第24話 杖と回復魔法
空太は門番に冒険者証と笑う道化師の分の通行料を支払い街へと入ると、すぐにギルドへと向かう。ギルドに入るとカウンターにいる職員に依頼書と魔石、冒険者証を提出する。
「はい、こちらが今回の報酬です。あと、フォーチュン様おめでとうございます。Eランクに昇格です」
フォーチュンは嬉しそうにニコニコしながら冒険者証を受け取る。受け取ると冒険者証に書かれてある『Eランク』の文字を見ながら「やった、マスターといっしょ」と笑いながらつぶやいていた。
「それと相田様、後ろの方なんですけど……」
笑う道化師の方をちらちらと見ながら空太に話しかける。冒険者らしくない服装、顔のメイクのためギルド内はもちろん、街の門からギルドまでの道でさえすれ違う人はビクッとした様子で笑う道化師の方を見る。子供連れの人は、子供の目を手で遮って「見ちゃいけません」的なことまで言っていた。
「はい、どうしたんですか?」
「その、そちらの方も冒険者登録されるんですか?」
「あー、この人は冒険者にならないみたいなんでいいです。服装も冒険者とは程遠い恰好ですし」
空太は適当な理由を作って伝える。
「そうですか。わかりました」
ギルドで報告を終えた空太は泊まっている宿へ行き、笑う道化師の分の追加料金を支払い部屋へと入る。部屋に入るといつもと同じように残っているMPを使ってカードをドローし、眠りについた。
次の日も同じように依頼を受け迷宮を潜っていく。召喚していた笑う道化師が消えると、また違うカードを召喚し迷宮の奥を目指し歩いていく。ある程度魔石を回収すると、また街へと帰りギルドで報告し、報酬を受け取る。報酬を受け取った空太達は昨日と違い、すぐに宿へと行かずに武器屋へと向かう。
「すみません、武器の製作を依頼していたんですが……」
「いらっしゃいませ。はい、完成しています。お持ちしますので少しお待ちください」
店員は奥から翠玉のついた1本の杖を持ってくる。
「こちらなのですが、名前は祝光の杖です。主に回復魔法の威力が上昇する効果が付与されています」
「ありがとうございます。フォーチュン、ちょっと持ってみて」
フォーチュンは空太に持っていた杖を預けると、店員から新しい杖を受け取る。
「ちょっと試してみてもいいですか?」
「店内に被害が無かったら大丈夫です」
「わかりました、ありがとうございます。『ヒール』」
店員に了承をとるとフォーチュンは空太に向かってスキルを発動させる。スキルが発動すると杖に取り付けられてある翠玉が輝きを放ち、空太を光が包み込む。
「今まで使っていたものよりも使いやすいです」
「回復魔法ってこんな感じなんですね。回復魔法を使う人が少なくて、今初めて見たのですがきれいな魔法ですね」
「そうなんですか?てっきり回復魔法の効果が上がる素材があるからよく見てると思ったんですが」
「翠玉を使った武器はよく取り扱うのですが、他の魔法の効果を上げるための武器だったので。効果は弱くなるのですが、攻撃魔法も効果が上がりますので」
店員は苦笑いしながら答える。
「回復魔法を使える人は少ないので、他の冒険者のパーティに引き抜かれないよう注意してくださいね」
「はい、気を付けますね。今日はありがとうございました。また何かあったら来ます」
「はい、またのご来店お待ちしています」
武器を受け取った2人は宿へと向かい宿泊期間の延長の手続きを済ませ、部屋へと入る。
「新しい武器も手に入ったしまた明日から迷宮攻略頑張ろう」
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