第5話:社長の帰還
「おぅ、間違いない。
マーちゃんの宣告に対して、二つの温度差が生じるオフィスのオーディエンス。
開発や監視部隊に今までと違う種類の緊張感に対して、あからさまに気を緩める営業や管理部門の社員。
調子の良い営業に至っては、「はい、かいさ〜ん」と言って、席に戻っていく。
後から入ってきた2年目君に至っては、オフィスで何が起きたか、わからない様子だ。
問題の
一線を退いたとは言え、業界では知る人ぞ知る凄腕の
本人は
プロジェクトにおいて無いと言われる「困難を解決する決め手」と言う意味で表現される『
その『
プロジェクトに関する武勇伝は数多くあり、一説にはコンピュータにタロットカードの名前をつけるWCSCも、システムの立ち上げに貢献した
本人は第一線は退き、悠々自適な生活をするつもりで“Hermit's Lamp”社を立ち上げた様だが、やはり
今も個人的に要請があった案件で、後数ヶ月は会社を不在にしていると思っていたが、会社にちょっかいを出せる位片付いたと言うことだ。
ちなみにこの
今回も被害は無いが実害がある状況から、
この
大概、近くの居酒屋で乾杯と共にスタートする反省会は、持ち前の観察力だか洞察力だかで、当事者以上に状況を把握しており、つまり公開処刑にされてしまうのである。
その為、
逆に訓練に参加する可能性が少ない営業職は、ターゲットにされる可能性が少ないので、気楽なものである。
チーフと自分は前線に立つ職務の性質上、反省会参加は定番であるが、今回の件については、チーフが出社するまで状況把握を怠った東京時間担当の二人のオペレーターは、
合掌である。
さて、反省会の参加は確定であるが、既にイケニエが確定している以上、さっさと終わらせて自分が肴に追加される事は回避したい。
「しゃぁねぇ、さっさと終わらせるか。」
チーフを見ると、彼女も同意見の様だ。
「メカリ、“イオリ”の様子はどうだ?」
『イオリ』とは、
「イオリの状態を確認します。……待機状態となっております。」
「了解。ありがとう。」
「お役に立てて幸いです。」
オフィスに設置のコンピュータは、メカリの監視下にあるので確認してみたが、やはり一番最初に疑われるイオリは動かしていない様だ。
イオリを無駄に起動して、デコイにでも使っているかと思ったが、その可能性も今のところない。
かと言って、放置する訳にも行かないので、
「チドリ、
「了解!」
とりあえず、この悪戯の根源をみつける事が課題だろうが、今打てる手はこのくらいか?
「チーフは、どうする?」
「ハクホウの環境を復旧させたいが、時間がもったいない。サポートするからチドリのリソースを貸してくれまいか。機能が制限されるが、場合によってはそっちからハクホウをアクセスするよ。」
「了解。お菊ちゃんは使わないのか?」
「あれは、
「そうか、わかった。サポート頼む。」
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