第28話 指輪
「すみません、依頼の報告をしたいのですが」
そう言いながら空太とフォーチュンは冒険者証と魔石を取り出し職員へと渡す。
「お疲れ様です、相田様。この魔石……。もしかして5層のドラゴンのものですか?」
「はい、何とか勝てました。フォーチュンの回復とルナの攻撃のおかげです」
「ルナ様……。そちらの方ですね」
職員の声にルナはこくりとうなずく。
「すみません、今回の依頼の報酬から天引きでルナの分の冒険者証を発行もお願いします」
「かしこまりました。それではルナ様、こちらの水晶に手をかざしてください」
ギルド職員の言葉に従ってルナは水晶に手をかざす。
「はい、大丈夫です。冒険者証と依頼の報酬を持ってきますのでお待ちください」
「お待たせしました。今回はいつもの魔石に加えて大きな魔石がありましたので少し報酬が高くなっています。それとこちらがルナ様の冒険者証になります」
「ありがとうございます。それとドラゴンを倒した時の宝箱なんですけど、この指輪が出てきたのですが……」
空太は指輪を取り出し職員へ見せる。
「これはリブラルの指輪ですね。リブラルの中で使用できるアイテムで行ったことのある階層なら唱えるだけで移動できます」
「行ったことのある階層……。1層からいきなり5層とかですか?」
「はい。ただ少し制約がありまして、ボスの出現する階層へは移動できません。唱えた人以外も一緒に移動しますが離れすぎると効果の範囲外になるのでご注意ください」
「ありがとうございます。どのくらいの距離までが範囲とかってわかりますか?」
「うーん、ここから大体……。あの木のあたりです」
職員は悩みながら少し離れた場所にある観葉植物を指さす。
「なるほど、ありがとうございます」
(大体5メートルくらいか。結構広いんだな)
「ありがとうございました。よし、あとは……」
職員に礼を言い、空太はフォーチュンとルナを連れて少し前に行った本のある部屋へと移動する。
「この部屋久しぶりですね。もう一度迷宮のことを調べるんですか?」
「うん。6層からのことをほとんど見てなかったからね。あれ?おーい、ルナ?」
空太はフォーチュンに答えつつルナの方を見る。するとルナは目を輝かせて本棚の方を見ていた。
「もしかしてルナって本好きなの?」
空太の問いにルナは首をぶんぶん振ってこたえる。
「あー、えっと。言いにくいんだけど、ここにある本迷宮関係のものばかりだから魔法の本とかはあまりないよ」
空太の言葉を聞いた途端ルナの目はどうでもいいものを見るような目へと変わる。
「調べ物が終わったらいろんな本が置いてある場所を探すか。前見た本はっと……。あったあった」
空太は本を取り出し中身を確認していく。
・6層からはこれまでと違い洞窟以外の場所も出てくる。
・5層までのような狭い洞窟内から6層のように広い草原地帯まで様々な場所がある。
「こんなもんか。あとは6層で注意する魔物はっと……。これって」
「どうしたんですか、マスター?」
「空太、どうしたの?」
6層から先の情報を調べた空太は、注意する魔物のページを見た途端衝撃を受ける。その様子を見たフォーチュンとルナは空太に声をかけつつ開かれてあるページをのぞき込む。
「これってもしかして『砂塵の大鷲』ですか?」
「でも名前は『ガルーダ』。名前が違うだけ?」
ページを見た2人はそれぞれの意見を言い合う。
「やっぱりこの世界にはマジックタクティクスのカードに描かれていたモンスターがいるのか?」
「マスター、やっぱりって?何かあったんですか?」
「この街に来るときにカーミルさんっていう人と一緒に来ただろ?カーミルさんがゴブリンに襲われていたところを砂塵の大鷲と一緒に助けたんだけど、その時にカーミルさんが砂塵の大鷲を見て『ガルーダ』って言ったんだ」
空太はカーミルを救出した時のことを思い出しながらフォーチュンに説明する。
「空太、ガルーダの攻撃方法。砂塵の大鷲と同じ」
空太がフォーチュンに説明をしている間、ルナはガルーダの攻撃方法が書かれてある場所を見つけ空太に話す。そこには、『ガルーダはその翼を使い風を巻き起こし砂嵐を巻き起こします。砂嵐で視覚を奪った後、鋭利なくちばしと足を使って敵を屠ります』と書かれていた。
「これって砂塵の大鷲のスキルと同じじゃないか。というかルナって砂塵の大鷲のこと知ってるの?」
「同じカード。それに何度も戦った。だから覚えてる」
「なるほど、ありがとう。ガルーダが砂塵の大鷲かは遭遇した時に確かめよう。それにもしそうだとしたら、俺の召喚してるカードってこの世界のどこかから呼び出してるのか?フォーチュンとルナはこの世界の人なの?」
空太は召喚しているカードがどこから来たのか考えつつ2人に質問する。
「えっとたぶんなのですがこの世界じゃないと思います。この国の名前も聞いたことないので……」
フォーチュンの言葉に同意するようにルナも首を振る。
「そっか、ありがとう。このことはまた今度にしよう。まだわからないことだらけだし」
そういい、3人は部屋を後にする。その後空太はギルド職員や町の人に聞きながらルナとの約束通りに本屋へと足をのばした。
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