死者、インゴルヌカにて

作者 富士普楽

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101人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

 ブロマンス小説を探しています。という企画にご参加いただき、こちらを拝見させていただきました。
 完結作品という事もあり、安心して一気読みし、死者の爪先まで消費してやろう貪欲さと、それらを覆い隠すかのように冷たさを深めるインゴルヌカという都市の世界観に没頭させていただきました。
 緻密な設定を崩れさせることなく乱れ打たれる死体・死体・死体の描写!物語を通して徹底的にインゴルヌカでの死者の姿が説明されることで、自然と読み進めるうちに二種類の死者の違いも頭に入り、クライマックスまで迷うことなく主人公サイゴの姿を追いかけることができました。

企画視点でいうと、本作の中核になる兄弟の遣り取りがやはり印象的でしたが、主人公と刑事さんの関係も気になります!番外編は刑事さんがメインとのことで、こちらも引き続き楽しく拝読させてただこうと思います。

★★★ Excellent!!!

 この壮大かつ緻密な物語のテーマは、「許し」ではないかと思う。
 様々な事件や出来事が絡み合い、過去に起こした過ちや行き違いの清算が行われていくメインストーリーは、想像する着地点を何度も裏切り続けて哀しくも愛おしい結末に収束していく。

 そして、何よりも作中都市、インゴルヌカの成立は、迫害され安息地を求めて集ったゾンビ達と共にある。そんな生きるという事への許しを求めた彼らアンデッド達の思いを優しく包み込む雑多で奇怪な都市、インゴルヌカの情景描写はとても美しく、読後には、この架空の都市に望郷にも似た思いを抱かされた。これは間違いなく一級品の作品である。是非、みなさまに一読をおすすめする。

★★★ Excellent!!!

ね、ネクロパンク??
なんて、最初は少し警戒しながら読んでいましたが
主人公の魅力、背景設定、物語の内容など素晴らしく
ドンドン惹きこまれてあっという間に読み終えました。

現実にはない世界は頭の中で想像しにくいものですが
この作品はまるで映像化されたような描写力があり
ホント、このまま映画化してもいいんじゃない?

そう思える作品でした。

★★★ Excellent!!!

この寒い季節にぜひ読んでほしい傑作。

熱い男たちの友情。父と娘のもどかしい距離感。
そういった人間ドラマが主軸に置かれながら、インゴルヌカという「死」の街が作り出す世界観が、圧倒的壮大さと儚さを持って作品を彩っている。
ラストシーンのあとの、胸のうちにある脱力感・寂寥感・そしてどうしようもない感動は、大作映画を見終わった時以上のものだ。

『死者、インゴルヌカにて』は私にとってカクヨム作品の中で絶対におすすめしたい作品の一つとなった。

★★★ Excellent!!!

面白かった。
本当に面白かった。

練り込んだ設定、硬質な筆致、スタイリッシュなキャラクター、いずれもアマチュアとはとても思えない出来。
ゾンビ映画や早川のSFに精通していて、さらに独自の路線を追求していて、展開も早く読みやすい。

家族の絆を求める話として、不気味な怪物が蠢くホラーとして、様々な人々が交わる群像劇として、珍しい武器が飛び交うアクションとして、いろいろな楽しみ方ができ、かつ全てのクオリティが保障されている。

さあ、今すぐミリヤ・ハーネラの数奇な運命を追いかけ、死者の町インゴルヌカをさまよえ!
こいつは絶対に当たりだぞ!



★★★ Excellent!!!

誰もが願う。
大切な人が蘇ることを。

誰もが望む。
死者と言葉を交わすことを。

だが、蘇った死者が貴方の望みと違っていたなら。
貴方はそれを受け入れることができますか?

死者と生者の出会う町『インゴルヌカ』
そこで紡がれる幾多の『別れと出会い』

私が堪能した、この場所で語られる一つの物語。
それを名前も知らぬ貴方にも、読んで欲しいと願ってます。





★★★ Excellent!!!

放逐された都市、死者のサンクチュアリ。繰り広げられる日常と非日常。
そして我らは死者と共にあり、死すべき定めを忘るなと文章の向こう側でチェシャめいた笑みを浮かべる存在から私たちは見られていることに気づくだろう。
独特のルビ振りに酔うなかれ、口当たりよく耳障りよいせりふ回しに惑う無かれ。
張り巡らされた罠(文章構成力)に捕らわれるぞ、一睡の毒(世界観への没入)に犯されるぞ。

★★★ Excellent!!!

創意工夫を凝らし、『死』の色に彩られた作品世界。一片の隙もない克明な描写。
そしてこの作品特有の『死』の在り方の前に集い、振り回され、動き回り、冷たく戦う登場人物たち。
こんな巧みで味わい深い作品をコンテスト終了直前まで見逃していたことが残念で、残念で、本当に残念でならない。
どうか読んでみてほしい。プロローグというトンネルを潜り抜けたその先には、今まで見たこともないくらいに活き活きとした死の世界が待っているはずだから。

★★★ Excellent!!!

あまりにも荘厳なクライマックスに息をのんだ。
じつに作り込まれた舞台に、死人たちの命が花開く。
作者はきっとインゴルヌカ在住のゾンビに違いない。克明な描写がそう思わせてくれる。

父を弔うために、娘は葬儀屋に依頼する。
葬儀屋は死人を死に還す仕事だ。
そして、生者に死を諭す仕事だ。
冷え冷えとした北欧の空気に反魂の香りが漂い、父とその弟は死体の命を生きて、娘と互いに慕い合う。
生きることは、死人にとってもまた困難なのだ。

以上、完結まで読んだので再レビューでした。


以下、以前のレビュー。

2016年3月11日 04:45

死んだことの無い人には読んでほしい

明るい死体VS.無機質な死体のシリアスバトルが家族の繋がりをかけて展開され、生命の有無を越えて注ぎ合われる慕情が大団円を予感させる。
はやく完結が読みたい。
ごてごてとした設定にしては、不思議とすんなり読めるので、文章力の高さを感じる。
あと、ねこは丸ければ丸いほど良い。

★★★ Excellent!!!

北欧にある、死者のための都『インゴルヌカ』
この街こそが物語の最大の魅力である。
雪のように白く、そして雪解けのように汚らしい。
死者たちが認められるがゆえに死者がうろつき、そして使役され、処理されていく街。
その二面性と、様々な死者のための技術、そして死者でありながら人間のあり方を持ち続ける登場人物たち。
それらの雰囲気がこの北国の街に凝縮されている。
死者と生者の境界とはなんなのか。こんな街の中だからこそ、それを描く物語がある。

★★★ Excellent!!!

 一度死んだ者達の楽園インゴルヌカを舞台に繰り広げられる、タフでハードボイルドなサスペンス。生と死すら曖昧な都で、人の悪意あるいは運命の悪戯による、復活と崩壊に振り回される。
 親友と娘と己の生と死の中で揺れ動くニフリート、失われゆく自我の中で何より純粋に他人を想うベムリ、ニュービーながら必死に迫る運命に決断しようとするミリヤ、全てを見届けようとする鎮伏屋のサイゴ。
 豊かな筆致で描き出される生死混交の都インゴルヌカは、どこまでも滑稽で悪趣味で混沌としており、だからこそ、その中で生きる人々の在り様が尊く美しい。
 それと球体猫一体下さい。膝までなら差し出せるんで。あと四本腕の戦闘用ドレスゾンビ(趣味は編み物)のエヴァ49が萌えキャラすぎて生きるのが辛い(インゴルヌカなだけに)。

★★★ Excellent!!!

 第一章まで読ませていただいた者です。
 この物語の魅力は、やはりこの世界観にあるなと私は考えております。第一章の第二エピソードくらいまで読んでみて下さい。「こ、これは!」と感じた方は、多分ハマる要素があります。

 インゴルヌカ。まずこの舞台の猥雑さが良いですね。
 フィンランドが本当にこんな感じかはよく知らないのですが、あらゆる人種、綺麗さと汚さ、生と死。あらゆるものを無理矢理同時に混ぜ込んだこの『カオスな遠い異国の地』感。そこが気に入れば、読むのが楽しくて仕方なくなるでしょう。
 特に私は異国にある中華街が持つあの雰囲気が好きで、そこに賭け試合をやらせる違法闘技場が加わった時は「あっ、最高か?」と思ったものです。

 そして更にラブリーなのは、やはり死の神聖性を冒涜した、この世界観であります。
 死んだ者が訳も分からずゾンビとして蘇る。それもロメロめいたクリーチャーとしてではありません。見た目も普通、人間のように思考し、生活できる。こんなに差が無いならば、生と死の境界線とは何なのでしょうか。
 セックスもできるし子どもも設けられるというところが特に良いです。死から生が生まれるというこの矛盾。たまりません。

 死者への敬意の無さは更に続きます。死者の中にも、人の技術によって蘇り、使役される者(ワイト)がいる。
 彼らはゾンビと違い『人間として蘇った』わけではありません。道具なわけです。自我が無い、人権が無い。当然死者(ゾンビ)が死者(ワイト)を使うって場合もあります。
 死者の肉体を使ったその便利な道具を製造することは、インゴルヌカの『主要産業』。死者への迫害を恐れ逃げた者達が集ったこの土地で、死者が死者を冒涜している。この矛盾は本当に味わい深いものがあります。

 こんな魅力的な世界で動き回る登場人物達の物語。魅力が無いわけありましょうか。
 エピソード一本一本は… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

あまり知らない極北の異国、スオミ(フィンランド)の架空の都市インゴルヌカを舞台に繰り広げられる生者と死者たちの奇譚。

死者蘇生、不死者などはフィクションで特に珍しくもない題材ですが、この作品ではゾンビやワイトの設定がよく練られているだけでなく、彼らの存在が当たり前になった町の生活、独自の価値観が微に入り細を穿つ筆致で描かれており、その情景が目に浮かぶようです。

我々と同じ、死を経験していないふつうの人間(モータル)。
心を持たない死体人形とされるワイト。
崩れゆく生前の人格を引きずるマインドワイト。
蘇った死者として、亡霊として「生まれてきた」ゾンビ。

各々異なる生の在り方を持つ登場人物が交わり、織り成されるドラマは物悲しいですが、読めばきっと心に響くことと思います。







★★★ Excellent!!!

屍者の帝国、ニンジャスレイヤー、その他SF的な世界観を好む方々には間違いなくおすすめです。
ネクロパンクという言葉を今まで知らなかったのですが、この作品は正しくネクロパンクというべき作品で、爛熟した技術がもたらす退廃的空気に死の香りが混じり、終末的アトモスフィアを醸し出しています。
この独特の世界を一人でも多くの人に知ってほしい。
特にヘッズには知ってほしい。
というかヘッズなら多分馴染みがある! スゴク有る! ジッサイ面白い!

最後まで見ると……泣ける。


あと実写化したら二フリートさんはブラピとかどうですかね!

★★★ Excellent!!!

SFと言うには少し気が引けるが、ファンタジーとも呼べない。
サイエンスと言うには死者に感傷的で、ファンタジーというにはあまりに無機な独特の雰囲気、アトモスフィアを発する作品。
とにかく用語がするすると頭に入ってくる、文章のテンポの邪魔をしない。
ルビが多くとも、耳慣れない言葉が多くとも、この死者の闊歩する世界をいともたやすく読者に理解させてビジュアル的にイメージさせやすいのは、一重に作者の中にイメージがきちんと成り立っているからだろう。
「SFは絵だ」と誰かが言っている通りならば、この作品はSFなのだろう。
こんな違和感丸出しでブレイドランナー以来(あるいは以前)からのコッテコテな漢字描写や胡乱な裏路地を配置して、死者を歩かせて絵で見せているのだから。
だけれども、どこかファンタジックなのはそういう世界をあっけらかんと書いている暗くなり過ぎない表現のせいかもしれない。
もっとこの世界観に長く浸かっていたい…、出来れば文章だけで。

★★★ Excellent!!!

見捨てられし者ども――人々から、社会から、ありとあらゆる軛から、死をいう過程を経て生き永らえるハメになった吹き溜まり達の極北たる死者の街、インゴルヌカを舞台に繰り広げられる物語。
 男達は喪失した年月を、自らの過去の墓穴から記憶と共に暴き出す。きっと彼らが棄てるに棄てられず、諦めきれなかった残骸を求めて。
 少女は父の人生を追跡する。愛というには朧気で、絆というには頼り無い、或いはそれらの在り処や有無の確証こそを得る為に。
 そして弔い人は、死者の願いと生者の望みとを仲介し、慰問と鎮魂に奔走する。
 とかなんとか固っ苦しい前置きはこの辺にしといて、だ。
 ネガティブでしみったれた死への感傷なんざ一息に吹き飛ばされる塵芥に等しく、さりとて年月の経過如きでは決して薄れることのない生の記憶は尊重されて然るべき代物であり、見送る側と見送られる側の心意気とか、ちょっくら歪で凸凹しながらも最終的にはなんやかんで丸く収まる気しかしねぇ家族の愛とか絆とかの類が好きなら読んどけ! 損はしねぇぞ!