第11話 副都へ

「相田さん、人が出ましたよ。人間も召喚できるんですか?」


 カーミルは空太の召喚風景を見て目を丸くする。昨日見たものは明らかに魔物の姿をしていたのに、今召喚したのはどこからどう見ても人間だった。


「カーミルさん、今回は人型のものを召喚しました。さっき俺が取り出したカードに描かれていたものを召喚しただけなんですけど」


「こんな魔法初めて見ました」


 カーミルは目を輝かせながら話す。空太とカーミルが召喚の話をする間フォーチュンは二人の方を交互に見ていく。


「あの、マスター。こちらの方は?」


「ごめん、紹介がまだだったな。こちらはカーミルさんで今俺はこの人の護衛をしている」


 空太はフォーチュンにカーミルを紹介する。


「初めまして、カーミルさん。私はフォーチュンです。マスターの依頼者さんだったんですね、失礼しました」


「大丈夫ですよ。一応私からも自己紹介しておきます。カーミルです。商人見習いをやってます」


 カーミルとフォーチュンがお互いに自己紹介をする。それが終わると3人は副都への道を進み始めた。歩いていく途中、空太が副都についてカーミルに尋ねる。


「カーミルさん、副都ってどんな街なんですか?王都以外の町を知らないんでよかったら教えてください」


「副都ですか?いいですよ。副都は別名迷宮都市とも呼ばれている冒険者の多い街なんです」


「迷宮都市?近くに大きな迷宮があるんですか?」


「はい、この世界の創造神の創った大迷宮があります。副都は主に大迷宮を探索する冒険者で栄えてきました。なのでアーレ・クラウドの高ランク冒険者は主に副都を拠点に活動しています」


「迷宮についても教えてもらってもいかな?まだ迷宮を見たことないからどんなところか検討が付かないんだ」


「迷宮は複数の階層から構成されるダンジョンですべての階層に魔物が生息しています。5階層ごとに他の魔物に比べ強い魔物が控えています」


「なるほど、魔物が生息しているのか」


「はい。それだけでなく5階層ごとのボスの魔物を倒すと、魔石と一緒にアイテムの入った宝箱がドロップするようになっています」


「宝箱?迷宮探索はそれを求めて入るってことか。どんなアイテムが入ってるんですか?」


「武器や道具、いろんなものが入っています。階層の高いボスの方がいいものをドロップする可能性が高いみたいです。中のアイテムによったら1つで一攫千金も狙えるのもあるので、それを夢見て攻略に乗り出す人もいます」


「なるほど。ありがとうございます」


「いえ、私が知ってるのはこれだけです」


 空太とカーミルが副都について話をしていると、横を歩いていたフォーチュンが声を上げ手前を指さす。


「マスター、前方に魔物です」


 フォーチュンの言葉に空太は身構え、刺された方向を見る。空太の見た先には狼のような犬型の魔物が1体、空太めがけて走ってきていた。


「相田さん、ハウンドドックですよ。このあたりだとめったに出ないはずなのに」


「カーミルさん、あれってそんなに強いんですか?」


「ハウンドドックは単体でもゴブリンより格段に強いのですが、群れで行動しているのでもしかすると周りに何体かいるかもしれません」


「遠いけど見れるかな。『解析』」


 空太は解析を使いハウンドドックのステータスを見る。



ハウンドドック

Lv.4

HP:52/52

MP:13/13

攻撃力:45/45

防御力:18/18

素早さ:26

スキル:ひっかく



「よし、見れた。防御力以外俺より軒並み高いな。フォーチュン、回復での援護頼む」


「了解しました、マスター」


 空太はフォーチュンに指示を出しながら腰のナイフを抜き構える。ハウンドドックは空太の近くまで走りこむと飛び上がり空太へと突っ込む。


「うおっ、ちょっとかすったか」


 空太は間一髪のところで横に飛ぶがハウンドドックの爪が少し掠り血が出る。


「ヒール」


 空太から少し離れた後ろでフォーチュンが杖を掲げながら魔法を唱える。すると掠った箇所の傷口がふさがる。


「ありがとう、フォーチュン」


 傷口のふさがった空太はフォーチュンに礼を言いつつハウンドドックにナイフをふるう。しかし、ナイフは空を斬る。


「避けられた。向こうの方が素早さが高いからか。カウンターを狙うか」


 そう思った空太はナイフを構える。するとハウンドドックは再び空太に飛びかかる。空太はさっきと違い少しだけかわしながらナイフを突き出す。ハウンドドックの爪は再び空太を掠め、空太のナイフはハウンドドックの前足をとらえる。


「よし当たった。これだったら何とか当てれるな」


 フォーチュンはヒールを唱える。すると空太だけ傷が回復する。空太がナイフを構えると、ハウンドドックは前足を庇いながら立っていた。


「もしかしてさっきの攻撃で前足を怪我したのか。チャンスかも」


 空太はそう思いハウンドドックに攻撃するため距離を詰める。ハウンドドックは間合いを取ろうとするが、前足が上手く使えないので少しよろける。そこへ空太のナイフが振り抜かれる。


「よし、大分遅くなってるな。これだったら当てれる」


 ハウンドドックは空太のナイフを受け光の粒子へと変わる。


「倒せた。ヒールのおかげで戦いやすかったな。ありがとうフォーチュン」


 空太はフォーチュンに礼を言い魔石を回収した。

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