第53話 VSヴィゾーヴニル


 屋内から一変、天空に浮かんだ遺跡のような場所で、レーヴァテイン大隊は執行獣ヴィゾーヴニルとの交戦を開始した。


「撃てッ!!!!」


 サブマシンガン、フルオートショットガンの銃口が一斉に火を吹く。


 9ミリパラベラム弾がヴィゾーヴニルの頭部を貫き、魔導ブーストによる驚異的な速度で肉薄したショットガンが、両サイドから挟むように12ゲージ散弾を連続で叩き込んだ。


 ただのニワトリなら肉片すら残らない近代武器による攻撃、弾着部位からドス黒い血が溢れ、貫かれた顔面も原型を留めない。

 大隊は一旦距離を置くが、ヴィゾーヴニルは血濡れた翼を大きく広た。


「ごきゅ......ッ! キュコオオオオオオオオッッ!!!!!」


 目標健在!? 弾は間違いなく命中していたはず。

 にも関わらず意に関してすらいないとは。これが執行獣ヴィゾーヴニルか......!


「がぎゅ! ガアアアアアアアアアアッッ!!!!」


 無数の魔法陣がヴィゾーヴニルの上に出現、その全てが莫大な魔力を有していた。


「回避ぃッッ!!」


 大隊は乱数回避運動を展開、高出力レーザー砲のような拡散魔法攻撃は、またたく間に遺跡を空間ごと破壊した。


「キャッ!?」


「中尉ッ!!」


 凄まじい面制圧攻撃を前に、ナスタチウム中尉が爆発に巻き込まれてしまう。

 乱数回避も運が悪ければ当たってしまうのだ。


「こっちだ! ニワトリ野郎!」


 マガジン交換と同時に援護射撃、ヴィゾーヴニルの頭部に30発の拳銃弾を浴びせるも、ヤツは怯む様子すら見せない


「化物めッ!!」


 再び魔法が中尉に放たれるが、飛び込んで来た漆黒の暴風により、攻撃は彼女の眼前で弾き消される。


「大隊長!?」


 2本の銃剣に魔力を宿らせたラインメタル少佐が、魔法をたたっ斬っていた。


「コキュルルルルルルルルアアアア!!!!!」


 猛攻は終わらない、数十の魔法が一斉に発射され、遺跡を更地に戻さんとばかりに叩きつけた。

 少佐が爆炎に包まれるが、その不安は杞憂に終わる。


「ハアァァァァァァーーッッ!!!」


 黒煙を突き破った少佐が一気に肉薄、魔力刃でヴィゾーヴニルの喉元を切り刻んだ。

 畳み掛けるなら今しかない!


「中尉! 動けるか!?」


「大丈夫です! ちょっとふっ飛んだだけですから!」


 少佐の攻撃で仰け反ったヴィゾーヴニルへ、2人がかりでの追撃。

 近くで見れば、本来死んでいるべきダメージを与えていることも確認できた。

 まさか。


「グレネード!!!」


 10人以上がとどめと言わんばかりに手榴弾を投擲、爆発がヴィゾーヴニルを覆った。

 しかし――――


「ギッ! ガギャラララララララララララッ!!!」


 目標健在、不死身かこいつは......。


「やはりヴィゾーヴニルは世界樹と繋がっている、世界樹を潰さん限り、完全に殺すことはできない」


「......打つ手無しということか?」


「いや、ジークが斬った箇所を見てくれ。あそこだけ再生が遅れている。魔力を付与された攻撃はある程度有効だろう」


 つまりは銃弾が効かないのか。

 決死の近接戦を覚悟した時、ここに来る前執行兵から鹵獲した魔法弾発射機マジックライフルを思い出す。


「なあ、これにありったけの魔力を込めて撃ち出せば、なんとかロケット砲くらいの威力にはならないか?」


「不可能ではない、だが魔装化機動大隊全員の魔力を合わせなければ無理だろう」


 魔力を込める間は戦えない......か、やはり無理だと思考した瞬間、銃剣を携えたベルセリオンが前へ歩み出た。


「わたしが足止めする、ヤツにダメージを与えればコアのある部屋に戻れるはずだ。――――5分稼ぐ、その間に充填を済ませろ!!」

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