第11話 第315魔装化機動大隊


「さて大隊諸君、状況は以下の通り最悪だ。どうやらこの列車は最後尾付近を除いてほぼ相手方に占拠されてしまったらしい」


 腰に2本の銃剣を提げたラインメタル少佐が、言葉とは正反対の嬉しそうな態度で説明を始める。


 いやはや、クソったれも良いところな状況になってしまった。どこから漏れていたのか、俺達は今や完全に釘付けにされている。

 総勢44名の第315魔装化機動大隊が、完全武装、なんとかフル装備を行えたことは不幸中の幸いだろう。


 アサルトライフルに30発マガジンを装填し、薬室へ最初の1発を送り込む。


「敵は人型をしたレクトル、名を『執行兵』と呼ぶようだ。生半可な気持ちで襲ったことを連中に後悔させてやろうじゃないか」


 不気味に笑みを浮かべる少佐。だが、各員それが大隊長がするいつもの仕草だと理解していた。

 315大隊は、魔導適合の他に、この少佐から認められなければまず入ることが叶わない。


 選ばれる者はラインメタル少佐の独断と偏見で決められ、得てして大隊長が親近感を抱いた者に限られる。

 だからこそ、自らの長が持つ個性も大隊全員が把握している。


「よし、各中隊は早速突撃態勢へ移れ、そしてテオ君。きみには我が大隊のコールサインこと『レーヴァテイン』を与えよう。急な実戦で申し訳ないがね」


「いえ、構いません。むしろ私を部隊の一員として数えてくれることに感謝します」


 ヤツらはここにいる本物の神を殺す、もしくは捉えるべく列車を襲ったと見るべきだろう。

 テオが大きな魔力を感知出来るのと同じく、あのベルセリオンという執行者も同じ真似ができないとは思えない。


「でもお前、武器はどうするんだ? サブマシンガンなら予備もあるが......」


「大丈夫、武器ならここにある」


 見れば、それは一見何の変哲もないただの指輪。駐屯地でラインメタル少佐が返していたものだ。

「は?」と返した俺の前で、テオはなにやら詠唱を始めた。


「開け、深奥の扉。求めるは主の祝福を受けし剣、いでよ――《グランドクロス》」


 細い喉をき鳴らし、可憐な声を響かせる。

 冗談のようだった......。神々しく輝いた指輪から以前テオが持っていた武器、時代錯誤な色白い剣が姿を現したのだ。


「驚いた? これは《コローナ》っていうまあ......元執行者の嗜みかな。神界の武器庫にアクセスする鍵みたいなものなの」


 なるほど、それで軍の技術研究本部に預かられていたのか。


「だがそれにしたって剣1本じゃないか、戦えるのか?」


「私は神よ? あんな執行兵如きに殺されるほど落ちてないわ。むしろ、後ろから誤射しないでよね」


 俺の本心を知ってか知らずか、冗談でもないことを言う。

 たとえ相手がテオだろうと、俺の意思は変わらない。だが公私の区別はつけるべきだろう。


 まずは、眼前の敵を殲滅しなければならない。


「先方はいつも通り僕を含めた第1中隊が行う、残りの中隊はこじ開けた穴から各自殲滅戦を展開せよ」


 準備は整った。アルバレス中尉が対物ライフルのガシャっというコッキング音を鳴らし、ハンドガンを両手に構えたナスタチウム中尉の横に立つ。


「ヘマすんじゃねーぞ」


「アルバレス中尉こそ、一発でも外したらなにか奢ってくださいよ?」


 仲がいいのか悪いのか......一つ間違いないのは、実力だけは認め合っているところだろう。


「各中隊、用意完了しました」


 ラインメタル少佐は満足そうに頷くと、敵が来る間近の車両とこちらを隔てる1枚の扉へ向かった。


「大隊各員、『魔導ブースト』の使用を許可する。狩りの時間だ、存分に楽しむぞ」


 瞬間、少佐の瞳が紅く染め上がった。

 蹴り一つでドアが吹き飛ぶ、追い詰めたと思っていた敵さんはさぞ驚いたことだろう。


 なにせ、テオに負けじと両手に銃剣を携えた金髪の男が、人間離れした速度で突っ込んできたのだから。


「なんだこいつ!? きっ、近距離魔法弾! 放て!!」


 流暢りゅうちょうな共通語で執行兵の小隊長が指示。

 事前の情報通り、こいつらはある程度人間に近いらしい。手に持つ魔法弾発射機マジックライフルはこちらで言う銃に近い。


 しかし、言うが早いかラインメタル少佐は、近接武器で曳光弾を弾きながらくぐり抜け、一瞬で先頭の執行兵2名を屠ってしまう。

 それだけでは終わらない、向けられる弾幕を妖精が踊るように掻い潜り、次々と命を刈り取っていく。


 第1中隊は、そんな少佐をアサルトライフルで完璧に掩護。バースト射撃で精密に執行兵の体を撃ち抜いていた。


「――ラインメタル少佐、いい加減その真っ先に突撃する癖を直したらどうですか? あなたは部隊の指揮官なんですよ」


 最後の執行兵から銃剣を抜いた少佐は、これ以上ないくらい不気味に、楽しげに振り向く


「すまんねフォルティス大尉、残念ながらこれは生まれつき持った不治の病だ。こないだも軍医にさじを投げられたところだよ」


 全く、どこまでも狂った方だ。

 この車両を制圧していた30名の執行兵は、完全に殲滅された。


「大隊各員、残りは6両だ。手早く行こうか」


 315魔装化機動大隊。それは、魔導戦闘服により極限まで能力を底上げした帝国最強の即応部隊だ。

 思い知らせてやろう、俺達が半島の中小国家とは別次元の――洗練された本物の軍隊であることを。


※ ※ ※


余談ですが、銃ってどれくらい雨ざらしにしていいのかよく分からなかったので、知り合いの現役自衛官に聞いてみたところ。

「基本的には塗料が弾くよ、でもそれが無いと89もすぐ錆びるから整備が大事」と答えてくれました。


まさか小説のネタに使われるとは思わなかっただろうな(友達の自衛官です)

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