第44話 VS機銃オーガ


「回避行動を取り続けろ!! 1発でも貰えば粉微塵にされるぞ!!!」


 吹き飛ぶ家屋、えぐられる石畳の上で315大隊は全力機動で風より早く舞い、対空砲の弾幕を避け続けていた。

 敵の火力はこちらのそれを上回っていたが、アルバレス中尉の放つ対物狙撃銃アンチマテリアルライフルによる狙撃が生き、オーガ級を押し返すに至っている。


 そしてまた、敵部隊左翼に対し瓦礫へ隠れていた隊員がロケットランチャーを向けた。


「第4中隊! 斉射よーい――――撃てッ!!」


 推進音もつかの間、対空砲を抱えたオーガ級4体が戦車すら破壊せしめる対戦車火器の直撃を受けて制圧される。

 ベルセリオンとテオが何をするつもりかは知らんが、ヤツらを広場へ押し込めることで殲滅できるのなら、賭けてみようじゃないか。


「ギュラララララアアアアアアアッッッ!!!!」


 コンクリートを引き裂く弾幕が俺へ指向される。

 直線なら避けられないとでも思ったか、舐めてくれるなよ傀儡が! 


「うおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!」


 廃車を踏みつけ一気に加速、針で隙間を縫うように魔法弾を回避、目前の歩道橋を飛び越えて俺は1体のオーガへ距離を詰めた。


「吹っ飛べ!!」


 最後のロケットランチャーを発射、空中より放たれた弾頭は寸分の狂いも無くオーガの顔面を穿つ。

 俺がアスファルトへ転がると同じくして、相手も巨体を地に落とした。


 残りは――――、ッ!?


 ビル影から追加で2体、計ったように姿を現す。手持ちの重火器はもう無い、ここは引くか!?


「いいやフォルティス大尉、進むぞ!」


 前へ立ったのはラインメタル少佐、両手には2本の銃剣が握られており、魔力も付与されているようだった。


「このまま連中を広場まで押し込む、そこまでやれば我々の仕事は終わったも同然だ」


「......相変わらず正気を疑いますよ、対空砲の雨が降るというのに」


「なあに、ここで長引くのが好かんだけだよ」


 相手の射撃が始まると同時に踏み出す。

 少佐は踊るような、しかし全く無駄のない剣さばきで飛んでくる弾を弾き斬った。人間と思えない動きには感嘆するしかない。


 アサルトライフルで掩護する間もなく、少佐は魔力刃でオーガの持つ対空砲を閃光の如き速さで叩き斬った。

 武器を失った2体は後方へ撤退、広場へ戻ったであろうことを確認すると、通信を入れた。


『こちらラインメタル大隊長、各隊、状況を報告しろ』


『こちら03、河川付近のオーガ部隊を撃退、軽症者が出ましたが戦闘の続行は可能』


『04、スケルトンメイジ級を全て撃墜しました、残存する敵地上部隊の後退も確認』


 戦術目標は達成された、あとはテオとベルセリオンの火力支援待ちだ。


「大尉、せっかくだ、見晴らしの良い場所へ行こう」


「はっ、見晴らし......ですか?」


「あぁ、神の矢が、神の人形と無神論者であるコミュニストの肖像を赤い広場ごと消し飛ばすんだ。是非とも拝見したいところだろう?」


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