第43話 元執行者VSレクトル
「もーなんなのこいつら! 数多すぎるわよお!!」
高層ビルの上層に登った辺りで、私とテオは激しい抵抗に遭遇していた。
敵はスケルトンメイジ級、エントランスホールにも似たこのフロアの上層、壁に隠れたテオが喚いている。
「ええいうるさいぞ、騒ぐ前に動け! 合図を出すからその瞬間に突っ込め」
「りょーかい!!」
サブマシンガンを掃射、階段を駆け下りながらテオを掩護射撃。数体のスケルトンメイジを撃ち抜いた弾丸が背後のガラスを粉微塵に破砕した。
発射サイクルが速すぎて制圧には不向きだが、小柄な私が扱うにはちょうどいい銃だ。
「『
コローナから次の弾倉を取り出す、雷属性魔法の刃を潜り抜け、ドットサイトの中心に敵を据える。
フラッシュライトとマズルフラッシュで照らされた骸骨の人形をバラバラに砕くと、うまく距離を詰めたテオがグランドクロスで瞬きする間に敵部隊を叩き切った。
「ふう、いっちょう上がり!」
魔法によって焼き焦げた室内、バラバラになったスケルトンメイジの残骸を横目に、やってやったとドヤ顔するテオ。
「まだ上が残っている、休んでいる暇は無いぞ」
「そうね、なんかエルド達魔導砲持ったオーガに珍しく苦戦してるらしいし、一気に駆け上がっちゃいましょ」
砕けた窓から外を見れば、少し離れた住宅街で連続した爆発が発生し、暗闇に時折光が瞬いていた。急いだ方が良いな。
非常用階段を走り上がり、屋上を目指す。
「ねえベルセリオン、なんか雰囲気変わった?」
「......いきなりどうした? 私は私だ」
「そうそれ! あの戦いから自分が前に出てきたっていうか、以前のあなたなら『自分は主に従う執行者だ』としか言わなかったじゃない」
そう言われれば......、前の私は人形のように与えられたものでしか考えられなかった。でも今は違う、私は私なんだ、自らの意思で動く1個の存在。
きっかけは......あの男だろうな。
「自由意志の放棄は死も同然、そう言われて初めて気付いたんだ。盲信するだけでは何も変わらない、自分で考え動くことで答えを見つけられるのだと」
「エルドの言葉ね、やっぱりあの人は面白い」
好奇心の権化め、そんなテオに乗せられている間に、屋上とを隔てる扉へ辿り着いた。
魔力探知にこれ以上反応は無いが、隠蔽されているかもしれない。
「......開けるぞ」
敵が待っていることを想定し、扉を蹴り開けると同時に銃口を向ける。
だが、広がっていたのはあまねく星空と空っぽの屋上。敵の姿は見当たらない。
「これで制圧だな、街で一番高いビルだけあって見渡しも良い。対空砲も無さそうだ」
とりあえず一段落か、銃を下ろした私の肩をテオが叩く。
「ねえ、あそこに見えるのって......」
指差された方向、視線を移して見れば"それ"は見えた。
「広場!?」
そうか! なぜ連中がここに部隊を置いていたか、理由はこのビルの高さだ。
ここなら敵の対空陣地がまるごと視界に収められる! なら"あれ"を使えばもしや......。
「テオ、私が渡したあれ、ちゃんと持ってきてるな?」
頷くテオ。
「よし、準備しろ。敵に万事休すを与えられるぞ!」
私は高揚しながら、送信ボタンを押した。
「こちらベルセリオン、ビルの制圧に成功した。準備でき次第大規模火力支援を行う、一撃で殲滅したい、敵主力部隊を広場に押し込めてくれ!」
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