第55話 情勢報告ⅲ ミハイル連邦


 ――――ミハイル連邦 首都モスカ 党中央委員会。


 ここでは、連邦の各委員会や軍部のトップたちが集い、これからの連邦の道筋を決定する。

 モニターを前にコの形で並べられたソファー、青ざめる表情の彼らを一瞥できる位置に、私も腰掛けていた。


「同志書記長、西方方面軍より連絡です。たった今カーラグラードに出現したユグドラシルと呼ばれる敵拠点への攻撃作戦が開始されました」


 恐る恐る口を開く彼は、帝国主義たるテオドールに泣きついた"元"空軍人民委員の部下だった男。


「うむ、同志空軍人民委員よ、祖国を脅かす侵略者には無慈悲な鉄槌を落とさねばならん。同志はシベリアーナ送りとなった元席の者よりも優秀だと期待している」


 連邦の土地を帝国主義者どもに踏み荒らさせた売国奴は、内務人民委員が速やかに木の本数を数える仕事に就かせた。


 ――神に祈るような者は信用できんな。


 これまで幾多の帝国主義やブルジョアジーと戦ってきた連邦だが、存在しない神を名乗るテロリスト連中は初めてだ。

 しかし我々がすべきことは変わらない、ポラニエ回廊を飲み込んだ時と同様、同志ウルジミールの築いた思想を拡大するのだ。


「同志陸軍人民委員、テオドール帝国の特殊魔装化部隊とやらは、まだユグドラシルの中にいるのだな?」


「はいッ、同志書記長。数分前よりテオドールの帝国主義者どもから攻撃中止の要請が届いております」


 テオドールの魔装化部隊とやらは、対アスガル戦において多大な戦果を上げているとスパイより伺っている。

 この戦争が終われば、次は我々にその矛先が向くのだ。


 なら、恐怖の芽は先に潰さなければならない。

 人間を信用などしてはならないのだ。


「同志空軍人民委員、テオドールの戯言ざれごとは無視して構わない。ミサイル攻撃を開始したまえ。テロリストと帝国主義者を葬るのだ」


「はッ! 直ちに! 同志書記長!!」


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