第33話 情勢方向Ⅱ オリヴィア合衆国


 ――オリヴィア合衆国 国家安全保障局 とある執務室。


 神界アスガルと旧大陸連合の戦争は、長期化の様相を呈しているようだ。

 今でこそ気にする者も少ないが、ほんの数年前まではテオドール帝国とミハイル連邦による大戦争が危惧されていた。


 そういう意味で、彼らの出現は合衆国にとって悪いことばかりでもないのだろう。


 我々は中立を守り、彼らへ必要な武器を売り与えるのだ。

 同盟国のアルカディア連合王国へは、秋津と同じく後方支援のみに徹する。誰だって面倒ごとには進んで首を突っ込みたくなどない。


 国土を丸ごと占領された北方諸国の人間が難民として来るのは億劫おっくうだが、我々の問題はもっと別にある。


 そう、突如現れた彼らは『神』を自称しているらしいのだ。これは唯一神教たる我が国の世論を大きく刺激している。

 非常にデリケートな問題であるため、メディアは神でなく『レクトル』、『国籍不明のテロリスト集団』、中には『異星からの共産主義者』と揶揄する呼び名も使っている。


 しかし、現状国民や領土への攻撃も無い。

 海の向こうで合衆国の若者を死なすなど、それこそ我らが神の望まぬところだろう。


 あわよくば、共産主義者と帝国主義者で共倒れしてくれれば助かる。


 ――そういえば、テオドール帝国軍の特殊部隊に妙な者達が居ると現地諜報員から連絡があったな。

 見た目は端麗な少女らしいが、ただの人間ではないらしい。


 詳しく調べてみる必要がありそうだ......。


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