第37話 ケジメ
さて午後へ突入したわけだが、俺達は次にゲームセンターへやって来た。
前に訪れたのは士官学校時代、確かグラン・アルバレス中尉と遊びに来た覚えがある。
ちなみに彼とは当時から仲が良く、ライフルで狙撃するゲームをよく遊んだっけな。......まあ勝てなかったが。
「エルドーー!! この虫キモい! ゾンビ怖いーー!!」
「なにをやっている! 右の敵を撃て! テオ・エクシリア!! っというかなぜこれを選んだ!?」
「だって面白そうだったんだもん!」
俺の横では、気味の悪い敵が出てくるシューティングタイプのアーケードゲームを遊ぶ、涙目のテオと妙に手慣れた様子のベルセリオン。
しかもスコアを見ると、撃破数のほとんどがベルセリオンじゃないか。
「ほお、なかなか上手いな」
「こいつが下手過ぎるだけだ、それと、回復アイテムがあったからこの先大量にいるかもしれん。バディはもう使い物にならん故代わってくれるか」
「俺かよ」
「エルドお願い代わってえぇぇぇ!! もう虫は見たくないの! いきなり出てくるゾンビも怖いのよお!!」
「分かった代わるから! とりあえずコントローラーを貸せ」
恐怖で泣きじゃくるテオからライフル型のコントローラーを受け取ると、まず状況を確認する。
これは画面が勝手に動いていき、出てきた敵を狙い撃つガン・シューティングのようだ。
「出たぞ、撃てッ!!」
引き金を引くと発砲、リロードはコントローラーを振るか、画面外へ向けるかで行う仕組みである。
『このタイプにはマシンガンだ!』
ゲーム内の仲間から弾を貰い、積極的にヘッドショットを狙う。
これでも現役の帝国軍人だ、叩き込まれた最適の持ち方で、流れるようにスコアを積み立てていった。
「すごッ! もうボス戦!? なんで2人共そんなに上手いのよ!」
後ろでテオが感嘆しているが、もしかするとこないだの無反動砲ってマグレだったんじゃないかと思ってしまう。
だが......これで良いのか? 俺の両親を殺したのは神と宗教。でもその神と遊んでいる? いや! これは軍務だ、ここで私情を挟むのは――――
「エルド! 敵ッ! 敵!!」
「えっ? あッ!!」
画面に映ったのは"ゲームオーバー"という文字。
やってしまった、完全に油断していた。
「すっ、スマン。油断してた」
「......いや、元々ライフも少なかったしな、十分楽しめた。そろそろ他に行こう」
ベルセリオンは顔をしかめたりせず淡々と言うと、コントローラーを置く。
俺達が荷物を持って去ろうとしたところへ、ふと聞き慣れた声が掛けられた。
「あれ? エルドさんじゃないですか! ゲームセンターなんて珍しいですね」
なんと、同じく休暇中のグラン・アルバレス中尉だった。金髪と強面が合わさり、ゲームセンターの雰囲気と無駄に合っている。
その横、普段はポニーテールに纏めた茶髪をおろし、すっかり私服に身を包んだ同僚の女性も居た。
「エミリアじゃない! なんでグランと一緒に?」
テオが反応する。
「えっ、いやあの......それは」
「ああ、こいつも
傍目だと犬猿の仲だが、意外とそういうところではうまくやってるのか。
「まっ、まあそういうことになります。ですが、なぜそいつが大尉達といるんですか?」
一転鋭い目つきを浴びせた先には、ベルセリオンの姿があった。
「ラインメタル少佐から聞いただろう? 一応だが、今は協力関係にある」
「そいつは民間人を虐殺しようとしたんですよ! そう簡単に手の平を返すようなヤツが部隊に入るなんて、少佐の意向といえど容認できません」
エミリアの言うことももっともだ、彼女の"過去"を鑑みても当然の反応。しかし少佐もこうなることは分かっていた筈。
フードコートで聞いた話が本当なら、おそらく執行者に正常な記憶など無いのだから......。
「待て中尉!――――」
「構わないエルド、私がしたことはそれだけのものなんだ。彼女は間違っていない。つまりお前はどうすれば納得する?」
「納得も理解もできませんが、せめてケジメをつけてください」
エミリアは解いていた髪をくくり、針より鋭い殺気を放った。
「元執行者ベルセリオン、あなたに決闘を申し込みます。武器も魔装もなしの、正真正銘素手での真剣勝負です」
「分かった......、望むところだ」
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