第34話 大阪城落城
「と、いうことがあったたのでございます」
お六の方が無事大阪城を攻め落とした徐福、政宗達に報告した。
「ほー。で、弥一の奴は?」
「ボクのスマフォのちからがあああああああああああああああ!!!!!!??????????」
弥一は砕けちったスマートフォンを前に泣き叫んでいった。
「落ち着きなさい弥一」
クロノスエクスプレスから外出する眼鏡女。珍しいこともあるものだ。
「弥一マン!新しいスマフォよっ!!」
眼鏡女は真新しいスマートフォンを弥一に渡した。しかし。
「おいこれ、『ワールドヒーローズオペレーション』のアプリすらインストールされてねぇーぞ!!」
「んぬふふふ。そんな事だろうと思ってこの天照ちゃんには抜かりないのであった。以前にお借りした際に引き継ぎコードを内緒で発行させてもらっていますよ」
「引継ぎコード?」
「まず『ワールドヒーローズオペレーション』のアプリをインストールしてみい」
弥一は眼鏡女に指示された通りにインストールする。
「で、こちらの引継ぎコードをタイトル画面で入力する」
「これでいいのか?」
「これで弥一のゲームデータは無事復活するわ」
「危ない所だった・・・」
「ゲームデータというのは簡単に消滅する物だわ。セーブデータシステムが一般に普及したのはファミリーコンピュータのゲームソフト『ドラゴンウォリアー3』だと言われている。だが、当時は技術的問題においてゲームデータの保存の脆弱性が極めて深刻で、ゲーム機の上に猫が乗っただけで数十時間のプレイタイム、レベリングの成果、レアアイテムが消失したという」
「人類の歴史の記録はそんな簡単にも壊れてしまうのか!ようやく理解できたぜ!!」
「ところで弥一殿。この女子(おなご)であるが・・・」
政宗が尋ねるのは赤毛のライフル銃を持った女性である。
「あ、政宗さん。アメリカ・・・この時代の言い方で言うとメリケン国か。そっから俺達を助けに来てくれたアン・シャーリーって人だよ」
「ナイステ・ミー・チュー♡」
投げキッスを送るアン。
「いや。その南蛮人はよい。その背後にいるのはよもや」
そう。アンの背後にはバルキリーの集団が整列していた。
「あ、この娘達?えっと、15年くらい前、関が原ってところで怪我してたところをあたしが助けたんらなんか懐かれちゃってね。まぁそのうち何体かはあたしが撃ち落としているんだけど」
と、アンは苦笑い。
「それなのになんで助けているんですか?」
「いやね。なんか撃ち落としたのはいいのよ。そしたら地元のサムライ?連中が馬の糞を持ってこの娘達に近づいていくから。いやいや拷問するにもあんまりじゃないって。で、そいつらぶっ殺してしょうがないから赤十字的な事やってたらリーダーやって欲しいって頼まれちゃってさぁ」
「リーダーやってるのはわかりますが、馬糞っていうのはなんなんだ・・・」
「それはこの時代の医療技術レベルが原因だ」
徐福が口を出す。
「この時代は医療技術が未発達でな。まぁ日本だけに限った事ではないが、この時代の日本の医者は怪我の治療に馬糞を用いていたんだ」
「そんな!馬糞なんて傷口に塗ったら死んじゃうよ!!」
「仕方あるまい。近代医療の確立はフローレンス・ナイチンゲールの登場を待たなければならない。古代ギリシャですらバターが傷薬になると信じていたらしいぞ」
「ともかくこれで豊臣は倒したんだし、世界は平和になるんだろ?」
「その通り、今回の我々のミッションは終了だ」
柳沢吉保を伴い、モリアーティ教授が現れた。
「ともあれ、これで天下泰平の徳川の世が訪れるわけじゃな。いやあ、まことめでたいめでたい」
「でも家康死んじゃってますよね?」
「世継ぎなら息子の秀忠、孫の家光さまがおる。政宗公も幕府の臣下として迎え入れられるじゃろう。それにほれ」
柳沢は豪奢な着物をお六の方に渡した。
「城にあった物じゃ。城ごと燃え尽きては意味がないからのう。これを着て嫁にでも行くがよい。家康公の愛妾であれば娘同様。他家と徳川の結びつきを強くするにはもってこいであろう?」
お六の方は着物に目をやった。金銀の刺繍をあしらった、豪奢な着物である。
「大阪城から盗んできた物か?」
「そう申したではないか。少々苦労したぞ」
「火事場泥棒とは。お主本当に徳川の臣下か?」
「儂ほど将軍を、徳川家を大事に思うておる者はそうそうおらぬぞ?」
お六の方は柳沢に豪華な着物を突き返した。
「徳川と他家との結びつきを強める為の縁談は考えておこう。だが趣味の悪いこの着物はいらん」
「そうかそうか。ではこの着物は質屋にでも売る事にしよう」
*
数時間前。大阪城から少し離れた森の中。
「さぁさこちらですよ淀君様」
「おお!柳沢とやら、助かるぞ!!」
「マンマアアア!!こあいよおおおおお!!!!」
「走るのだ秀頼!大阪城を家康の軍勢が取り囲んでるうちに我らは逃げ延びようぞ!!」
「しかし淀君様。大阪城が落ちた今、どうなさるおつもりですかな?」
柳沢が尋ねる。
「そうさな。四国の毛利を頼ろうかそれとも九州の島津の島津であろうか」
その進路を遮るように一人の西洋人が現れた。
「おやおや。かつて日本の支配者を目指した御方とは思えませんなぁ」
「お主はっ?」
「ご紹介いたします。こちらは儂の友人でイギリス、エゲレス国のジェームズ・モリアーティという御仁ですぞ」
「おおっ!!そうじゃ!南蛮に逃れるという手もあるなっ!!」
「それには及びませぬ。もっと良い場所がございます」
柳沢は懐からあるものを取り出した。
「なんじゃそれは?火縄銃に似ておるが?」
「これは単筒。西洋ではぴすとる、と申しております。使い方はほれこのように」
パァン!
中々お上手。一発で秀頼は倒れた。
「ひ、ひでよりいいいいいいい!!!!!????」
「実は同じものを私も持っていましてなぁ」
モリアーティは持っていたステッキの先を淀君に向ける。
バン!
先端から煙が出た瞬間、淀君も倒れた。
「ふぅ。なぜこの柳沢が暗殺者の真似事などせねばならぬのだ?」
「仕方ないよね。君が召喚したブルータス君がよりにもよって家康公を殺しちゃうんだもん。ちゃんと責任を取って貰わないと」
「まさか大将首を取って来いと命じたら、豊臣ではなく徳川の大将の首を狙うとはな・・・」
「当然だろう?大阪城の戦いの時点で天下取り、つまり日本の支配者に一番近かったのは淀君でも秀頼でもない。徳川家康なんだ。その状況下で皇帝を殺してこい。なんて命令されれば家康を殺しに行くでしょ?」
ガサガサガサガサ
草をかき分ける物音がした。銃弾を素早く再装填し、二人は銃口を向ける。出てきたのは地元民らしい農民だった。
「今のみた?」
「あ、あんたらも落ち武者狩りだべか?」
竹槍を持った農民は聞いてきた。さてどうすべきか。
「喧嘩はよくない。ここは仲良く山分けにしよう」
柳沢は淀君から手早く着物を剥ぎ取った。
「そっちの男の服はお主にくれてやる。ではさらば」
「お、おう。達者でな」
二人は地元農民とそそくさと別れた。
「しかしよかったのかね?」
「生きておればあの農夫がトドメを刺す。間違いなく。それにな」
柳沢は淀君の着物の中から袋を取り出した。
「財布というのは母親が管理しているものだぞ?」
「はは、こ奴め!!」
汚い。流石柳沢汚い。
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