-1.最近はリセマラ無しで選択可能とかも多いそうですね
第0話 一時間前
作戦開始一時間前。ブリーフィングルーム。
「時間移動をおこなう。というのは一般には1895年にH・G・ウェルズが発表した作品『タイム・マシン』初出だと思われているがそうではない。マーク・トウェインが1889年に発表した長編小説『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』を執筆しているし、エンリケ・ガスパール・イ・リンバウ が1887年に『アナクロノペテー』を発表している」
「つまり何が言いたいんだ徐福?」
「時間移動、という概念自体著作権は存在しない。以上証明終わり」
さらに徐福ペディアの解説は続く。
「死した戦士達を召喚し、決戦の場において戦わせるという概念はおそらく北欧神話のエインヘリアルが最初だろう。編纂は十世紀前後だ。著作権者は千年以上前に死んでるからヨーロッパから弁護士が飛んで来る心配はいらん」
「いやだから何が言いたいんだって?」
「今から弥一。お前には歴史に名を残す英雄と協力し、歴史改変を目論む巨悪と戦ってもらうというわけでお入りください」
「うむ」
ブリーフィングルームにアラフィフの老紳士が入ってきた。
「ジェームズ・モリアーティだ。諸君らに協力させてもらう」
「めっちゃ悪そうな奴だぞコイツ!!!!」
「失礼な。私にはちゃんと君達に協力する理由がある」
背筋の伸びた身だしなみのしっかりした老紳士は口にしたパイプを吹かす。
「いやジェームズモリアーティって悪人でしょ?普通ここ織田信長とかアーサー王が出てくるところじゃね?なんんでモリアーティなの?」
「なかなかよい質問だ。憎き仇敵ホームズのようだ。褒めてあげよう。その理由を説明する前に弥一君。私からも君に聞きたいことがあるのだが」
「なんでしょう?」
モリアーティは手にしたパイプでテーブルに付き、スマートフォンをひたすらタップし続けるドテラにフードを被った娘を指し示す。
「あちらの眼鏡の女性はなんなのだね?」
「彼女がプレイしているのはゾンビアイドルサガです」
「は?」
「ゾンビがアイドルになって世界を救う人気アニメです。それのスマーフォン向けゲームです。アイドルとシャンシャンするゲームですよ」
「モリアーティ教授が求めているのはそういう説明じゃないよ弥一。いわゆるステータスチェえええええええックって奴をやって欲しいんだよ」
「あれって頭の悪いなろう主人公のやることじゃないんですか?」
「心配するな。ちなみにお前のステータスはこれだ」
本名 嘉多内弥一
属性 中立・中庸
クラス 高校生
時代 21世紀
地域 日本
筋力 D
耐久 D
敏捷 D
魔力 D
幸運 D
奥義 なし
「なんぞこれ・・・」
「弥一。お前現代日本を生きる普通の高校生なんだろ?超必殺技とかマジックアイテムとか持っていたらおかしいじゃないか」
「いやそうだけどさ・・・」
「心配するな。この徐福様が用意した英雄召喚装置によりお前は魔力Aの召喚魔術師たぶんおそらく同様にしてもいいかな~~?くらいの扱いになる。蛇の化石を用意をすれば古代ウルクの王ギルガメッシュを召喚し、その日の晩にアゾットされることも可能だぞ」
「なんすか。そのアゾットって言うのは?」
「高名な錬金術師であるパラケルスス・ホーエインハイムが造った宝剣だ。つまりアゾット剣というのは賢者の石や聖杯と同等の価値の存在であり、つまりアゾットとは素晴らしいことの意味なのだ。というわけで早速眼鏡女をステータスチェックしてみるのだ」
「そうか。よくわからないがアゾットされるのは素晴らしいんだな。そうと決まれば早速ステータスチェックをするぜ!!よし、やってみるぜ。ステータスチェエエエエエク!!!!」
弥一はありきたりななろう主人公のように叫ぶ。すると。
本名 眼鏡女
属性 眼鏡
クラス 不明
時代 不明
地域 不明
筋力 E
耐久 E
敏捷 E
魔力 E
幸運 E
奥義 なし
スキル 気配遮断
「おい。徐福。なんだこれ。全ステータスがEってことと、気配遮断のスキル持ちって事しかわからないぞ?」
「気配遮断は主にアサシンクラスの英雄が持つスキルだ。ゲーム的には性能が上がればクリティカル率の上昇として扱われる。物語的には戦闘時以外は周囲の人間に『普通の人間』として自分が認識される。ただし、この状態で攻撃力、防御力、スピードも『人間並み』なのでこの状態で攻撃されるとアウトだ」
「気配遮断したたま戦えば無敵じゃね?」
「ゲームシステム的にもストーリー的にアウトだな。いずれにせよ戦闘時は気配遮断は解除される」
「ふむ。ではこの眼鏡をかけた女性が自身の正体を明かす気がないのはよしとしよう。だがなぜゲームをしてい」
モリアーティ教授の疑問に対して。
「イベント期間中だから」
眼鏡女は即答した。
「上位ランク10万位以内に入ると桜吹雪ユキちゃんが貰える。スマフォを充電している時と睡眠時間以外はすべてイベントステージを周回しなければならない」
「失礼だがレディ。十万人分の報酬が用意されているのだろう?ならばそこまで心血注ぐ必要は・・・」
「全世界80億のユーザーがライバルだ。即ち地球との戦いだ。一瞬たりとも油断はできない」
『ライブ、パーフェクト!!』
高得点が出たようだ。結果を確認する。
「くそ!二位から四位に下がってしまった・・・!!なんて縁起が悪い数字なんだ・・・」
「おい!!全世界で何百万人のユーザーがいるのかわからないが何気にとんでもないことしているぞこいつ!!!」
「邪魔してしまってはいけない様だ。レディ抜きで話を進めよう」
「そうですね。モリアーティ教授」
「では弥一君。徐福君。仮に犯人Xとしよう。その人物は現在歴史改変を行っている」
「そしてそれ人類滅亡を引き起こしかねない可能性を秘めた危険なものだ」
徐福が続ける。
「そうかな?その歴史改変の理由は案外至極つまらない理由かもしれん」
「つまらない理由?」
「例えば弥一君。君が歴史改変するとしたら何を目的で行うかね?」
「え?そうだな。死んでしまった恋人や両親を生き返らすためとか?」
「ふむ。悪くない答えだ。1985年に製作されたSF映画『バックトゥザフューチャー』では主人公の青年はタイムマシンを手に入れる。彼はスポーツ新聞持って過去の世界に行く」
「スポーツ新聞?なんでそんなものを?」
「当りの万馬券が書いてあるからだよ。スポーツ新聞に書いてある通り馬券を買えば未来で『確実に』大金持ちになれる」
「あ、なるほど。頭いいなそれ」
「しかしスポーツ新聞は悪人の手に渡ってしまい、未来は悪い方向に改変されてしまう。それを元に戻す為主人公は奔走する、というのがバックトゥザフュチャーのストーリーだ」
「じゃあ誰かがスポーツ新聞を持って過去に行ったと?」
「私は犯人Xが持つ『スポーツ新聞』がなんであるか知りたい。だから君達に協力する。これが理由だ。不満かね?」
「いいえ。よくわかりました。こちらこそよろしくお願いします」
こうして、弥一は時空歪曲点に向け旅立つ事になった。
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