第21話 毎年漁船で日本に来ないでください
「秀吉によって朝鮮半島に送られたの兵士は十五万人。(資料によって違いあり)。その中には伊達政宗や喜連川国朝がいた。彼らは明軍、現在の中国からの援助を受けた朝鮮の軍隊の猛反撃により、苦戦を強いられていた」
*歴史上の史実です。ネトウヨの皆さん怒らないように。
*
「しっかりめされよ国朝殿」
「ゴホッゴホッ!あまりそれがしに近づかぬ方がよい政宗殿。移るやもしれぬ」
「貴殿は国元に女房子供がおるのであろう?必ず帰られねば」
「政宗様。食事の御用意ができました」
「おお。粥ができたか!・・・なんだこれは?」
部下の兵士が持ってきたのは、政宗が非常食として用意してあったかまぼこであった。
「なんだこれはっ?!非常食のかまぼこではないかっ!!?米はどうしたのだっ!!」
「いえ、米はもうないので・・・」
「そんな馬鹿なっ!!ここは本陣に近いのだぞっ!!補給が来ないなどという事はないっ!!!」
政宗達は本陣に向かう。だがそこはもぬけの殻であった。
「ま、まさか我らは見捨てられたというのかっ!!!?」
*
「えっ?これマジ?」
「史実として朝鮮出兵で送られた兵士の死因の大半は病死と餓死だ。秀吉は朝鮮に送った兵に援軍は愚かろくに食料も送らなかった。と、言ってもこのままでは流石にマズいな。伊達政宗が死んでしまう」
*
「くっ、こうなれば一兵でも多くの敵兵を・・・」
「いやいやそうやけになるもんじゃないよ」
タイムシフトで移動した徐福はフレンドリーに政宗に語り掛ける。
「何者だ?其方は?」
「あ、俺は徐福ってもんで船についてはそれなりに詳しいもんですがね。あんたらが今いる朝鮮と日本の間には海があるでしょう?」
「そうだ。だから我らは日本に帰ることはできない。ここで死ぬしか」
「東の海岸からイカ臭い漁船に乗って海を越えれば日本に辿り着けますよ」
「なに?朝鮮半島の海岸からイカ臭い漁船に乗って海を越えて日本に向かうだと?本当にたどり着けるのか?!」
「いや。徐福!!確かに辿り着いてる人いるよ!!イカ臭い漁船に乗って日本に来ている人がっ!!」
「それだけじゃあありませんよ。きっと今から400年くらいしたら遭難したイカ臭い釣り漁船を南朝鮮の軍艦が救助する体制だって整えられてますって」
「いや整えられるけど!400年後は南朝鮮の軍艦が北朝鮮のイカ臭い釣り漁船を救助っていうか食料と弾薬と燃料とか色々渡しちゃってるよきっと原子爆弾の材料とかも渡しちゃってるだよねお礼に偽札とか麻薬とか受け取ったりしちゃってるんだよね?」
「しかも国連の条約違反じゃないかって武装していない偵察機が監視しに行くと恐ろしい威嚇攻撃したのでミサイルのロックオンをするとか言い出す連中だからな。あいつらよっぽど仲がいいんだろうな」
「そなた達の言う事はよくわからぬが東の海岸からイカ臭い釣り漁船に乗って海を越えればよいのだな?」
「まぁそーゆーことです」
「あいわかった。さぁ行くぞ国朝殿」
「・・・拙者は置いていけ」
「何を申される!!」
「政宗殿はともかく、病人怪我人は日本海の荒波を越える事はできまい。置いて行かれるがよかろう」
「何を弱気な事を!!」
「但し頼みがある。子々孫々まで伝えるのだ。日本の民は海を越えて戦をしてはならぬ。必ず災いがおきると。そして」
国朝は小刀を渡した。
「秀吉の甘言に惑わされ、海の向こうを目指した愚かな夫を許して欲しい。そう妻に伝えてほしい。グフッ!!」
「しかと!しかと分かり申したぞっ!!」
「おい!喜連川さん死んじゃったぞ!!大丈夫なのかっ!!!?」
「史実通りだから問題ないぞ」
*この戦いでの戦病死者数は五万を超えたとも言われている。正確数不明。
*
「いやぁ病死した戦友の遺体を抱えて海の向こうの故郷の日本を見ながらむせび鳴く政宗ってホント絵になるわぁ」
クロノスエクスプレスから降りて来た天照は写メを撮りながらそんな呑気な事を言った。
「お前、何をそんな呑気な事言って・・・あ、そうだ!!」
弥一はふと閃いた。
「クロノスエクスプレスだ!この鉄道は時空を移動できるんだろう?なら政宗達を乗せて日本まで帰ればいいじゃないか!そうすれば」
「却下」
天照は冷たく言い放った。
「何か忘れてないかなあ?私達はね。世界の歴史を守るためにここにきているんだよ?秀吉の朝鮮出兵は日本側の『敗北』で終わっている。だから多大な人的損失を出しつつ撤退しなければならない。そうしなければ歴史通りにならない。そうでなければ誤った歴史になってしまう。もしそれが嫌なら」
天照は日本海の荒波をバックに振り向いた。しかし眼鏡を外さない。だから表情はよくわからない。
「その程度の覚悟がなければ人類の歴史を守る。なんてことは言わない事だ」
「お、おう。もちろんやってやるさ!!」
「結構。政宗が日本に帰国したのを確認したら私達も次の時代に移動するよ」
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