第11話:コーヒータイム

 7&7'sセブンアンドセブンス社の案件から数日後。


 今日は、比較的まともな時間に依頼された作業を開始し、WCSCの案件はなく終了した為、定時で切り上げる事ができた。


 その後、いつもの様に斑鳩のメンテナンスでチーフがやってきたので、自分が簡単ながら二人分の夕食を用意。

 アルコールを持参したところから、今日は泊まっていくつもりらしい。チーフのメンテナンス作業前に一人で飲む訳にもいかないので、風呂上がりに頂くつもりだ。


 ちなみにあの夜、チーフがログアウトした後の後片付けは、毎度の事ながら大変だった。


 先ず接続されっぱなしでクラッカーが逃げ出したアンタレスの引き継ぎ申請をWCSCにしたところ、詳細な報告が欲しいとの要請で、後回しにするつもりだったWCSCへの報告書を先に書き上げる。

 その際に、クラッカーの情報と親機の情報を報告書の中に含めておいた。


 今日のチーフの話によると、アドレスが特定された訳ではないクラッカーの情報はともかく、親機については所有者が政治的な絡みも考慮が必要な事もある上に圏外にある事もあって今の所は様子見だそうだ。


 しかし、政治的な判断って何だ?

 WCSCの非加盟が多い管理経済圏からのアクセスだとしても、政府系機関のコンピュータがクラックされて親機まで仕込まれる可能性は少ないから、今日の食事の場では国営企業ではないかということでその場は落ち着いた。

 ただ、今日対応した案件では同じ様な所が絡んでいたので気になっている。


 ちなみにアンタレスは、地球の裏側の会社で使っていたコミニティーシステムだったらしく、圏外の国にも関わらず、WCSCの要請に対応してくれたらしい。

 チーフの別口の情報によると、コンピュータから女の泣き声が聞こえてきて、その会社の担当が涙目になった事もあり協力的だった様だ。


 ……大変申し訳ない事をした。


 が、WCSCをエクソシストか何かと間違えていないか?


 WCSCの件が片付いた後は、7&7sセブンアンドセブンス社の件を営業のマーちゃんに仕事を投げつつ終わらせて、徹夜明けのテンションの所へノコノコやって来たチーフを捕獲して、あの日はベットに連れ込んだ気がする。

 うん。


 そういえば今回問題になった脆弱性については、来週修正プログラムがリリースされるらしい。

 複雑怪奇な現象で、アプリメーカーも頭を抱えていたらしい。

 予定されているリリースノートをみた限りでは、かなり運の要素もあったりして、よくアンタレスで再現出来たなと、自分も感心する次第だ。


「今年も育てるのかい?」

 マグカップのコーヒーを飲みながら、ベランダの外を見ていると、メンテナンス作業を終えたらしいチーフから声がかかった。

 毎年育てているグリーンカーテンの事らしい。


「まぁ、何となく恒例になってるね。蔓が伸びて来そうなので、そろそろネットを買ってこようか。」

 ちなみに今年は育てやすいゴーヤを植えている。


「そういえば、買うで思い出したけど、そこの棚に小包を置いているが、開けてみ。」

 昨日、7&7s社の通販サイトから小包が届いた。

「どうやらアスカが、あの日の案件で決済した物らしい。チーフへのプレゼントなんだって。」

「なかなか乙な事をするじゃないか。」


 小包の中にはいっていたのは、シンプルな星のデザインのセンスが良いペンダントトップだった。


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