第12話 お菓子
「ところでフォーチュン、ちょっといいかな」
「なんでしょうか?」
「フォーチュンのヒールって使用するとき何か消費するの?MPとかがないからちょっと気になって」
「何も消費しませんよ?」
「使用回数に制限とかは?」
「それもないですね。あ、ただ再使用するのに少し時間をおかないと駄目ですね」
「え?それだけなの?なんかずるいな」
召喚したカードにMPの概念が無いため使用するのにどんな制約があるのかわからなかったため、 空太はフォーチュンのヒールについて聞く。そんな話をしながら歩いていくと道の先に壁が見えてくる。
「相田さん、フォーチュンさん、見えてきましたよ。あれが副都です」
カーミルが壁を指さして叫ぶ。
「おお思ってたより早く着いたな。魔物もハウンドドックだけしか遭遇しなかったし」
「そうですね。お話をしながらだったのでなおさら早く感じます」
門の近くまで近づくと門番に止められ冒険者証の提示を求められる。
(フォーチュンは途中で召喚したからなぁ。)
空太とカーミルは自分の冒険者証や商人証を見せる。しかし移動の途中で召喚したフォーチュンは持ってなかったので、空太は門番に通行料を支払う。
「よし、入っていいぞ。滞在期間が長いのなら冒険者ギルドで登録をするように」
門番はそう言いながら街の門を開く。
「ありがとうございます。ここが副都か、なんだあれ」
街に入った空太の目に入ったのは街の中心にそびえる塔だった。
「あれが冒険者ギルドですよ。王都だと王城がシンボルですが、副都は冒険者ギルドがシンボルなんです。あの中にいろんなお店が入ってるんですよ。」
「そうなんだ。カーミルさんの働いている店もその中に?」
「はい、下層なんですけど入ってます。冒険者ギルドに入ってるお店は、上層に行く程高ランク向けの冒険者を相手にしているお店になります。武器や防具、魔法具や回復アイテムとかはあの塔の中で買えます。でも、食料品とかは街の中のお店の方がいいですよ。塔の中で売ってるのは非常食みたいなものだけですから」
「冒険者を相手にした店が入ってるんだな。ありがとう」
「いえいえ。まず私の働いているお店に来てくれませんか?お礼がまだなので」
「わかった。あそこへの行き方もわからないからついていくよ。フォーチュンもそれでいいよね?」
空太の問いかけにフォーチュンはうなずきながら「はい」と答え、塔へと歩き始めた。門から塔までの道は入り組んだものでなく、「緩やかなカーブで少しだけ湾曲した大きな道が続いている。
「冒険者ギルドまでの道ってわかりやすいんですね」
「冒険者ギルドを中心に門へとメインストリートが延びているので、大きな道に出たら冒険者ギルドへ行くのはわかりやすいです」
塔に近づくにつれてだんだんと人の数が増えていく。道のわきにある建物も民家から店へと変化していた。
「やっぱり街の中心は盛り上がるんですね。門に近いところだと民家ばかりでお店なんて見えなかったのに、ギルドの近くだとお店ばかりですね」
街の中心部では雑貨屋、食料品店、露店、飲食店など様々な店が人を引き込んでいた。
「ここはいつもにぎわってますよ」
空太とカーミルがそんな話をしていると、フォーチュンが露店指さしながら店を声を出す。
「あれって何ですか?」
フォーチュンの指さす露店ではお菓子が売られていた。
「あれ今副都で人気なんですよ」
「そうなんだ。フォーチュンいるか?」
空太がそう聞くと、フォーチュンは「わるいですよ」と言いながらも目は露店の方を見ていた。
「はぁ、仕方ない。カーミルさん、すみません。ちょっと買ってきます。カーミルさんもいりますか?」
「はい、どうぞ。いえ、私はいいです」
空太は露店に行き、店員に注文する。
「すみません、これ1つください」
「まいどあり。大銅貨2枚になります」
空太は店員に大銅貨を渡し、お菓子を受け取る。
「おまたせしました。フォーチュン、はい。」
フォーチュンは目を輝かせながら受け取ると、「ありがとうございます。いただきます」といいぱくりと一口食べる。
「すっごくおいしいです。マスター、ありがとうございます」
フォーチュンは満面の笑みを浮かべてもう一度空太にお礼を言う。そんな姿を見て空太は思わず手を伸ばしてフォーチュンの頭をなでていた。
「ごめん、つい無意識に」
そういい空太があわててなでるのをやめるとフォーチュンは名残惜しそうに空太の手を見ていた。そして小さな声で
「嬉しいというか、なんというか。その、もっとなでて欲しいといいますか」
とつぶやく。
「え?なんて?」
空太は声が聞き取れなかったので聞き直す。するとフォーチュンは深呼吸をしてさっきよりも大きな声で話す。
「すー、はー。マスター、頭をなでられるのはとっても嬉しいです。だから、その、今度またなでてくれませんか?」
最初の方は声が大きかったがだんだんと声が小さくなっていく。それでも空太は最後まで聞き取れたので、「わかった」といい、わしゃわしゃとフォーチュンの頭をなる。するとフォーチュンはうつむいて「えへへ」と笑っていた。
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