第4話 当日朝2
「なかなか旨かったよ。これを造ってくれたメイドさんにお礼を言っておいてくれ」
ハムエッグトーストを完食した弥一は一息ついた。
「そうか。そう言ってもらえると俺も料理した甲斐があるというものだ」
「てめぇがつくったのかよ・・・」
「天照が造れると思うのか?」
弥一はドテラと頭巾を被り、マジックハンドで器用にカップ麺を調理している眼鏡女を思い出した。
「いや。あの女は絶対料理するタイプじゃないな」
「わかっているならいい」
食器を片付け、再び部屋に戻る徐福。
「さて、お前は今生きているのか死んでいるのか確定しない状態だ。だがこれはお前だけの問題ではない。全地球規模の、全人類の存亡がかかった問題なのだ」
「つまり全地球規模でスレてぃんがーの猫になっている人間が大発生していると?」
「まずはこいつを見ろ」
徐福はタブレット端末を操作した。半透明のスクリーンモニターが中空に浮かび上がる。
「なんだこのネバンゲリオンの司令本部みたいなのは?」
半透明モニターには世界地図が映し出されている。だが妙だ。東アジアを中心に黒い球体のような物がかかっている。それは朝鮮半島を完全に覆い尽くし、西は中国の北京、東は日本の大阪の辺りまで届いている。
「弥一、お前が。というよりお前達日本人に直接影響出ている時空歪曲点がこれだ」
「時空歪曲点?」
「発生源が東アジアなだけで徐々にこれは拡大している。そのうち中国全土、東南アジア、南アジアと拡大していくだろう。早急に対策を取らねばならん」
「何が原因なんだ?」
「歪曲点の発生地点はほぼ特定できている。だがその前に弥一。お前日本の歴史というのはわかっているか?」
「へっ?」
「この部屋下でゲーム廃人やってる天照が日本を造ったのが今から2000年くらい前。ちょうどイエスキリストが産まれた時代だ。それからまもなく秦の始皇帝の命令で俺が船に乗ってやってきて、お前達日本人に文明を授けてやった。その後推古天皇や厩戸皇子とかの家庭教師とかもやったな」
「馬王子?」
「聖徳太子って言った方がいいか?」
「おい!なんかすごいのが出て来たぞ?!」
「だが、その後朝廷内での権力闘争に嫌気が差してしまってな。それを考えると現在の日本の天皇を直接政治に参加させないという仕組みはよくできている。だが昔はそうではなかったんだ。あの頃は天皇の親兄弟で暗殺者を送り合ったり後継者争いで戦争を始めたりしてたんだぞ?」
「そんな事を言ったらネトウヨが怒り出すぞ?」
「嘘だと思うなら応仁の乱とか大化の改心とか調べてみろ。なろう主人公様が大好きなスマフォでな。天皇家の血塗られた歴史が記載されている。ま、そういうのは歴史と伝統ある王家ならばどこでも持っているものだ。ローマのネログラディウスも晩年は暗殺者に怯え、エジプトのニトクリスは己の兄弟達を自らの手で葬ったという。ところで今回の時空歪曲点は天皇とは関係ないが武士の歴史とは関係がある」
「あ、やっぱ戦国時代なんだな」
「そういう事だ。じゃあ戦国時代に移動しよう」
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