幕間の物語 無料ガチャ2

 こんぼう、布の服、ヒノキの棒、銅の剣、銅の剣、布の服・・・・。

 次々とゴミ装備が召喚陣から排出されていく。流石は無償ガチャだ。使える装備や魔法どころか売値10ゴールドのゴミしか出てきやしねぇ。

 と、思ったら。


 シュバアアアアアアアアアアアアア


「ん?呼ばれたかのう?儂の名は合天弘運文武睿哲恭倹寛裕孝敬誠信功徳大成仁皇帝」


「なっがっ!!!!」


 なんかボロ布を着て、クマの毛皮を背負った爺さんが出てきた。


オムツライオン「やぁ弥一君。僕は仁皇帝」


「なんつーか。中国の仙人みたいな爺さんだよなアンタ」


オムツライオン「ダグラムッ!!!」


 オムツライオンは全身の穴という穴から血を流し、鮮血の海に沈んだ。


「ほうほう。お前さんの目には儂が仙人に見えるか。ちと違う気もするが。まぁ悪い気はせんな」


 老人は白い髭を触りながら椅子に座る。


「ところでお主。見たところ西洋人ではないようだが清のどこら辺に住んでおるのだ?」


「清?昔の中国の事かな?俺中国人じゃなくて日本人なんすけど」


「日本?はて。儂の国にそんな場所あったかのう?」


「あ、いやだから中国じゃないって」


 弥一の代わりに眼鏡女が説明する事にした。


「仁陛下。弥一の住む国は清の東夷の海にある島国ですよ」


「んー?東夷の島とな?そういえば昔始皇帝の部下の徐福とやらが渡り、不老不死の薬を飲んで王となったと聞いた事があるが」


「あ、徐福さんいますよ。王じゃなくて教育係やってたみたいですけど。後でお会いになりますか」


「ま、それもよかろう。ところで弥一とやら。その日本とやらの皇帝はよい皇帝なのか?」


「日本の皇帝?総理大臣の事かな?」


「なんという皇帝なのじゃ?」


「皇帝じゃなくて総理大臣ですね。タミツムゾーって言います」


「例えばだ。儂の頃、露西亜。という国が清の北にあった。今でもあるかのう?」


「ありますね」


「儂が生きておった頃その露西亜と戦争になったことがあってのう。このような爺ゆえ、自ら戦場に立つわけにもいかん。やむなく兵を送った。ところで弥一。お前の国に海を渡ってイカ臭い釣り漁船に乗って盗賊共が押し寄せ、屋根瓦から便所の取っ手まで盗むような事があったとしよう。そのタミツムゾーという皇帝は軍を送り、民を守ってくれるのか?」


 仁という老人の問いに対し、弥一は首を振った。


「いいえ。守ってくれません」


「ああ。如何如何。そういう時はきちんと兵を送り、盗賊共を殺してでも民を守らねばならぬのだ。一体何を考えているのだそのタミツムゾーという男は。完全に皇帝失格ではないのか。ところで、日本の民は豊かに暮らしておるのか?」


 仁という老人の問いに対し、弥一は首を振った。


「いいえ。一向に景気は回復せず、また消費税は増税されます」


「ああ。如何如何。税は安くせねば民の暮らしは楽にならぬのだ。その一方で景気をよくするよう適切な施策を取らねばならぬのだ。一体何を考えているのだそのタミツムゾーという男は。完全に皇帝失格ではないのか。ところで、日本の財政は安定しておるのか?」


 仁という老人の問いに対し、弥一は首を振った。


「いいえ。赤字国債は膨らむ一方で百兆円の大台を突破しました」


「ああ。如何如何。税は減らしたうえで財政は健全化せねばならぬのだ。そのうえで必要な政策にかける費用はねん出するのだ。一体何を考えているのだそのタミツムゾーという男は。完全に皇帝失格ではないのか」


「いや。それ無理っしょ。税金取らずに国家予算造るなんて」


「儂はやったぞ?」


 仁老人はさも当然と言った風に語る。異世界転生した日本人が腕試しに魔法学科の練習場ごと百万人の都市を吹き飛ばして『こんな事たいしたことじゃねーよアーハハハハハ!!!』と笑い転げているくらい当然と言ったくらいに語る。


「ええええ・・・・・」


「弥一とやら。お主満漢全席は知っているか?」


「今、急速な経済成長を遂げた中国で流行ってますね。食事の度に十皿ほど料理を用意して、そのうち一皿程しか食べなくて、残りを捨てちゃう奴ですよね?」


「なんと!!儂の清は今そのような事になっておるのか!!如何如何!!贅沢はいかん!!一億人が満漢全席をしてしまう。すると食事の量は10億人分じゃ。つまり清国民が満漢全席をやめるだけで9億人分の食料が確保できるのじゃ!!!」


「今中国にあるの清じゃないですけどね」


「さて、儂が皇帝になったころは宮廷では贅沢をするのが当たり前じゃったのだ。故にそれをすべて改めさせた。食事の皿が30あるとしよう。チャーハンやラーメンなどの主食が10皿あるなら雑穀飯一つ。八宝菜や酢豚などの副菜は焼き魚一つ。汁物はサメ一匹から1パーセントしか取れないこれこそ無駄の極みのフカヒレをやめ、豆腐の味噌汁とした。このようにすれば3皿で済むであろう?服も金糸をあしらった絹をやめ、麻や木綿、あるいは毛皮のみとしたのだ。こうして贅沢をやめれば金はいくらでも容易できたのじゃ。そして容易できた金で税を安くし、国境に兵を送り、清の民の暮らしを守ったのじゃ」


「仙人だ!!ただの仙人だよこの人!!!!」


「ところで弥一とやら。お主の国。日本の住人達は幸せかのう?タミツムゾーとかいう皇帝だけが贅沢をしているような国ではないのか?」


「えぇええと。それは・・・」


 弥一は渋い顔になった。


「ああ。如何如何。皇帝の為に民があるのではない。民があってこその皇帝なのだ。決して皇帝や役人が贅沢などをしてはいかん。それが理解できない国ならばいっそ滅んでしまった方がよい。そうさのう。儂の国、清の一部になった方がその日本の民は幸せではないのかな?」


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