第6話 準備

 朝の陽ざしが部屋の中へと差し込み部屋の中を照らし始める。


「もう朝か。結局昨日ご飯を食べずに寝てしまったな。朝ご飯はできてるのかな」


 起きた瞬間、空腹感が空太を襲う。宿の食事ができてるかつぶやきつつ1階へと降りていく。


「おはようございます。朝食をとりたいのですが」


「おはようさん。ご飯ならもうちょっとでできるからそこに座っとくれ。それにしても昨晩食べに降りてこなかったじゃないか」


「ありがとうございます。すみません、ベットに横になった瞬間眠気に襲われまして」


「そうかい。あれ?昨日連れていた犬はどうしたんだい。一応その分も用意しようと思ってたんだけど」


「窓を開けて寝ていたら見事に逃げられてしまいました」


 空太がとぼけたように話す。


「まあ用意しなくていいんだったらそれでいいけど。気を付けなよ」


 軽く会話を終え言われた席に座る。数分後、皿を持った女将がキッチンから出てくる。


「おまたせ、今日の朝ごはんはパンとサラダと焼いた卵だよ」


 そう言い空太の前へとお皿を出す。


「ありがとうございます。いただきます」




(さて、とりあえずどうしよう。ギルドに行くのもいいけど店を見て回るのもいいな。昨日は火炎の子犬がいたからいきなり街の外へと出たけど、よく考えたら武器も持ってないし)


 朝食を食べ終えた空太はとりあえず何をするかを考える。


「すみません、お皿ってどうしたらいいですか?」


「食べ終わったのかい?取りに行くよ」


 女将が再びキッチンから出てくる。


「すみません、この辺りに武器屋とかってありますか?あるのでしたらちょっと教えてほしいのですが」


 空太は地図を出しながら女将に聞く。


「ああ、あるよ。このあたりだとここが一番近いところだね」


 女将が地図を指しながら教える。


「ありがとうございます。ちょっと行ってきます」


 場所を教えてもらった空太はさっそく行くことにした。



「確か教えてもらった武器屋ってこの場所で合っているよな。看板も武器屋っぽいし」


 地図を見ながら店の前で立ち止まる。店の屋根には大きな剣が2本交差している看板がこれ見よがしに飾られていた。


「とりあえず入ってみるか」


 店の中へ入ると店の中には様々な武器が目に入る。あるものは壁に立てかけられ、またあるものは籠の中にいれられている。


「いらっしゃい、なんかようかい」


 空太が店の中をきょろきょろと見渡していると1人の男が近づき話しかける。


「すみません、武器がほしいのですが。昨日冒険者になったばかりで武器も持っていなくて」


「初心者か。ならそこの籠に入っている武器がいいだろう。初心者用の武器を入れてある」


 そういい男が部屋の片隅を指さす。その先には少し埃のかぶった武器が籠に入れられてあった。


「ありがとうございます」


 空太は埃を払いながら目当ての武器を探していく。籠の底の方に目当ての武器が眠っていた。


「すみません、これっていくらになりますか?」


 そう言い男に短剣を差し出す。


「1本6大銅貨だな」


 男の言葉に今の所持金を見る。財布の中には金貨が1枚、銀貨が2枚、大銅貨が9枚、銅貨が5枚入っていた。


「うーん、1本だけだと心もとないし」


 空太はもう一度籠の中を探し始める。数分後空太の手には2本目の短剣が握られていた。


「すみません2本ください」


「2本で銀貨1枚と大銅貨2枚だ。3銅貨で腰に装着できるホルダーもつけるがどうする?」


「お願いします」


 銀貨1枚と大銅貨5枚を渡し、短剣2本とホルダーを受け取る。受け取ると空太はさっそくホルダーを装着し短剣を収める。


(おお、ちょっとだけ冒険者っぽくなったな)


 空太が装着した武器に感激していると男が質問をする。


「もう1本の短剣はどうするんだ?見たところ入れる鞄も持ってなさそうだし」


 男の言葉に空太はあっとした表情を見せる。


「ないんだったらここでは売ってないが隣の魔道具店にいくといい」


「わかりました。ありがとうございます」


「ここを出て左の店がそうだ」



 武器屋を出て言われた店へと入る。


「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」


「すみません、これが入る用の鞄が欲しいのですが」


 そう言い店員に短剣を見せる。


「うーん。リュック型のものとベルトにつけられるショルダーバッグ型のものがあるのですがどちらにしますか」


「だったら、ベルトにつけられるものをお願いします」


「かしこまりました。少々お待ちください」


 そう言うと店員は店の奥から小さな鞄を持ってくる。


「こちらになるのですが」


 そう言いながら店員が持ってくる鞄は明らかに短剣よりも小さいものだった。


「これって短剣入りますか?明らかに小さいと思うんですけど」


「はい、大丈夫ですよ。これはマジックバックと言って魔法で中の面積を広くしてあります。なので見た目に反して多くのものを収納することができます。ちょっと短剣をお貸しください」


 そう言いながら空太から短剣を受け取り鞄へと入れていく。すると明らかに入るはずのない短剣が小さい鞄の中へするすると入っていく。


「どうでしょう、マジックバックは中の大きさで値段が変化するのですが、これだと鞄の大きさの10倍ほどの広さになって3銀貨ほどになります」


「3銀貨か、ちょっと高いな。でもあった方が便利だし……。もう少し安くなりませんか?」


「うーん、すみません。これ以上値段は下げられません。どうしますか」


「わかりました。3銀貨ですね」


 そう言いながら空太は金貨を出す。


「金貨でお支払いですね。マジックバックと銀貨7枚です、どうぞ」


 店員からマジックバックと残りの銀貨を受け取る。


「補足なんですけど、マジックバックの中は時間の経過がありませんので、食料などを入れても大丈夫です」


「ありがとうございます」


 買ったばかりのマジックバックをベルトに取り付け店から出る。


「予想外に出費してしまったな。早く安定してお金を稼げれるようにならないと持たないな。次はギルドだな」


 ギルドについた空太は昨日とは違いカウンターの方へは行かずに依頼書の張り出されている壁へと向かう。


「昨日は採取の依頼をやったから今日は別のものをやってみるか。……Fランクだとゴブリンの討伐が今張り出されている中で一番稼げそうだな」


 そう呟き一枚の依頼書を手に取りカウンターへ向かう。


「おはようございます、マリーさん。すみません、依頼を受けたいのですが」


「おはようございます、相田様。ゴブリンの討伐依頼ですね。冒険者証をお渡しください」


 空太とマリーに冒険者証を渡すと、マリーは奥の部屋へと入っていきまたすぐ戻ってくる。


「お待たせいたしました。相田様は討伐依頼を受けるのは初めてですね。簡単にですが説明しましょうか?」


「お願いします。何を基準に討伐をカウントしてくれるのかが分からないので」


「かしこまりました。討伐依頼では依頼書に書かれてある魔物を指定の数、あるいは制限なく討伐していただきます。討伐した魔物のカウントについてですが冒険者証のこの欄を見てください」


 マリーは冒険者証の裏面にある『討伐数:ゴブリン……0』と書かれた場所を指す。


「ここには受けた討伐依頼の討伐回数が表示されます。魔物を倒すと自動的にカウントされるので何体倒したか気になる場合はこちらを見てください」


「なるほど、ありがとうございます。今回の依頼書には期限などは書かれてなかったんですけど、いつまでに報告とかってありますか」


「はい、原則依頼書に指定のない場合はいつ報告していただいても大丈夫です」


「ありがとうございます」


「依頼とは関係ないのですが相田様にお伝えすることがあります。今朝ギルド長から連絡があったのですが、一度相田様と会って話があるそうです。今日の夕方以降一度ギルドへ来ていただけませんか」


 「ギルド長が俺と?」


 空太は真っ先に召喚したカードのことを考える。


(昨日の火炎の子犬についての話か?それとも城から何か連絡が入っての話か。どちらにしろ悪い予感しかしないな)


「お願いしたいのですが大丈夫ですか?」


「わかりました」


 そう返事をし、空太は冒険者証を受け取りギルドの外へと向かっていった。

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