第33話 クラスメイト
「いいよ。でもここだと他の人の邪魔になるだろうから別の場所に移動しよう。外に出ると人でいっぱいだし……。この塔の中で使ってもいい部屋ってありますか?」
「えーと……、あちらの部屋をお使いください」
空太からクラスのことを聞かれた光は他の利用者の邪魔になることを危惧し場所を移そうと窓の外を見る。すると窓の向こうには珍しいもの見たさで集まった人の影が映り塔の中で自由に使っていい部屋はあるのか近くのギルド職員に尋ねた。すると少し考えた後ギルド職員が1つの部屋を指す。
「ありがとうございます。それじゃみんな行こう」
光はギルド職員に礼を言い空太達に声をかけると大河たちを連れて部屋の方へと歩いていく。それに続いて空太達が歩いていく。
「うん、ちょうど良い机と椅子もあるね。」
部屋の中には大きな長机と全員が座るには十分な数の椅子が置かれていた。空太と光が机を挟んで向かい合うように座ると他の5人も続いて席に着く。
「さてと、クラスのことは僕の知ってる範囲で話すけど、よかったら城を離れてからのことも教えてくれるかい?」
光からの問いかけに空太はこくりと首を動かす。
「ありがとう。それじゃ相田君が城からいなくなった日なんだけど……」
光は空太がいなくなってからのことを少し思い出しながら話し始める。
『王様、どうして相田君を城から追い出したんですか。僕たちがここに召喚された時に彼も一緒にいたのを見たはずです』
『すまない。お主の言い分もわかる。しかし王城の中でいきなり魔物を使役する者がいるとなればこの国……、少なくとも城下の街の者にとっては不安な要素でしかないじゃろう』
『王様の言うこともわかります。だからって……』
空太が火炎の子犬を召喚した翌朝の出来事を見ていた光は空太が城から追い出されたことを知るとアルカルドの元へ行き話を聞く。
『すまない。追い出しておいて本当に無責任じゃと感じると思うのじゃが、彼も異世界からの勇者じゃ。特別な力が備わっている。この世界でも十分生き抜いていけると思う』
『確かに力はもらいましたし戦い方も教えてもらいました。でも元の世界とは全く違う環境で1人なんですよ』
『うむ、すまない。そこでじゃが勝手ながら1つ提案をさせてくれないか』
アルカルドが光に提案を持ちかけると光は無言でそれを聞き受ける。
『お主らをこの世界に召喚した日に古い伝承について話したじゃろう。伝承にある大迷宮のうちの一つがここ王都から少し離れた場所にある副都にあるんじゃ。もし彼が大迷宮に行くとすればお主らのうち何人かを大迷宮攻略に出発させたいと思う』
『わかりました。このことはクラスのみんなに伝えます。みんなが納得すればいいですけどしなかったら……。その時はまた来ます』
『みんな聞いてくれ。朝から相田君がいないことにみんな気が付いてると思うけど、そのことについて王様と話をしてきたんだけど相田君はもうこの城にはいないらしい』
光が空太が城を追い出されたことをクラスメイトに伝えるとざわざわとした空気がクラスメイトを包む。
『追い出されたって言っても城からだよな?街に行けばいるんだろ?』
そんな中一人のクラスメイトから光に質問が入る。
『それが……、この街からも出ていくよう言われたらしいんだ』
『それじゃ相田は……。街の外って魔物が出るんじゃ』
『うん。この1ヶ月で戦い方は教えられてきたから大丈夫だとは思うんだけど、いきなり実戦だと……。相田君が無事ならここから少し離れた場所にある副都にいる可能性があるらしい』
『どうして副都に?もっと他の場所の可能性も』
『それなんだがこの世界に召喚された時に大迷宮について話されたのは覚えてるよね?その1つが副都にあるらしいんだ。ガイアさんもそろそろ街の外での実戦に移っていくとも言っていたし、十分戦えるようなら副都へ相田君を探しに行きたいと思うんだ』
光がアルカルドと話したことを伝えると「探しに行きたいけど魔物と戦うのは……」や「外はやっぱり危険なんだよね」といった意見が飛び交う。
『行くか行かないかは自分で決めて。それにはだれも文句は言わない。無理してまた一人仲間が消える方がつらいから。とりあえず今日はもう休んで明日の訓練に備えよう』
「僕の知ってる範囲では相田君が城からいなくなって起きたことはこんな感じかな? 見ての通り副都に来たのはここにいる4人だけなんだけど、みんな心配してたよ」
「ありがとう。良かった、僕だけなんだよね?城を追い出されたのは。他のみんなも同じようなことになってたら大変だったけど大丈夫みたいだね。ああ、僕の方は……」
光から話を聞いた空太はクラスメイトが心配してくれていたことや、城から追い出されてないことを聞くと安堵の表情を浮かべた。そしてその後城を追い出されてから今までの出来事を光達に伝え、部屋を後にした。
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