第54話 魔法攻撃
「魔力装填率40パーセント! 完了まであと600秒!」
一刻も早く流し込む、我々は目の前で奮闘する元執行者を前に、己が役目を全力でこなしていた。
早く、早く早く早く......! ただただ動けぬ自分を呪う。
ベルセリオンは単身でかなり善戦しているが、神器もなしに執行獣と戦うのはかなりの無茶だ。
あと少し、決定的な一撃を前にマジックライフルを握りしめる。
「ゴギュララララララッッ!!!!」
機動する彼女はヴィゾーヴニルの全身に銃弾を撃ち込み尽くし、とうとう魔力刃での近接攻撃に移った。
「あといくつですか!?」
「充填率65%! もう少しだ!!」
大隊全員で杖を握り、少なくない魔力を注ぐ。
「早くしろッ!! さすがにそろそろもたないぞ!」
刃を振るうベルセリオンが叫ぶ。
既に彼女も満身創痍であり、口元からは血を流していた。
「ガギャララララララララ!!!!」
ヴィゾーヴニルの攻撃で瓦礫は砕け、轟音がこだます。
もはや遺跡の名残りは消え失せ、戦闘の激しさを物語っていた。
「充填率88%突破!! 第1中隊は魔力充填作業を中断し、援護射撃!!」
魔力をほとんど出し切った第1中隊10人が、マジックライフルから離れ、待ってましたと叫ばんばかりに銃声を響かせた。
「充填率95%! 第2、第3中隊も離脱せよ!!」
初めて使う敵の武器だが、絶対に成功させる。
その照準を、俺は防御体勢に移ったヴィゾーヴニルへ向けた。
「魔力充填完了!! 発射用意よし!!」
第4中隊とナスタチウム中尉、ラインメタル少佐も遂に離れる。
サイトもストックも無い正真正銘の魔法の大杖、第315魔装化機動大隊ほぼ全員分の魔力を乗せ、俺は思念した。
「発射ッ!!!」
放たれる一撃は帝国の鉄槌、
「がっッ......! ギャア!!????」
100%魔力だけの一撃、ビームのような魔法攻撃に貫かれたヴィゾーヴニルは、狂ったレコーダーのような音を立てて沈黙。
天空が裂け、我々はコアのある広間へと戻った。
「ベルセリオン! 大丈夫か!?」
全身を傷だらけにした彼女へ駆け寄る。
「――――私は大丈夫だ、それより早くコアにトドメを刺せ。あれを破壊すれば元の世界と通信もできるようになる」
さすがに元執行者なだけあり、見た目よりは軽症。
爆破用員がコードリールを伸ばし、全員が物陰に待避した。
「発破5秒前! ――――3、2、1......今ッ!!!」
カウントダウンの終わりと同時に点火。
眩く光る世界樹のコアは、高性能爆薬の炸裂により消し飛ばされる。
地響きが終わると、すぐに長距離通信機が鳴った。
ベルセリオンの言うとおり、外界とを隔てる神壁が消えたのだろう。
あとは脱出してから樹を破壊すれば――――
「緊急!! 大隊本部よりカーラグラード全域に空襲警報です! ミハイル連邦軍、戦略爆撃機編隊が急速接近中! ユグドラシルの苗木を巡航ミサイルによる飽和攻撃で破壊するとのことです!!!」
「なッ!!?」
あのコミュニスト共......! 世界樹攻撃にかこつけて我々も一緒に葬るつもりかッ!?
「総員全力で走れッ! 脱出が間に合わなければ我々は永遠に国へ戻れんぞ!!」
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