求めたものは永遠、そして家族

 『死者、インゴルヌカにて』や『人でなしジュイキンの心臓』等、作者の方の作品は世の理から外れてしまった存在についてのテーマで通底していることが多いようです(傷病者、ゾンビ、幽霊etc)。
 そして今作でフィーチャーされているのは「仙人」。不老不死となり数多の異能を操る超越者。人間の矮小な情緒から解き放たれる一方、永い時の中で正気を保つために自分の心の拠り所である大事之物(だいじなもの)を抱える。この設定が本作の核であったように思います。
 途方もないスケールの仙術や武技が飛び交うアクションが描かれる中で、ドラマの軸はあくまでも登場人物達の個人的な執着や生活の段取りに収まっている。それ故の「家族ごっこ」というキャッチコピー。とはいえやはりメインキャラが誰も普通の倫理道徳をぶっちぎっているので、常にバイオレンスでアモラルな香り漂う無二の物語になっていました。
 個人的には「従冥入冥」編がお気に入りでした。「戸籍作りのために冥府に行く」という本作らしいマクロとミクロの振れ幅、そして冥界の幻想的な情景描写の美しさが際立っていました。
 終盤のえぐいはずだけれど爽快なある人物の目的遂行からのたまらなく多幸感あふれるラストシーン。最後までアウトローな幸せを貫いた家族譚でした。

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