第28話 決戦前夜2
1615年大阪城。次に弥一と徐福がクロノスエクスプレスで移動した場所はそこだった。
「家康さんちっーす」
「む?お主らは確か関ケ原で世話になった・・・確か・・・何と申したかのう?」
「弥一です」
「俺は徐福だ」
「お主ら15年前と比べてちっとも年とっておらんのう」
「えっ?!」
家康の指摘はもっともである。弥一達はクロノスエクスプレス。つまり時空移動で15秒で移動してきたが家康達は普通に15年かけてこの大阪の陣にきているのである。
「いやいや。今まで黙っていましたが私徐福は大陸から渡って来た仙人でして。この弥一はその弟子なのです。だから十年二十年程度では老いたりしないのですよ」
嘘はついてない。
「そうだったのか。なら一つ不老長寿の妙薬の造り方でも教えてくれんかのう」
「仙薬を手に入れるのは遠地に足を延ばせばなりませぬが。まぁ簡単にできる健康法としては塩辛い物を避けるのが肝要。体の水が抜けて干物になってしまいますからな。あとは魚や肉などには仙道用語で『たんぱくしつ』なるものが多分に含まれておりますので体に良いですぞ」
「ふむふむ参考になるぞい」
家康に向かってなんかそれっぽい事をいう徐福。まるでテレビの健康番組を視聴する老人のようだ。
「お久しぶりです、弥一殿。徐福殿」
政宗もいた。少々鎧の形状も変わっているが、元気そうだ。
「元気そうで何よりです。お勝・・・いえお六さんでしたか?あの方もこの戦いに参加なされているんでしょ?」
「そのことなのですが・・・少々困ったことがありまして」
政宗は顔を曇らせた。
「どうかなさいました?」
「実はお六殿は斥候役を賜り、大阪城に設置された真田丸なる要塞の周辺を調べていたのです。その際赤い鎧を着た兵の集団に取り囲まれ、捕えられたの事」
「真田丸?なんぞそれ??」
「名将真田幸村が構築した難攻不落の城塞だ。突貫工事ながらも家康軍を寄せ付けない仕掛けが何重にも備えつけられていたと聞く」
徐福が簡単に説明した。
「その後、真田丸から大阪城に移送される様子を配下の者が確認しております。まだ存命中と思われますが、家康様に報告したところ、捨て置け。総攻撃前の大事な時に兵は避けぬと」
「モリアーティ教授。今の説明聞いたか?」
徐福はモリアーティ教授を呼び出した。
「バッチシ聞いてたよん」
空中に出現するネバンゲリオン風モニター。
「この半透明な動く絵は何でありますかな?」
「私はモリアーティ。徐福君同様、『仙人』という奴さ。で、要件は?」
「教授。このままお六の方が死亡した場合の後世における影響を算出してくれ」
「了解」
暫しモニターから消える教授。
「結果が出た。彼女こそが今回の時空歪曲点のキーだ」
「ちょっとまあええてやああああ!!!家康の愛人の一人だろうがあああ!!!!」
「うん。そうなんだけどね。ここで彼女が処刑されたりするとマズい。今は詳しく言えないけど、彼女を助けておかないと徳川江戸幕府が滅んじゃうんだよ」
「そういうわけで俺達はお六さんを救出する事にする」
「おおかたじけない徐福殿!」
「いや!女の子を助けに行くのはいいけど家康の愛人一人で江戸幕府滅ぶの?!ねぇなんで!!??」
「ついては適任者を用意する」
*
「私忙しいから」
クロノスエクスプレスから降りて来た天照はアイドルとシャンシャンするゲームをしながらそう言った。
「あのうーー。この前天照さん言いましたよね?覚悟決めて人類の歴史守れって」
「うん言った」
きみと~なつのたいよ~♪さんごしょ~♪
返事と共にゲーム音楽が帰って来る。
「えっと、天照さん気配遮断のスキルお持ちですから今回の作戦にうってつけだと思うんですが」
「なるほど。私の力が必要という事ね」
「はい。そうなんすよ」
「だが、断る。この天照が好きな事の一つに、私の助力が必要だと手を差し出した相手のその手を踏みつけるというのがあるのだっ!!!」
「なにいいいいいいいきさまああああああああああ!!!!!」
眼鏡女に向かって握拳を振り上げる弥一。その腕は徐福に捕まれた。
「心配するな弥一。どうせ天照がそう言うだろうと思って、気配遮断の代わりに隠蔽の術を俺がかけてやる」
「本当か徐福?!」
「だが問題がある。隠蔽を解除すると一般兵にも普通に視認されるようになる。モブ兵士とはいえお前よりかは強いだろう。従って隠蔽状態を解除するのはお六を救助した後になる」
「お六にも隠蔽魔法かければよくね?」
「俺は政宗と共にお前の潜入を支援する陽動作戦を行う。陽動は立派な戦闘行動だからな。バルキリー共が突っ込んでくるだろう。同様にお六を発見し、無事に逃走する時も支援行動を行う」
「逃走する時に支援って、通信機か何かで合図すればいいのか?」
「そんなものいらん」
「おい。じゃあどうやって支援のタイミングを計るんだ?」
「城がドンパチ賑やかになったら支援の合図だ」
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