第27話 再戦

「スケープゴート、身代わり発動。フォーチュンは続けてヒールをかけ続けて。ルナ、この攻撃をしのいだら一気に片を付けるぞ」


 口を利く開けて息を吸い込むドラゴンを前に空太は指示を出していく。指示を出された1匹の羊が3人の前に出るとドラゴンは羊に向かって火を吐き出した。火を受けると同時にフォーチュンはヒールをかけてHPを回復させる。


「この調子だったら何とか倒せそうだな。良かった、このカードを引けて」


 空太は隣で静かにドラゴンの攻撃が終わるのを待つ少女をちらりと見ながら昨晩のことを思い出していた。




「初めて5層に行ってから1週間くらいか。まだ2枚しか魔法陣カードが引けてないな……。もう1枚引けたらもう1度行こうか」


 毎日カードをドローし続けていたが未だ2枚しか集まってないことに少しあきれながらカードをドローする。


「さて今回はどうだろう。おっ、1枚きた。フォーチュン、明日もう1度ドラゴンと戦いに行こう」


「了解です、マスター」


 空太は1番上にあるカードを確認すると、フォーチュンに翌日の予定を伝える。


「残りのカードはどうかな。最近引いたカードはほとんどフォーチュンに合成してるし今回も……」


 今までに引いたカードのことを考えながらカードを確認していく。カード合成が解放されてからは、使わなさそうなカードは合成に使用していたため今回引いたカードはどうなるか確認していく。


「魔法使い ルナ……。魔法の使えるカードじゃん。明日MPが回復したら召喚しよう。おやすみ、フォーチュン」


 引いたカードをしまうと照明を消してベットに横になる。



「よし、今回は完全に人間だし永久召喚で召喚するか。おはよう、フォーチュン。今日は新しい仲間が増えるから」


 空太は朝起きると昨日引いたカードの召喚方法を決めてフォーチュンに伝える。


「おはようございます、マスター。新しい仲間ですか?どんな方ですか?」


 フォーチュンは目をこすりながら空太に聞く。


「それは召喚してからのお楽しみってことでご飯を食べたら迷宮に出発しよう。宿とか街の中だと召喚しづらいから」


 露店で朝ご飯を食べた2人はギルドで依頼を受けると迷宮へと歩いていく。


「よし、このあたりでいいだろう。『永久召喚:魔法使いルナ』」


 空太は昨日の夜ドローしたカードを取り出し魔法を唱える。唱え終わると同時にカードが光の粒子に変わり目の前にとんがり帽子をかぶり手に分厚い本を持った少女が現れる。


「初めまして、私はルナ。あなたは?」


「初めまして、俺の名前は相田 空太で……」


「私はフォーチュンです。よろしくお願いします」


「空太とフォーチュン……。よろしく」


「よし、4層までで戦い方を見て大丈夫そうだったら5層に再戦しよう。戦えそうだったらもう1枚召喚したいカードもあるし」



魔法使いルナ

コスト:13

Lv.1

HP:200/200

攻撃力:75

スキル:①雷撃Lv.1、②氷結Lv.1





 ルナを召喚したことを思い出していると、ドラゴンの火が止まる。


「よし、フォーチュンはこのままスケープゴートにヒールをかけて。ルナ、ドラゴンに攻撃開始。『詠唱:カマイタチ』」


 空太はカードを手に取り詠唱する。すると空気の刃がドラゴンへと飛んでいく。横にいたルナはドラゴンへと手を向けると小さな声で「雷撃」とつぶやく。すると手に持っていた本が光ページがパラパラとめくられていく。ページがめくられるのが止まるとルナの手からドラゴンに向かって1筋の光が伸びていった。


「よし、効いてるな。もう一度……」


 空太はもう一度魔法陣カードを詠唱し、空気の刃を飛ばす。


「氷結」


 ルナは違うスキルを発動させる。すると先ほどと同じようにページがめくられていく。雷撃を発動した時は手に光が集まっていたが、今回は手の前に大きな氷塊が作り上げられていく。ページがめくられるのが終わると雷撃と同じようにドラゴンへと飛んで行った。


「あれ?ドラゴンが。やったー、倒した」


 ルナから飛んできた氷塊を受けたドラゴンは大きな声を上げて横たわる。しばらくすると体が光に包まれ大きな魔石と宝箱へと姿を変えた。


「みんなありがとう、お疲れ様。2回目で勝ててよかった」


 勝った喜びを分かち合うと空太達は宝箱へと歩いていく。


「よし、開けるよ」


 空太が宝箱を開けると中には指輪が1つ入っていた。


「指輪?装備の一つかな。帰ったら聞いてみよう。えっと、次はどこに……」


 空太は指輪と魔石をマジックバックにしまうと次に向かう場所を探すためあたりを見渡す。すると今まで壁だった場所に新しく扉ができていることに気づく。


「あんな所に扉なんてあったかな?それともドラゴンを倒したから現れたのかな。とりあえず行ってみよう」



「階段だ、6層を少し覗いていくか」


 空太達は新しく表れた扉を開けて歩いていくと、6層への階段を見つけた。階段を下りていくと視界が急に明るくなる。急にまぶしくなったため空太は目をつむる。だんだんと明るさに目が慣れると周りの状況が目に入ってくる。


「ここは……」


 空太達は驚いた様子であたりを見渡す。そこには今までの洞窟ではなく、外の世界が広がっていた。


「外……。ここって迷宮の中だよな?なんで外に?」


「はい、迷宮の中ですよね?」


 不思議に思い後ろを向くと洞窟の入り口が見え、奥には上へと通じる階段が見えた。


「6層からは洞窟じゃないんだな。どんな所か確認したしいったん戻ろうか」


 そう言うと空太達は来た道を戻っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る