第12話:開けたフィールド
舞い降る羽毛が消え去り、視界がひらけたフィールドに立つ男装のチドリ。
さんざん羽毛に弄れて乱れた
限界に見えたチドリだが、実際は
オフィスのネットワークの通信領域を占めていた
ちなみに、業務において
「ネットワーク、クリア。発信元をアンカー致します!」
ネットワークを占有していたメッセージのデータは処理したが、未だにオフィスのコンピュータは面白愉快な状況が続いていて、根本的には解決していない。
チドリが後ろに飛び退いたそのスペースに、発信元と特定された
フィールドに
他の会社なら、デザインや企画系の部署のコンピュータが該当するが、
その
オレンジ色に揺らぐ光を封じた様な手の平大のクリスタルには、蔓状のオブジェクトが伸び、ナビゲーターの手足に巻きついている。
さらに
一体どのくらいの時間、蔓に拘束されていたのであろうか?
ナビゲーターの反応が鈍い。
「ビンゴ!多分こいつだ。誰の持ち物だ?」
「昨年入社の営業さんだね。」
なんと、今朝から一緒に居たヤツじゃないか……。
「マーちゃん、感染源はキミのトコロの二年君だ!」
マーちゃんは、電子要塞の側に事の推移を見守って居たのであろう。
モニターの向こうのチーフが後ろを振り向いて指示を飛ばした後、彼女も画面から消える。
自分も飛び出したいが、
「オフィスのカメラ、使うね。」
通常だとメカリの配下にあるオフィスに何ヶ所か設置している定点カメラも、今はチドリが使うことが可能だ。
フィールドに現れたウィンドウには、マーちゃんがデスクをすり抜けながら、指導担当の先輩営業から指示を受けている二年目君の所に向かっている様子を映し出す。
今回の様にコンピュータに、クラッキングや何らかの害を及ぼすであろうアプリが入っている可能性がある場合、真っ先に行うべき手順はネットワークからの離脱する事。
つまり、『ネットワークケーブルを抜く』事である。
ネットワーク技術とともに無線技術が発達し、通信速度を始めとして有線無線双方、ほぼ同等の機能を有するまでとなった。
しかし、AIの利用が一般化し、
さらにつけ加えると、サポートAIなどOSの保全を目的としたバッテリーや3D保存素子によるストレージで、コンピュータが構成されている為、筐体を多少手荒に扱っても問題はない。
突撃してくるマーちゃんに驚く二年目君と先輩営業を押しのける様に、デスクに設置されてるコンピュータの筐体を片手で持ち上げると、背面パネルに接続しているネットワークケーブルを荒っぽく引き抜く。
「グリム!聞こえるか?ケーブル抜いたぞ!」
カメラだけでなく、今ならVRフィールドでオフィスと会話も出来る。
フィールドを見回すが、状況の改善が見られないし、そもそも二年目君のコンピュータがまだフィールド上に存在する事自体、ネットワークから切断されていない事を意味している。
「ダメだ、変化がない!」
「無線でも接続されている様です。」
「おぅ?なんだと?!チーフ操作を変わってくれ!」
ネットワークケーブルを抜いたとしても、無線環境が接続しつづければ、対策として意味がない。
遠隔端末としてのスマートデバイス様に無線ネットワーク環境は用意しているものの、通常オフィスではコンピュータには無線によるネットワーク接続はしていない。
その為、マーちゃんは無線の設定には慣れていない様だ。
オフィスに流れたアスカの報告を聞いたマーちゃんが、チーフに助けを求める。
「マーちゃん、こっちだ!」
呼びかけられたマーちゃんが振り向くと、給湯室にチーフがいた。
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