附録(extra)

用語集(glossary)

 本作は色々と特殊な用語が多いので、さっくりとした解説をば。


大閻だいえん帝国ていこく

 本作の主な舞台、現実の中国に相当する。閻国、閻朝。

 詳しくはコラムを参照(https://kakuyomu.jp/works/1177354054884847436/episodes/1177354054886108249)。


神灵カミ

 各国に存在する神格。単に神と言った場合は、民間信仰上の存在も指すが、神灵表記の場合、国家に認められた正規神格のみを指す。

 ご利益や逸話は宗教や俗信上のもののみで、どの神灵であっても基本的に行えることは「【魂】を与える」「寿命半ばで死んだ者に、【魂】を返却して生き返らせる(反魂)」ことのみである。


■【魂】

 神灵が記録する、人間存在の全情報。記録自体は冥府で管理されている。

 国によって多少規格の違いがあり、閻国の場合は「三魂さんこん七魄しちはく」である。魂が精神を司り、魄は肉体を司る。魄については傷ついても医者や道士が治療出来るが、魂(および【魂】)については、一度破損すると修復は難しい。


仙人せんにん

 大閻帝国、ならびにその文化圏内に発生する、不老不死の超越者。

 神灵と人間を仲介する役割を持っており、年に一度「中元の日(移動祝祭日)」に行われる中元の祭り(中元節ちゅうげんせつ)で唯一〝反魂〟の儀式を執り行える存在。

 一般人には神聖で英雄のような存在として扱われているが、堕落した邪仙はまさに生きた災厄であり、そうでない仙人も、実はかなり迷惑をかけてくる。

 基本的に人の心などない。

 詳しくはコラムを参照(前編:https://kakuyomu.jp/works/1177354054884847436/episodes/1177354054886079066

 後編:https://kakuyomu.jp/works/1177354054884847436/episodes/1177354054886099843)。


反魂はんごん

 文字通り「魂をかえす」こと。仙人のような超越者にでもならない限り、人間は国によって寿命が定められている。その寿命が残っている状態で死亡した場合、犯罪などで失点がなければ役所で復活の事務手続きが可能。

 ただし手続きは、冥界にいる本人ではなく、現世にいる遺族でなければ不可能なため、天涯孤独な人間は死んだらそれまでである。社会福祉の一種。

 また反魂自体はいつでも可能というものではなく、およそ年に一回程度の周期で複数人まとめて行われるのが常。その時はたいてい、盛大な祭りとなる。


■ニング

 霊的弱者。神灵に与えられた【魂】(三魂七魄のうち、三魂)が欠け、復活が出来ない。肉体と霊魂のズレにより、足元に影が落ちないのが特徴。

 短命でもあり、他者を傷つけて影を奪うことで永らえ、更に同じニングに変えてしまう。そのため、化け物扱いで狩りたてられるさだめ。

 それ以外にも、様々な特殊能力を持ち、危険視されている。


はちしゅう

 ニングによるニングのための組織。影を奪われる心配がないため、同族狩りを行うことで人間社会に存在を許容されている。


内力ないりき

【魂】から引き出される力。霊力、気力、仙力、法力の武術界版言い回し。

 まず前提として、この世界の「燃焼現象」には、物質が霊体へ相転移する現象も含んでいる(死者に仕送りしたい時、送りたいものを燃やすことで冥界へ届けることが出来るのは、この原理による)(火力樹霊発電も、この原理に基づいている)。

 人間の体内ではその逆に、霊的なものを物理的なものへ変換する代謝が存在しており、肉体鍛錬や精神修養でこれを利用できるようになる。


内功ないこう

 内力を扱う技術(武術)と鍛錬のこと。

【魂】からより効率よく力を引き出す〝振魂しんこん励起れいき〟と、内臓や骨格、血液循環など本来動かせない所まで己の肉体を操作可能にする〝魂魄こんぱく伝導でんどう〟の二つが主軸。

 内功を中心に扱う武術流派を壇派だんは、または内家拳ないかけんと言い、頼派らいは外家拳がいかけんとよく対比される。


樹械きかい

 植物でありながら、複雑な機構や植物らしからぬ特性を備えたもの。臓器の代わりをする苗、発電する樹、植え付けた人体を強化する草花など。

 元来は青匈奴という異民族が有する技術で、かつては彼らと取り引きするしか手に入れる手段はなかった。しかしとある冒険家が樹霊の苗木を盗み出し、状況は一変。

 それから更に百年ほどで、人工樹霊〝樹霊子プラント〟が開発され、工場で大量生産する産業革命が起きて閻は潤った。


賽駮客サイボーグ

 自らの肉体に樹械を植え入れて、身体能力を強化した者たち。特に戦闘に特化してるものを指す。外家拳士は大抵の場合、何らかの形で植入樹械インプラントを利用している。

 稀な例だが、青匈奴出身の仙人・力塔老りきとうろうは昇仙後も樹械との一体化を推し進め、巨大な「歩く樹木」と化している。


青匈奴あおきょうど

 緑肌りょくきじん。別名を允怛阿いんだつあ、ムガサジャ。

 人類で最初に樹械(彼らの言語では〝バダダブ〟)を使った民族。先祖代々、樹械を体に取り入れ続けてきたため、植物に近い性質を持つに至っている。

 森に住む青匈奴は神秘的で、死ぬ時は樹木に変わるが、都市に住む青匈奴は肌の色以外、さほど特殊性はない。


蔵魂器ぞうこんき

 霊具の一種、【魂】宿る道具のこと。ただしこの場合の魂は「霊力の発生源」となる核のことであり、意志や知性が宿っていると言う意味ではない。

 作成には最低一人分の生贄を必要とするため、神霊庁の許可なく所持・製造することは重罪。【魂】を封じる手間から、ニングを潰して造ることが多い。


樹霊じゅれい発電はつでん

 地にある【魂】が天へと昇る時に発生する、霊位勾配(霊価れいか=電荷の移動)を利用した発電。古代における人身御供の原理、特にその樹霊版。

 かつては鶏を潰す、牛を殺すなどの方法も使われたが、現代では樹霊が最も効率がよく穏便であるとされ、世界的に普及している。


電磁でんじ蒸気じょうき

 炭になることで凝縮された樹霊たちが、焼却されることで高次元に相転移する際に発生する排煙。天国への階段。神通じんつうえん

 閻では神灵が仮の依り代として使っていた神樹を破棄する際、大々的な儀式を行って燃やしていた。その時から、【魂】あるものを燃やすと天へ続く煙の道が発生することが知られており、蒸気機関の発明と共にそれは樹霊発電と結びついた。


灰魚ツイグー(かいぎょ)

 ミズチノトカゲギス目オオカイギョ科カイギョ属カイギョC.

 宙遊漁(空を飛ぶ魚)の一種。見た目が深海のギャング・ホウライエソそっくりなので怪忌的グロテスクかつ怖い。都市部の煙害対策として放流されたが、煙害が減ると今度は邪魔になって人間から狩られるようになる悲劇の魚。

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