惑星八景〈上〉──風景描写の練習──

 風景描写の練習と覚え書き。圧倒的なスケールを描いてますよ、自然ってでっけぇな、という表現が出来たら嬉しい。

 こうした方が良い、こういう方法もある、というアドバイスを貰えると嬉しいです。



【海洋】────────────────

 群青の凪の海は、粗い織り目のリネン布地のようだった。

 小型船は真っ直ぐ海面を裁ち切って、布を捲るように航跡波を描いていく。

 イルカの群れが、船と遊ぶように並走して水面を何度も跳ねる。

 裁ち切られた海を、イルカがその軌跡で縫い付けているのかもしれない。

 遠方で積乱雲が黒々としている。嵐だ。鋭い雨粒を大量に落としている。生地がボロボロに傷つけられていく。



【大都市】───────────────

 ビル群の背景には、超高層ビル群の山脈が築かれている。

 朝日を反射するガラスに覆われた建物のファサードは、平刃の彫刻刀のように空を削って狭めている。

 ビル群の隙間に埋め込められた道路に、自動車が犇めく。

 そこを縫うように鉄道が曳かれ、電車は一秒も狂わず駅舎に滑り込む。そして駅には人、人、人。

 幾万の人が目的地に向かう。物も動線も思惑も絡まりきっている。



【大空】────────────────

 気球のゴンドラのうえは、気流に乗っているために無風だった。ごうごうと音をたてるバーナーは切っている。もちろん、地上の騒がしさはここまで届かない。

 空は想像していたよりも、静かだった。


 見上げれば、底抜けにだだっ広い空。下方の平野を眺めれば、モザイク画のように田んぼが広がっている。まばらな民家も、遠くでゆるくカーブを描く川も、どこかミニチュアのようだ。

 ゴンドラに、僕に、ぽかぽかとやわらかく陽光が注ぐ。ぽかぽかって音が聴こえるのではと思うほど、静かで、朗らかな世界だった。





【森林】────────────────

 生い茂った樹冠の天蓋のせいで、曇空のように薄暗い。


 巨木に矢印が刻まれている。先人達の道標を頼りに、苔むした岩を登り、伝う露を払いのけ、道無き道を往く。

 足を止め、深呼吸をする。

 漂う澄清な冷気が肺を満たす。深緑の香りが鼻をくすぐる。

 遥か彼方まで覆う豊饒の森。

 太古から変わらない風景。


 目指す方角を見据えるが、鬱蒼と伸びた枝葉が邪魔をして、その奥に闇を抱えているのが分かるだけだ。

 水の音がする。水筒は空だ。進路を音の方へ変える。この森が湛える水は、彼岸を見透かすほど澄んでいるらしい。




 ─────────────────────



 脳味噌を思いっきり搾って、やっとこれくらいか。しんどみがふかい。

 そして八景と言いながら、四つまでしか書けない。【雪国】【熱帯雨林】【洞窟】【砂漠】とか考えたい。


 相手の脳内に、自分のイメージを映す難しさを感じる。「森」と言っても白神山地なのかアマゾンなのかで変わるし、「山」と言っても富士山かアコンカグアで変わるし。


 風景の描写は、カメラワークやピントをどこに合わせるかとか、映像をどう切り取るかみたいな話なのかな。


 書けば書くほど注意するべき点が増える。


 ・遠景から中景、中景から近景と緩やかに描写する方(もしくは逆)が、想像しやすいかも。

 ・五感でどう感じるのか、いろんな角度で書き込むべき。

 ・風景そのものを描写するより、比喩を使った方が楽でよし。

 ・一人称の小説だと、風景を主観的に見るから、語り手の心情も乗っかってくる。



 少ない描写で、スムーズに読みやすく、なおかつ思い描いた通りの風景を、相手のイメージに映す。

 難し過ぎるだろ。

 もやもやするなぁ。


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