惑星八景〈中〉──地の文を軽視した人──

 風景描写の練習の続き。


 つい最近のことですが、

「地の文は敬遠される、だから工夫が必要だ。」

 という話をたて続けに読んで、僕は『やばい!』と、ぞっとしました。


 なぜなら、地の文を読ませるように工夫する、僕にはそんな発想がほぼ無かったからです。

 「設定はああだ、キャラはこうだ」と言いながら、“文章”そのものについてはノーマークという状況のままでした。不覚!


 会話が苦手だな、という意識はあったんですけど。

 地の文は、そもそも意識していなくて、ただ好き勝手に書いていたという感じです。


 地の文を工夫してなくて、会話文も苦手。

 それじゃ全文駄目じゃん。どうすんだよ。


 ここで、ぞっとしました。


 ということで、今日も練習です。圧倒的スケールだな、自然ってでっけぇな、という表現ができれば嬉しいです。

 こうした方が良い、こういう方法もある、というアドバイスを貰えるととっても嬉しいです。


【霊峰】────────────────

  僕らは、標高八〇〇〇メートル峰のナイフリッジ──刃のように鋭く切り立った痩せ尾根──を慎重に進んでいる。

 風は極めて冷たく身を切るが、天候には恵まれている。

 雪の積もる尾根の先に目指す場所、頂きが見える。第一キャンプで見上げた、神々しく輝いていたそれは、もうすぐそこだ。


 人類史上つい最近まで登頂を拒んでいた霊峰を、今なお信仰されている神の石刃を、僕ら登山隊は一歩一歩と踏みにじっている。

 眼下に広がる雲と峰々は光り輝き、僕らを祝福しているようだ。


 しかし注意は怠るな。希薄な酸素は、まだ僕らを内側から痛めつけている。

 寒い、キツいと、身体中が危機を感知して警告音を鳴らす。うるさい、雑念をオフにする。

 すると、雪を噛む足音と呼吸音だけがやけに大きく聞こえ始めた。




【砂漠】────────────────

 

 見渡す限りの砂の海は、延々と風紋を織りなしている。灼熱の太陽が容赦無く照って、ゆらゆらと遠景が揺れる、肌を焼く。砂を含んだ風が口に入る。


 すでに先ほど渡った涸れ川も遠くなり、大小の砂の丘を越えた筈だが、オアシスは現れない。

 熱い砂に足を取られるせいで、進んでいないのか。それとも茫漠な砂地に目が眩み、進んでいないように錯覚するのか。

 振り返って確認しても、足跡は砂塵に埋もれ消えている。



 ────────────────────



〈書いていて思ったこと。〉

 ・「地の文」には風景描写、心情描写、説明という役割があるが、一文一文が厳密に役割分担している訳ではないらしい。


 「桜の花びらが、風に誘われて舞う。」


 「桜の花びらが、風に煽られて散った。」


 例文が下手なのは置いといて。

 同じ風景を切り取っても、心情によって語り手が使う動詞が変わる、時制も変わる。春だと暗に説明もしている。

 風景だけ、心情だけ、説明だけ、という文章が淡泊な感じになる。




 ・風景描写は物語が動かない。だから、くどいときつく感じる。


 描写をしている間は、文字数に対して時間がスローリーに流れる、停止するときもある。ちんたらせずに早くストーリーの続きを見せろ、と読者が思うのは仕方ないかもしれない。


 物語が動き出す気配とか、しっかり前フリとして機能させなければ、テンポを崩して足を引っ張るだけになるかも。

 

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