夢を見ることを忘れてしまった人へ。

 オモチャのブロックの塊から、

 怪獣を見いだせなくなった人へ。

 空の雲の輪郭から、

 動物を探さなくなった人へ。

 公園の砂場から、

 地底への冒険を始めなくなった人へ。


 いくつか、問おう。


「起きたままに夢を見れた時代があったんだぜ」

 なんて言われて、

「昔の話だろ」

 と返すほど無粋ではないだろうけど、

「それをもう一度取り戻そうぜ」

 と誰かが手招きしたときに、ためらわずに一歩を踏み出せるだろうか。



 これを書きながら、なんか照れくさいと感じる出題者の僕も、もう忘れてしまった側だろうし、一瞬ためらう側なのだろう。それを、大人になった、と言うかどうかは置いておく。


 解答者としての僕へ。1年後、3年後、5年後の僕へ。今後まだ何かを創作するであろう人へ。


 子供の頃の想像力は、もう要らないものなのだろうか。


 今日この頃は、まだ物語をちゃんと書けないにも関わらず、変な手癖が入り始めるし、常識という風体の偏見がペンを止めたりもする。

 手垢のついた常套句を、手に馴染みが良いのか心に引っ掛かることなく使ったりできるし、ありがちな筋をなぞりすぎて、擦り減ってかなり薄っぺらかったりもする。


 いま僕の持っている想像力は、人の手を介し過ぎている何かで、それを右から左に譲っていくことを、いまの僕は「創作」と言ってたりするのではないだろうか。




 もっと原初の想像力を。

 もっと原初の、誰の創作物にも触れていない、原初の想像力を。


 記憶の底に堆積している泥を被って沈んでいる、キラキラした原初の想像力を、掬って浚って、いつかもう一度、目の前に転がしてくれることを願っている。


 夢を見ることを忘れていた人へ。

 一方的な頼みで悪いが、よろしく。


 忘れていたことさえも、

 忘れてしまっていた人より。





 という、小説に使おうとした文を放出。ちょうどよい練習になる。

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