全てが許される都市、ネクロポリス・インゴルヌカ

 この壮大かつ緻密な物語のテーマは、「許し」ではないかと思う。
 様々な事件や出来事が絡み合い、過去に起こした過ちや行き違いの清算が行われていくメインストーリーは、想像する着地点を何度も裏切り続けて哀しくも愛おしい結末に収束していく。

 そして、何よりも作中都市、インゴルヌカの成立は、迫害され安息地を求めて集ったゾンビ達と共にある。そんな生きるという事への許しを求めた彼らアンデッド達の思いを優しく包み込む雑多で奇怪な都市、インゴルヌカの情景描写はとても美しく、読後には、この架空の都市に望郷にも似た思いを抱かされた。これは間違いなく一級品の作品である。是非、みなさまに一読をおすすめする。

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