第25話 竜とポーション

「あれは……。5層への階段?」


 フォーチュンが新しい武器を手に入れてから数日間、空太はカードをドロー、召喚を繰り返しながら迷宮に潜っていた。


「確か5層ってボスの魔物がいる階層だよな。ちょっと覗いてみるか」


 空太達は階段を下りていく。すると降りた先は奥に門の見える1本道が続いていた。


「今までだと降りた場所に門なんてなかったよな。あの奥にボスがいるのか」


 空太達は今までの階層との違いを考えながら門へと歩いていく。


「思ってたよりも大きいな。よし、開けるよ。フォーチュン、鎧の騎士、一応構えておいて」


 空太はフォーチュンと新しく召喚した鎧の騎士に指示を出し身長の倍くらいある大きな門を押す。すると、ぎぃっ」と鈍い音とともに門が開かれる。門の先には今までの通路とは違い、大きく開けた空間と全体を照らすように壁に立てかけられた松明、そして空間の中央に大きな影があった。


「マスター、あれってもしかしてドラゴンですか?」


「たぶん、前に読んだ本だと5層のボスはドラゴンって書いてあったから……」


 フォーチュンが空太に聞くと、空太は前に読んだ本の内容を思い出しながら答える。そんなやり取りをしていると、今まで動いていなかったドラゴンが咆哮とともに動き始める。


「うるさっ……って動き始めた」


 起き上がったドラゴンはゆっくりと空太達のところへ歩いてくる。近くまで来るとドラゴンは尻尾を空太達めがけて振り回す。


「鎧の騎士、盾を構えて『防御』」


 空太はとっさに鎧の騎士のスキルを発動させる。すると鎧の騎士は持っていた大きな盾を体の前で構え尻尾での攻撃を受け止める。攻撃を受け止めるとフォーチュンがヒールを唱えHPを回復させる。


 ドラゴンの注意が鎧の騎士とフォーチュンに移っている間に空太はドラゴンの死角へと回りこみナイフをふるう。


「堅っ。全然切れない」


 空太のふるったナイフはドラゴンの硬い皮膚にはじかれる。フォーチュンの方を向いていたドラゴンが空太の方を向くと口を大きく開けて大きく息を吸い込む。


「ん?なんか嫌な予感が」


 ドラゴンの行動に危険を感じた空太は全速力で距離をとる。その後ろで息を吸い終えたドラゴンの口から火の粉が舞い、空太めがけて炎を吐き出した。


「やっぱりか。あっちぃ」


 空太は吐き出された炎を受けながらドラゴンから距離をとる。


「ヒール。大丈夫ですか!?」


 フォーチュンは空太にヒールをかけながら空太に叫ぶ。


「ありがとう。門の方へ戻って」


 ヒールを受けた空太はフォーチュンたちに門の方へ戻るように指示を出す。すると「わかりました」と答え2人は入った門の方へと走っていく。


「目くらまし位にしかならないと思うけど。「詠唱:火球」


 空太はこれまでの階層で何回か使用し残りの使用回数が1になっている魔法陣カードを取り出し詠唱する。詠唱とともに魔法陣カードが消え、ドラゴンの顔向かって火の玉が飛んでいく。火の玉が当たるとドラゴンは叫び声とともに少しよろけた。


「魔法が効きやすいのか?今のうちに」


 ドラゴンがよろけているうちに空太は門めがけて走り出す。門から出ると空太は急いで扉を閉めた。


「危なかった……。痛って」


「大丈夫ですか、マスター?『ヒール』」


 一息ついた空太にドラゴンの吐いた炎が当たった部分の痛みが襲う。すかさずフォーチュンがヒールを唱えるが痛みはひかない。


「火傷してるのかな。そういえば……」


 空太はマジックバックをあさり紫色の液体の入った1本の瓶を取り出す。


「確か状態異常が回復するポーションって言ってたな。毒々しい色だけど、火傷も状態異常なら……」


 空太はポーションの色に抵抗を感じながらポーションを飲み干す。するとそれまで襲っていた体の痛みが消えていった。


「よかった。火傷も状態異常の一つなんだな。さっきの感じだと魔法が効きやすいみたいだし、一旦体勢を立て直してもう一度攻略しよう」


 空太達は次に戦う時の対策を考えながら地上を目指して階段を登っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る