第19話 清和源氏始祖源頼光には当然子孫がいるのです

 弥一と徐福はクロノスエクスプレスから降り立った。いよいよ戦国時代である。


「さっき仲間にした政宗達だが、まだレベル1らしい。だが安心しろ。列車のシュミレーターの中でモリアーティ教授が訓練しておいてくれるそうだ。つまり放置しておくだけで勝手にレベルが上がる」


「素晴らしいな!どんどん放置しよう!!」


「さて。長かった戦国時代も尾張。いや終わりをつげる。天下統一目前で織田信長が非業の死を遂げた後、全国大名の頂点に君臨するのは一時的に豊臣秀吉となった」


「ようやくここまで来たな」


「秀吉のいる大阪城に参賀し、自領に戻る途中の侍がいた」


「あ、伊達政宗だ」


「よくわかったな」


「だって眼帯してるし。でも、なんでいるの?列車の中で訓練してるはずじゃ?」


「あれはこの時代の、英雄になる前の政宗だ。そして一緒にいる侍は?」


「お共のモブ侍じゃね?」


「喜連川国朝。仲間にしただろ」


 二人の武士は京都のさる屋敷を訪れた。


「失礼する。拙者は旅の者で下総国古河から参った喜連川国朝と申すもの。こちらは奥州の伊達政宗。御迷惑でなければ馬屋でもどこでもよい。一晩の宿をお借りしたいのだが」


「これはこれは。遠いところ遠路はるばるお疲れでしょう。斯様なボロ屋敷でよければ。ささ、どうぞどうぞ」


 館の主らしき男の許可を得て、伊達政宗と喜連川と名乗る侍は屋敷に入っていく。が。


「てかマジでボロ屋敷だな。あの貴族。マジで京都の貴族か?着てる服もなんかボロッちかったぞ」


 そんな弥一の声が聴こえていたのかどうかはわからないが。屋敷の主である貧乏っぽい貴族と喜連川が会話する。


「やはり京都も戦が激しいのでありますか?」


 喜連川が尋ねる。


「ええ。この前の応仁の乱の時など焼かれ申したな」


「応仁の乱っていつだよ・・・」


「1467年だからほんの少し前だな」


 政宗たちに見つからないよう隠蔽の魔法をかけると、徐福と弥一は屋敷の中に忍び込んだ。

 屋敷では白米飯とナス漬物。ニボシ干物。味付けにショウユ、はなくて皿に盛った塩!味噌汁はなくて味噌そのものが碗に乗せられている。


「おい徐福。これが京都の貴族食事か?」


「弥一。仮にお前が客としてこの屋敷を訪れたら残さず喰え。それが礼儀だ。この食事にかかった費用はこの貴族の一週間分の食費を越えている」


「ほう!それでは喜連川様はかの勇猛な源頼光様の御子孫であらせられるのかっ!!」


「父上。宿代はきちんと払って貰えるのでしょうね?」


 美しい娘が濁った酒を喜連川の盃に注ぐ。


「何を申す!源頼光と申せば清和源氏の開祖にして数多の魑魅魍魎を葬った英傑!!渡辺綱坂田金時らを連れ、朱点童子を討ち滅ぼしたのだ!!それは見事な活躍で・・・そうじゃ!当家は落ちぶれたとはいえ足利尊氏の末裔。我が娘氏姫を是非とも嫁に貰ってはくれまいか?」


「いや?それならば政宗公の方が領土も広く御家の嫁ぎ先としては相応しいのでは?」


「いやいや。源氏の子孫であれば名門中の名門。ならば家柄としても問題なかろう」


「こうして、落ちぶれた足利家の子孫氏姫は源氏の子孫喜連川国朝と結婚することになった」


「ふーん。で、これって重要な事か徐福?」


「弥一。この家系図を見ろ」


 半透明な家系図が表示された。


源頼光

足利公方=分家=小弓御所

足利尊氏=足利義明

足利氏姫=喜連川国朝


「なにこれ?」


「氏姫も国朝も先祖を辿っていくと源氏の開祖源頼光に行きつく。そして分かれた二家がおおよそ1000年ぶりに一つになった。という話だ」


「これマジ?」


「歴史上の史実だぞ」

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