四桁とイチローと平成

「海千山千」

「千載一遇」

「千変万化」


 慣用表現で「途方も無く多い」という意味で使われる「千」という数字は、僕にとっても文字通り途方も無かったです。


 1000PV越えました。


 このエッセイについては、いつのまにかPV数を気にすることを忘れていたんですが、イチロー選手が引退するタイミングで、1000という切りの良い数字がどれだけ遠いのかを意識しました。


 誰かが何かを思って次のページを開いてくれた。それが計1000回。

 たったそれだけですけど。

 一日一回読まれたって約二年と九ヶ月かかる訳で。

 なので、一人で誇っています。そして、ここで感謝を伝えたいと思いました。読んでいただき、ありがとうございます。


 ■


《小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています。》

 このエッセイで、イチロー選手の言葉を引用しました。そして、これを文章を書くときの基本方針としています。


 ですが、その当のイチロー選手が、積み重ねる日々から引退しました。4367安打という数字は、あの日から永遠に止まったままになる。その事実を、まだ信じられないです。


 当然のごとく面識もないし、遠く日本に届く勇姿を眺めていただけの僕が、なぜだか心にぽっかりと空白を作る喪失感を味わっています。

 たぶんそれは、平成という時代がばたばたと音を立てて歴史になりつつある、という感覚と共にあるからだと思います。


 イチローさんは、平成のヒーローです。

 本当に、お疲れ様でした。

 そして、今までありがとうございます。




 ────────────────────


 僕はイチローを追っかけていたというよりは、イチローを表現する言葉の数々を追っかけていた。


 堅い守備で守られたセーフコ・フィールドのライトは、彼の背番号と厳しい警備の米軍基地を掛けて「エリア51」という愛称がついた。

 強肩から放たれる高精度の送球を、実況者は「レーザービーム」と形容した。

 彼は「魔法使いウィザード」という綽名を貰い受け、ヒットを量産するバットは「魔法の杖」と呼ばれた。


 たぶん、イチローの特異なスタイル、卓越したプレーを表現するには、野球の言葉では収まらなかったんだと思う。


 未踏の地平を拓いていくイチローを言い表すために、どんどん言葉が生まれて更新されていく様をずっと見てきた。


 僕もそれを更新する側になりたかったけど、まだ無力だから「イチローさん、お疲れ様でした」ぐらいにしか、表現できない。

 ぽっかりと空いた空白を埋めるような文章を、今日もまだ書けない。

 それは、小説を書いている身にとっては、あまりいいことではないと思う。



 けれど、時代は待ってくれない。

 悠長に構えられない。喪失感に浸ってる場合じゃない。

 次の英雄ヒーローが、また現れるから。


 ■


 昭和に長嶋が現れて、平成にイチローが現れた。

 新しい時代が始まる。

 英雄ヒーローは新たに現れるのは、避けられないと思っている。

 あなたが英雄ヒーローかもしれないし、違うかもしれない。


 けれど、彼らにぴったりの新しい言葉を生むのは、僕らの範疇で。

 時代は待ってくれなくて。


 もっと力をつけなければ。



 ────────────────────


 結局、何を言いたいかというと、次の年号「令和」になってもよろしくお願いいたします、ということです。

 目指すは4367PV。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る