第37話 龍頭

 リブラルは自分の繰り出した攻撃が直撃したにもかかわらず何事もなかったかのように対峙する空太達を見て驚きの顔を浮かべる。が、すぐに気持ちを入れ替え次の攻撃の準備を始める。


「今のうちに……。フォーチュンはこの場で、ルナ、森の射手はリブラルの横へ走ってリブラルを囲むぞ」


 空太は全員に指示を出し魔障壁をかけなおす。詠唱が終わると同時に3人はリブラルを囲むように駆け出した。


「障壁……。防いだのはあなたですね」


 リブラルは空太が魔障壁を張るのを見て先の攻撃で空太達が無傷だった方法を悟る。創り出していた光の玉が大きくなったことを確認すると、リブラルは地面を走る3つの影を見る。


「あらあら、背中ががら空きですよ」


 リブラルは真ん中を走る影――空太に狙いを定め杖を振ろうとする。しかしそれはその場で待機していたフォーチュンにより止められる。


「させません」


 その声とともにフォーチュンが手に持っている杖をリブラルより早くふるう。すると杖に取り付けられている翠玉がふわりとした光を放ち、風で創られた鋭い鎌が現れリブラルの元へと飛んでいく。鎌はリブラルに直撃するとその衝撃でリブラルの狙いがずれ、光の玉は見当違いの方向へと飛んで行った。


「ありがとう、助かった。よし、みんな反撃開始するよ」


 フォーチュンの援護に礼を言った空太はカードを手に取り全員に指示を出し反撃を開始した。



 そこからは一進一退の攻防が続いた。お互いに攻撃を当てることもあれば、相殺させることもあった。空太は魔障壁が破られると、使用できる回数の限り詠唱し魔障壁を張りなおす。残りの詠唱回数が0になりカードが消滅すると、フォーチュンが回復に徹し戦列が乱れないようにしていた。



「はぁ、はぁ……。次で決めます」


 息を乱しながらリブラルは目を瞑ると詠唱を始め光の玉を創り出す。詠唱とともに光の玉は大きくなっていき、やがて形を変えていく。詠唱が終わると光の玉は龍の頭へと形を変え空太達を見据える。


「これが今の・・私の全力です」


 リブラルが杖をふるうと龍の頭は大きく口を開け空太達へと襲い掛かる。


「ここを乗り切れば……。みんな迎え撃つぞ。詠唱:焔玉」


 空太は詠唱で大きな火の玉を龍の頭へと飛ばし、フォーチュン、ルナ、電気うさぎからも援護が入る。空から襲い掛かる龍の頭に地上からの4つの魔法が突き刺さる。衝突した後、龍の頭の勢力がわずかに強く徐々に地上へと近づいていく。そんな様子を見てリブラルは顔に笑みを浮かべる。



「ぐっ、押し切られる。何かもう一枚……。あれは」


 空太がカードを取り出そうとしていると、ルナが2つ目のスキルを発動し5つ目の魔法が飛んでいく。龍の頭と衝突すると勢いは完全に拮抗しやがて爆発し辺りが煙で包まれる。


「今だ」


 空太は爆発が生じた瞬間に腰に差していたナイフをリブラル目がけて投擲した。やがて煙が晴れると、体にナイフが突き刺さったリブラルが地面へと落ちていく姿が見えた。

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