注解(column):仙人とは(後編)

【目次】

(前編 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884847436/episodes/1177354054886079066

●序文

●仙人とはなにか?

●仙人はどうやって生まれる?

●仙人の位階

(後編)

●仙人の種類

●仙人の仕事

●仙人の末路

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●仙人の種類


 仙人は修業を積んだ宗派によって、微妙に性質や文化が異なる(はちしゅう墨天ぼくてんしゅう唱歌しょうか正財せいざいしゅう滴心てきしんしゅう含典がんてんきょう瀧軼門ろういつもん、ほか多数)が、ここでは割愛。


 彼らは大別して、天・飛・鬼・地・人の五種類が存在する。

 もう一つ、「生まれついての仙人」として〝神仙〟という区分が存在するが、多くは仙人全般に対する名称として使われることが多いので除外。


1.天仙てんせん万元ばんげんしょう有天うてん無時むじ六問虛空ろくもんこくう天尊てんそん

 仙人の到達点、完全体。肉体のみならず、心まで不老不死を得た。もはや地上に姿を現すことはなく、この世界の「外」へ飛び立っていることが多い。

 多くは伝説、神話上の存在であり、天界で役職についている者が多少知られている程度。この世界の外で宇宙の興亡をかけた戦争に参加してたりもする。


2.飛仙ひせん霍黎公かくれいこう力塔老りきとうろう自在じざい大師だいし

 天仙よりはまだ地上に現れる可能性がある存在。神々として信仰されていることも多いが、最も自由気ままにやっている連中なので、知名度は微妙なことも。


3.鬼仙きせん泣鐘きゅうしょう真君しんくん嘆蝉たんぜん道人どうじん解魂げこん夜天やてん

 冥界に住む仙人の総称。八割がたは冥府で役職についているため、多くは規律に厳しく、完璧主義で、少数精鋭を気取っている。鬼仙候補者には悪鬼のごとく厳しい。

 伯位になると人間の寿命に対して権限を持つので、「鬼伯きはく(死神)」と呼ばれる。


4.地仙ちせん狗琅くろう真人しんじん鬼城きじょう瑣慈さじ太夫たゆう、三大菜公さいこう

 最も数が多い仙人。鬼仙は最初から鬼仙を目指して修業するが、それ以外はまずここから仙人としての道を始める。

※菜公(お料理仙人)は何度か入れ替わっているが、現在の三名は全員地仙。


5.人仙じんせん(?????)

 いわゆる人工仙人。二種類の意味がある。

 a.仙人が造った道具や生物が、自我や知性を獲得し、昇仙したもの。

 b.人間に術をかけ、寿命や【魂】を削ることと引き換えに、一時的に仙人に等しい能力を与えるもの。通常、使うことは禁じられている。


                 ◆


●仙人の仕事


 一度仙人になってしまうと、俗世で労働することもなく、非合理的な感情に悩まされることもなく、百年ぐらいは気ままにのんびり生きてしまうことが出来る。

 よって本来「仕事」をする必要はないのだが、神霊庁は人間社会と仙人界をつなぐ役所となっており、「仙人になってまで書類仕事が好きな変態」が集まると評判。


 特に、冥府を管理する立場につくと、五十年ばかり無休で働くこともざらである。

 他、発狂して邪仙に堕ちた者の捕縛・討伐、何らかの罪を犯した仙人の裁判などなど、その業務は多岐にわたる。


 一般人に最もよく知られ、そして重要視されているのは「中元節ちゅうげんせつ」の祭りと、〝反魂はんごん〟の儀式であろう。

 すべての人は神灵カミより【魂】を賜り、寿命半ばで命を落とした場合、【魂】の返却を求めることが出来る。個別対応は基本的に出来ず、年に一度「中元の日(移動祝祭日)」に全国各地の寺院に仙人が招かれ、まとめて反魂の儀式を行う。


 ただし、殺人や強盗など重犯罪を犯した者は、反魂手続きの許可そのものが降りない。そのため、強大な黒手党マフィアなどは堕落した邪仙と取引して「ヤミ反魂」を行う。

 もっとも、邪仙が満足する対価を用意できなければ、凄惨な破滅が待つだけであるが……。


                 ◆


●仙人の末路


 不老不死の仙人といえど、殺されることも滅ぼされることもある。でなくとも、長い長い時を生きる内に、精神の均衡を崩して発狂や痴呆に到ることは避けられない。


 そのため、いくつかの宗派では「人を殺した」「痴呆になった」などの一定条件で自死機能が発動するよう、あらかじめ元神がんしん(仙人としての体)に仕込んでいる。

 自動自死を利用していない宗派では、邪仙が出た時はその師または弟子といった身内が、責任を持って討伐する場合が多い。


 仙人は第三の目(髄晶ずいしょう)で常に情緒を調整しながら、己の目的や愛情を【大事だいじもの】に固定化して正気を保ち、延命を図っている。

 また、最初の段階ほど、後々の動作不良を起こさないための設計が重要なため、弟子は師匠に決して逆らってはいけない。従わないなら昇仙しょうせん出来ないのはもちろん、反抗的なため殺された仙人候補者も少なくはない。


 ところが、ごくごく稀に発生する、誰にも師事せず独力で昇仙(手続きではなく、羽化うか出胎しゅったい)した者は、こうした安全策に乏しいため、邪仙化の危険性が高い。


 いずれにせよ、己を保ったまま永久不滅の存在になる道は、完全な仙人「天仙」のみ。さもなくば、何百年か生きた所で潔く死ぬか、狂って殺されるか。

 不老長生のみならいざしらず、不死不滅は見果てぬ夢。その末路がどんなに悲惨であれ、天仙が狭き門であれ、人の寿命を超えた生を求める者は後を絶たない。


(終わり)

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