪の毛に粘液質の液体がへばりついていく。


 ぐぎゅっるううるるるうる~~~~~

 

「雷帝は空腹であるぞ。第二次大戦中の上野動物園の動物達に飼育員が最後の晩餐を運ぶような面持ちでこのイヴァンに食事を用意するのだ」


「大変よ弥一!今のはオムツライオンの腹の虫の音!!このままではオムツライオンは貴方の頭蓋骨を破壊し、その脳を生きたまま食い荒らす!!そうなったら最後、弥一はアヘ顔ダブルピースしながら死ぬことになるのよっ!!!」


「くっ、どうすればいいんだっ!!!!」


「最後のチャンスよ弥一!!!」


 眼鏡女は一人の少女を連れてきた。


「さっきピョートルと一緒に無料ガチャから出てきた女の子よ!この娘がどこの何者か当てるのよ!そうすればオムツライオンは消滅するわっ!!!」


 眼鏡女が連れて来た少女。その娘は。


 革(レザー)のドレス。

 革(レザー)のオペラグローブ。

 革(レザー)のハイソックス。

 革(レザー)の鞭(ウィップ)。

 そして純金製の王冠を被った、ロリッ娘だった。


「あらあら?私に飼われて欲しい王様は貴方なのね?いいわ。たっぷりと躾けてあげる。大喜びで火の輪くぐりができるくらいにね!!」


 この少女はどうみても・・・。


「これ、実在の英雄なんだな?」


「そうよ弥一!異世界から連れて来た奴隷なんかじゃないわ!現実世界の英雄よ!!」


「マジで史実の人物なんだな?」


「そうよ弥一!!彼女の鞭一つで皇帝すら膝まづくのよっ!!歴史通りにねっ!!」


 弥一は一瞬にして思考を巡らせた。それはオムツライオンの爪が弥一の頭蓋骨を砕き、その大脳に届くよりも早く、短い時間であった。


「彼女は」


「彼女は?!」


 そう。これしか考えられない。


「彼女は。古代ローマの闘技場で猛獣と戦った少女奴隷剣闘士だっ!!!」


 次の瞬間虚空から大量の腕が伸び、オムツライオンを掴んでバラバラに引き裂いた。


「ウガgッヤオオアオyゴアオアオオアオアオア!!!!!!」


「ふうぅ。どうやら正解だったみたいだな・・・」


 弥一は荒い息を尽きながら立ち上がる。


「あら?どうしてこのテアドラ様が古代ローマの闘技場にいた奴隷だってわかったのかしら?付け加えるとその闘技場に見物に来たローマ皇帝と結婚して皇后になったのだけれど」


「マジか。やはり歴史上の史実って奴は異世界よりも遥かにすげえゼ」


「どらエモントノビた『この戦争はもうすぐ終わるよ、そして日本が負けるの』!!」


「東京大空襲の日に時間移動して、2度と戻ってくんじゃねぇ!!」


 バラバラに吹っ飛んでいくオムツライオンに向かって弥一はそんな罵声を浴びせかけた。

 

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