歴史の資料集を、好きで眺めていたタイプの人さ

 今日も書けない。ノートを閉じ、ペンを置く。

 よし今度、資料を収集しに図書館へ出掛けてみよう。


 僕は知っている。

 たとえば、「竜馬がゆく」の司馬遼太郎が、軽トラックで古本屋に乗り込み、題材の資料を一切合切買い求めたとか。

 たとえば、上橋菜穂子が「鹿の王」を作れたのも「破壊する創造者―ウイルスがヒトを進化させた」を筆頭に医学関連や生物学関連の本を読み漁ったとか。


 その話を聞いてから僕は、まったくの想像ではなく、本の資料がある方が良いと思っている。


 ネットじゃなくて、本がいい。

 最初はネットだけでも良いかなって思っていたけど、何故か、あと一歩深い部分が分からない印象がある。感覚的に、根拠はないけど。

 やはり、人類の歴史に登場するまでのアドバンテージがあるんじゃなかろうか。その辺は、よく分からない。


 図書館で何を探そうか。


 今、書きたい題材が漠然と有る。

 ミリタリー物だ。

 色々と読み漁るうちに、そうなった。『戦う小説はやっぱり滾るよね』という安直な気持ちだ。ヒリヒリするような闘争と勝利は、読者を惹き付ける力があると思っている。


 しかし、それに対するアイデアも知識も何もない。戦闘機や特殊部隊みたいな軍事小説なんてほぼ読んだ記憶がない。だから、図書館へ行って、小説やノンフィクションを一先ず漁ってみようと思った。


 入念に緻密に調べあげようという気概は、まったくない。

 僕が持っているミリタリーのイメージが、変わるようなちょっと面白い知識。そんな知識が、何個か見つかれば良いなぁ、くらいの気持ちだ。


 たとえば、伝記の「スエズ運河を消せ」みたいなやつがいい。戦場でイリュージョンを武器に戦った手品師の話。

 読んだことはないけれど、大掛かりなマジックで戦争を戦うなんて実話、知ったときは驚いた。

 自分が驚いた知識を使って小説を書けたなら、読者も驚いてくれるのではないか、と僕は思っている。


 物語を追体験するだけじゃなくて、世の中の見方が変わるような知識をひとつくらい覚えて帰ってもらえれば。

 もしくは、感情移入できなかったとしても、何かしら良いこと知ったなと思ってもらえれば。

 なんか、保険掛けてるみたいだけど。

 僕は、そんな小説を書きたいです。


 そういえば、村上春樹は、資料集めをしないらしいですね。

 結局のところ、想像力こそ小説家の腕の見せどころ。

 皆さんは、どれくらい資料を集めて、どれくらい資料に頼ってるんでしょうか。


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