第13話 塔の中

 フォーチュンがお菓子を食べ終わると3人は再び塔へと歩きだす。塔の中に入るとそこは、王都の冒険者ギルドと同じような空間が広がっていた。


「中はそんなに変わらないんだな。カウンターもあるし依頼書も張り付けてあるし」


「相田さん、こっちですよ」


 空太が中を見ていると少し離れた場所でカーミルが呼ぶ。空太がカーミルの方を見ると近くに浮かぶ床があった。


「カーミルさん、これって何ですか?」


「見たことないんですか?これは魔導式エレベーターです。この床の下側に大きな魔石が取り付けられていてそれで動きます」


「なるほど、初めて見たよ。あの柱で行きたい階層を選ぶんですか?」


 そう言いながら空太は床面から伸びる1本の柱を指さす。


「はい。あの柱に手をかざしていきたい階層を叫ぶと移動します。見ていてください」


 そう言いカーミルは手をかざすと「3層」と叫ぶ。すると3人を乗せた床はゆっくりと上昇を始める。


「マスター。私たち浮いていますよ」


 フォーチュンは下を見ながらはしゃぐ。


「着きました。ここから少し歩いた場所にお店があります」


 カーミルを先頭に3人は店へと歩く。数分後、「ここです」の声とともにカーミルが手を店の方に向ける。そこには簡単に雑貨屋と書かれた看板が掛けられていた。


 店のドアを開けると「いらっしゃい」の声とともに1人の男が現れる。


「カーミル、お前どこに行ってたんだ。馬車もなくなっていたし」


「お父さん、ただいま。ごめんなさい、王都まで行ってました」


「なんで勝手に行ったんだ」


「その、王都まで荷物を届けれたら認めてくれると思ったから」


「移動するときに護衛はつけたのか?ここから1番近い街とはいえ、魔物や盗賊に襲われる危険がある。そんなところを1人で行ったんじゃないだろうな」


「ごめんなさい、1人で行きました」


「はぁ。お客さん、こんな見苦しいところを見せてすみません。ちょっとこいつと話し合わなければならんので今日は店を閉めることにします。明日来てもらえませんかね」


 カーミルの父は空太の方へ向くと今日は一旦帰ってもらうよう説明をする。するとカーミルが空太も関係者だと伝える。


「お父さん、こちらの人――相田さんも関係者です。というか助けてもらいました」


「本当か?すみません、えーっと相田さん。もし時間があったら少し話し合いに付き合ってもらいたいんですが」


 空太はうなずき話し合いへと参加する。


「カーミル、助けてもらったということは街の外で何かあったのか?」


「副都から王都への道の途中でゴブリンに襲われました。追いつめられてもう駄目だっていう時に、相田さんが来てゴブリンを倒して助けてくれました」


「相田さん、すみません。うちの娘を助けてもらって」


 カーミルの話を聞き空太の方を見て頭を下げる。


「いえ、たまたま近くにいたので」


「すみません、お礼なんですけど、明日までに用意するので明日もう一度来てもらえませんか」


「わかりました」


 そういい空太とフォーチュンは店を出る。


「とりあえずフォーチュンの冒険者登録が先かな。登録できるのかな?」


「登録……ですか?マスターの持っているカードを作るんですか?」


「うん、ただフォーチュンは召喚したカードだからどうなんだろう」


 話をしながら2人は1階へと降りていく。降りると中心にあるカウンターへと歩いていき職員へと話しかけた。


「すみません、冒険者の登録をしたいんですけど」


「はい、かしこまりました。こちらの水晶に手をかざしてください」


 フォーチュンは言われた通りに水晶に手をかざすが何の変化も起きない。


「はい、ありがとございます。登録料の方ですが銀貨1枚と、冒険者証の発行に銀貨1枚の計銀貨2枚になります」


 空太は言われた銀貨を職員に渡す。すると職員は王都で空太にした説明をフォーチュンにする。そしてその後、迷宮についての説明を入れる。


「副都の近くには大迷宮がありますが、迷宮にも簡単なルールがあります。この街の近くにある大迷宮『リブラル』は神の創った大迷宮の一つです。そのため我々人だけでなく様々な種族が迷宮へと挑戦します。また、迷宮を利用するために副都に滞在される人もいます。そこで他の大迷宮も同じですが、1つルールを設けています。『大迷宮内及び大迷宮攻略のために滞在する街の中での抗争を禁止する』です」


「わかりました。もしやってしまったら何かペナルティがあるんですか?」


「やむを得ない場合を除いて、原則立ち入り禁止とさせていただきます」


「わかりました。気を付けます」


 説明が終わると別の職員が冒険者証を持ってくる。フォーチュンは手をもう一度かざすように言われたため冒険者証に手をかざす。すると文字が浮かび上がり登録が終わった。


「すみません、ありがとうございました」


 そう言い、依頼の貼ってある壁の方へと歩いて行った。

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