とはいえ君も努力するウサギ



「すごい」

「やるじゃん」

「いいねぇ」


 そう言ってくれたあの人は、僕より断然すごい人。謙虚で、堂々で、無垢で、粋。


 ウサギとカメで言ったなら、奴はウサギ。

 しかも、努力するウサギときたもんだ。


 濁るね、心中。

 ウサギの性格が悪ければ文句も言えるし、怠惰ならば付け入る隙があるってのにさ。


 努力するウサギとエンカウントしたときは、折り合いの付け方が問題だ。


 憧れみたいな、綺麗でポジティブな気持ちだけで進歩できれば、どれだけいいか。淀んだヘドロを吐き出す場を求めていても、それを受け取る人のことを考え始めたら、下手に言い出せない。


 でも、それだと鬱憤が溜まるから、思い切って濁った気持ちを誰かにぶつけてみる。例えば、君とか。なんて言うだろか。


「    」とか言うのかな。いや、逆に

「    」とか言うかもしれない。


 とはいえ君も、努力するウサギ。


 卑屈になっている僕は、たぶん疑う。


 心中では何を思ってるんだろうね、と。


 これはなかなか始末が悪い。


 ■


 ネガティブな感情に飲まれたときは


「読む」

「書く」

「歩く」

「食う」


 と決めたので、このコマンドの中から


「書く」


 を選択して、いまこうやって書いているのだけど、やっぱりネガティブな状態だから、文章が卑屈に満ちている。


 努力するウサギは、何故かそういう素振りをなかなか見せない。なぜだ。自己欺瞞と韜晦こそが、良いモノを創るスキルと思わせるほどだ。

 もしも逆に、本気で前向きのまま、すべて推進力に変えているのだったら、まじ偉い、尊い。


 さて、どっちだろ。

 背中を追いすがって、実際どうなのか探ってみるのは、どうだろ。


 もしや、不思議の国へ連れてってくれるのでは。さすがに頭の中が、お花畑すぎるか。


 でも、そんな期待をして、ずっと追っかけてた人、長く走っていけた人が、なんだかんだで、今度は追われるウサギになってたりして。


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