第20話 魔王「勇者の子孫よ。儂の世界征服に手を貸すがよい」

「氏姫は当初田舎暮らしを毛嫌っていたが、鮎釣りをしてれば幸せという国朝の素朴な人柄に徐々に惹かれ、貧しいながらも幸せな暮らしをしていた」


「ならめでたしめでたしで終了じゃね?何の問題もないだろ」


「問題はその後だ。1590年小田原氏を皆殺しにした秀吉にした宇都宮に向かっていたが、その途中で古賀喜連川に立ち寄った。その一行は織田信勝羽柴秀吉秀勝宇喜多秀家長岡忠興池田輝政長谷川秀一丹波長重」


「多いよ!!」


「八万の小田原軍を倍を越す二十万の兵でボコった凱旋の途中だからな。直接国元に帰った者も多かったが、それでもかなりの兵が古賀を訪れた。彼らに用意する食事の支度で氏姫達は大忙しだった」


「まぁ握り飯だけでも二十万個になるからな。喜連川領内の村人集めて千人で握っても一人二百個か」


「そんな多忙な中、氏姫は派手な格好をした老人に呼び止められた」



「これ娘。今宵の夜伽をいたせ」


「はっ?あんた誰?」


「ほっほっほっ。儂は豊臣秀吉。誰もが知る天下人ぞ。儂の妾になれ。悪い思いはさせんぞ」



「が、秀吉は元農民の成り上がりもの。それに加えて成金趣味のジジイ。没落貴族ながらも気意の高い氏姫はなびく様な事はなかった」



「お言葉ですが太閤様にはねね様がいらっしゃるでしょう」


「いや。だから側室としてだな」


「ならばこそ。側室なら淀の方様という私よりお美しい素晴らしい御婦人がおります。では、私は秀吉様の連れた兵の皆様に握り飯を御用意せねばなりませんので」


「なっ!儂の相手をするより握り飯を造る方が大事と申すかっ!!」


 憤慨する秀吉。


「ぬううう!!あの女どうしてくれよう・・・」


「あ、秀吉様。御相談したいことが」


「なんじゃ!儂は忙しいんじゃ!!」


「あ、そうですか。朝鮮出兵についてについてご相談だったのですが。お疲れのようですし、また後にしますね」


「おい。小早川。今なんと言った?」


 その日の晩。喜連川国朝は秀吉に呼び出された。


「お呼びでしょうか。太閤様」


「うむ。実はな。儂は李氏朝鮮に兵を送ろうと思う」


「李氏朝鮮?この日本に左様な地がありましたか?」


「海を越えた大陸にある土地よ。天下は取ったからな。次は世界を手に入れる」


「お言葉ですが太閤様。太閤様は既に日本の国の武士の頂点になられた御方。これ以上戰を続ける理由はないかと」


「国朝。貴様は自分の女房を山奥の一万石少々の狭い土地に押し込めておくつもりか?大名行列が来るたびに奥方自ら握り飯を造られねばならぬような辛い暮らしをいつまでさせておくつもりだ?」


「そ、それは・・・」


「朝鮮に兵を送るのだ。もちろん国朝貴様自らが率いて、な。ほんの少しばかり儂に忠義を示してくれれば、そなたに尾張の国十八万石を進呈しようぞ?」


「尾張十八万石!それは誠ですか!!?」


「ああ。せいぜいがんばるといい」



「おい。どう考えてもこれ世界の半分くれてやろう的な提案じゃねーか」


「ちなみに史実だ」


「はいって言っちゃったのか?」


「次朝鮮半島行くぞ」


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