第23話 詠唱

「今日は昨日言った方じゃない道に行こうと思う」


「はい、行き止まりでしたもんね」


 迷宮についた3人は話をしながら歩いていく。しばらく歩いていくと3人の前にゴブリンが現れる。


「今日初めての戦闘だな。今回は笑う道化師の戦い方が見たいからまかせてもいいか?」


 空太が笑う道化師に聞くとボールを取り出しながら首を縦に振る。


「よし、まずはスキルを見ようかな。『幻惑』」


 空太がスキルを使うよう指示を出す。すると笑う道化師は持っていたボールの1つをゴブリンに向かって投げる。投げられたボールはゴブリンに当たると破裂してゴブリンの周りを霧が包み込んだ。


「当たったってことは成功か?ゲームだと成功すると混乱状態になるんだけど。霧が晴れるな」


 空太がゲーム中の状態異常を思い出していると、ゴブリンを包み込んでいた霧がだんだんと晴れてくる。霧が完全になくなりゴブリンの姿がはっきりと確認できるように少し歩くのにもたついている様子が確認できる。


「歩き方がちょっと変になっているから成功したのかな。次はスキルなしの攻撃だな、笑う道化師、普通に攻撃してみて」


 空太はスキルの成否を考えながら続けて攻撃するよう指示を出す。すると笑う道化師はスキルを使用した時と同じように持っていたボールをゴブリンに投げつける。ボールがゴブリンに当たると破裂せずに笑う道化師の手元に戻っていく。


「あのジャグリングしていたボールが武器だったんだ。あれ?ゴブリンの動きが……」


 笑う道化師から攻撃を受けたゴブリンは全く違う方向に歩いていきながら手に持っている棍棒を振り回す。


「混乱状態になっているのかな?」


 笑う道化師は混乱状態になっているゴブリンに続けざまにボールをぶつけていく。数発当たったところでゴブリンは光の粒子に変わり魔石が床に転がる。空太は笑う道化師に「お疲れ様」といい、魔石を回収する。


 魔石を回収した3人は昨日の分かれ道に向かって歩いていく。道中何回か戦闘を繰り返しながら昨日の分かれ道にたどり着く。


「確か昨日はこっちの道に行ったからこっちだな」


 空太は昨日と負った道を確認し違う道へと進んでいく。しばらく戦闘を繰り返しながら歩いていくと、真ん中に階段のある少し開けた場所に出る。


「2層への階段かな?次の階層に行ってみる?」


「はい、行ってみたいです」


 空太は2人に次の階層に行くか聞いてみる。フォーチュンは元気に答え、笑う道化師は相変わらず声を出さずに首を縦に振る。


「よし、じゃあ行ってみよう」



 3人が階段を下りると少し広い通路へとたどり着く。


「ここが2層かな?さっきと同じような通路だし」


 3人が歩いていくといも虫と遭遇し戦闘を始める。


「1層の時よりもやっぱり強いな。ちょっと試してみたいことがあるんだけどやってみてもいい?」


 空太は火球のカードを取り出し2人に聞く。2人から了承を得ると空太は魔法を唱える。


「詠唱:火球」


 空太がそう呟くと、持っていたカードが光り火の玉がいも虫へと飛んでいく。


「おおー、発動できた。使用回数も1つ減っているな」


 魔法が発動し、火の玉が飛んで行ったことを確認すると空太はカードを見る。すると残り使用回数の表記が5から4に変わっていた。


「よし、あれを倒したら今日は帰ろう」


 3人は1層の時より少し強くなったいも虫を倒し来た道を戻っていく。

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