父子は、修羅道を征く。

この物語の主役となるのは人でなし二人。
仙人である狗琅真人によって複数の魂を持つ存在となったウーと、恐ろしげな容貌と尋常ならざる剣技を持つコージャン。
父親に突き放されたウーが、コージャンの門弟――そして息子となることから物語は動き出す。

仙人という超常の存在と、樹霊発電という植物を用いた技術が組み合わさる世界観は独特。様々な箇所で近代中国を思わせつつも、まったく新しい世界の空気を読者に味わわせてくれる。

そして物語を彩る武人、剣客達の技の冴え!
それはただ『アクション』に留まらず、使い手の精神や生き方さえも含めて表わされる。切れ味の鋭い文章によって描き出される『武技』と『暴力』の圧倒的な違いには息を呑む。

この物語の肝となるのは、ウーとコージャンという二人の関係だ。
捨てられ、人の道から外れざるを得なかった者。
どう足掻いても人の道を行けず、諦めてしまっていた者。
そんな人でなし二人の間で紡がれるのは壮絶で、凄惨で、しかしどこか切ない物語の数々。血の道を行く人でなし達の間には、確かに家族としての温かな絆が存在している。

師と弟子――そして父と子という絆で結ばれる二人は、いかなる結末を迎えるのか。『本気の家族ごっこ』の行く末を見守りたい。

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