概要
【このお話は?】
事故死した少年ウーは、地仙・狗琅真人の手で不死身の体によみがえった。仙人の用心棒を務める剣客・コージャンは、自分の弟子になったウーを養子として引き取る。
そんな彼らの前に現れるのは、冥府の役人、殺人鬼、殺師(ころしや)、邪悪な仙人……
近代中国風の中華ファンタジー世界を舞台に、武侠と仙人が大暴れ! 疑似家族ホームドラマエンターティメント!
【主な登場人物】
■ウー(少玄):外見十五歳
享年七歳、仙人の手で不死身になった少年。剣術と師父が大好き。
■コージャン・リー(赫煉理):三十
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!求めたものは永遠、そして家族
『死者、インゴルヌカにて』や『人でなしジュイキンの心臓』等、作者の方の作品は世の理から外れてしまった存在についてのテーマで通底していることが多いようです(傷病者、ゾンビ、幽霊etc)。
そして今作でフィーチャーされているのは「仙人」。不老不死となり数多の異能を操る超越者。人間の矮小な情緒から解き放たれる一方、永い時の中で正気を保つために自分の心の拠り所である大事之物(だいじなもの)を抱える。この設定が本作の核であったように思います。
途方もないスケールの仙術や武技が飛び交うアクションが描かれる中で、ドラマの軸はあくまでも登場人物達の個人的な執着や生活の段取りに収まっている。それ故の「家…続きを読む - ★★★ Excellent!!!大皿に盛られた極上の中華料理!
鍋の縁を赤い炎が舐めるほどの強火で熱せられた、大きな中華鍋。油をどばーっと入れて鍋を回せば、紫煙がもうもうと立ち上る。その中に、何種類もの新鮮な食材を放り込んで、これまた何種類かの秘伝の調味料を加える。
中華鍋から移されて真っ白な大皿に盛られた料理は、『抜剣入刀生死不問! ~人でなしの黒と赤~』。
湯気とともに漂ってくる美味しそうな匂いは、ファンタジーとマッドサイエンス。おそるおそる箸でつまんで食すれば、それは、武侠であったり、家族愛であったり、復讐であったり…。秘伝の調味料は、作者の文章力であり、構成力でり、語彙力だ。
「あ~~、食った、食った。満足、満足」と、膨らんだ腹を撫…続きを読む - ★★★ Excellent!!!武侠系中華ファンタジー、描かれるのは「人」の姿
圧倒的な知識と綿密さに裏打ちされる武侠系中華ファンタジー。
このタイプの物語を見るのは初めてのことでしたが、とても楽しく読み進められました。
固有名詞や世界観の難解さから読む人を選んでしまうのかもしれませんが、しかし描かれている「人」の姿にこそ、この物語の本質が隠れている気がします。
父に捨てられた子が、人ならざるモノとして生まれ変わり、純粋に、強さを求め生きることを決意する。その傍らで成長を見守る剣客。
登場人物の行動、動機が善よりも欲、というパターンが多くて「人間らしい」ですね。特にルンガオには、武に通ずる者かくもあらん、と強く思わされました。
その中で「本物の家族ごっこをさ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!父子は、修羅道を征く。
この物語の主役となるのは人でなし二人。
仙人である狗琅真人によって複数の魂を持つ存在となったウーと、恐ろしげな容貌と尋常ならざる剣技を持つコージャン。
父親に突き放されたウーが、コージャンの門弟――そして息子となることから物語は動き出す。
仙人という超常の存在と、樹霊発電という植物を用いた技術が組み合わさる世界観は独特。様々な箇所で近代中国を思わせつつも、まったく新しい世界の空気を読者に味わわせてくれる。
そして物語を彩る武人、剣客達の技の冴え!
それはただ『アクション』に留まらず、使い手の精神や生き方さえも含めて表わされる。切れ味の鋭い文章によって描き出される『武技』と『暴力』の圧倒的…続きを読む