第5話 思惑

「本当に1日たつと消滅するんだな。1日しか一緒にいなかったけど寂しいな。けど王様や城の人は魔物を目の敵にしてたけど、街の人は気にしてなかったな。なんでだろう」


 空太はふと疑問に思ったことをつぶやく。それもそのはず、召喚したカードが原因で城から追放され、さらには国からも出ていくように言われた。しかし街の中を召喚したカードと移動していても変な目で見られたりすることはなかった。


(城の人間が特別魔物とかの気配の察知に敏感なのか?そうでないと街の人間、特に門番とかの人に気が付かれないはずがないし。もしかすると日にちがたてば俺が魔物と一緒にいることが城の人から伝えられるかもしれない。そうなると移動が面倒になるな、早めに町を出れるように準備を進めるか)


 空太は一つの結論に至りこれからの行動を決める。


「でもまずは魔法の練習だな。今日は魔法を使用してないからMPが余ってるし、ドローだけしていざという時に備えるか」


 空太が2回ドローを唱える。すると手元に2枚のカードが現れる。


「1枚目はまだコストが足りないから召喚出来ないな。2枚目はっと、序盤にお世話になったカードじゃないか。召喚するのが楽しみだな。またお世話になるからな。」


 空太が魔法を使用しカードを引き結果に喜んでいる頃、冒険者ギルドではギルド長と、朝に空太と対峙した王城の兵士による話し合いが行われていた。


「この少年は今日ギルドに登録を行いまだこの街にいるんですね?」


「ああ、確かに今日登録を行った」


「ちょっと遅かったか……。ギルド長、この少年は昨晩から今朝にかけて王城内で魔物を生み出しました。そもそも生み出せる時点でおかしいのですが、これは王並びに国への反逆とも取れます。そこで彼を討伐対象として依頼を出したいのですが」


「ふむ。魔物を生み出す危険分子を排除するために討伐依頼を出す、か。ところで最近王城で大きな儀式を行っていないか?例えば召喚魔法とか」


「なぜそれを、そのことは城の関係者しか知らないはず」


「いやちょっとね。昼頃問題の少年と同じくらいの年頃の少年、少女たちがガイアと街の外へと行くのを見かけてな。ちょっとステータスを覗かせてもらったんだ。みんな珍しいスキルを持っていたよ。まあ、今の君の反応が確信となったが」


 ギルド長の言葉に話をしていた兵士が顔を歪め黙り込む。しばらく沈黙が続くが苦し紛れに思いついた一言を話す。


「それがどう彼と結びつくんですか?」


「彼の名前は明らかにこの世界とつくりが違う。しかし昼間見た少年たちの名前とは非常に似ている。つまり、彼――相田君も異世界から来た人ではないのかね?」


 ギルド長の言葉が再び話し合いの場を沈黙が包む。しかし先ほどと違い沈黙を破ったのはギルド長だった。


「沈黙は肯定ととるぞ?」


 ギルド長の問いに兵士は何も答えれなかった。


「ふむ。依頼についてだが、ギルドとしてこの依頼は拒否する。相田君の連れていた魔物は無差別に攻撃するようなものではなかった。街の中でもおとなしくしており、無害だと判断したため依頼の拒否を選択した」


「しかし、魔物を生み出せる時点で危険だと思います。その点については?」


「相田君の場合あの魔物を生み出したのは魔法によるものだと思われる。私も詳細が分からないから断言ができない。しかし1つだけ言えるのは魔族が魔物を生み出せるのは魔物生成のスキルがあるからだ、君のように」


 ギルド長の言葉に兵士は驚きを隠せず目を見開く。


「いや、すまない。少し覗かせてもらったよ」


 ギルド長の目には兵士の情報が見えていた。



ガディウス・サルス

Lv.62

HP:832/832

MP:423/423

攻撃力:236

防御力:181

素早さ:156

魔法:影魔法Lv.4

スキル:魔物生成、夜目、変化、誘導Lv.1



「気づいていたのか。なぜ話し合いをしている間に攻撃を仕掛けなかった?入った時から気が付いてたんじゃないのか?」


「それは私からも聞きたいな。なぜこんな回りくどいやり方をするんだ?王城にすんなりと入り込めるんだったら、召喚した時に命を奪えばいいものを」


「それだと面白くないだろ?人ってのは絶望した時が一番いい顔をしてるんだ。その衝撃が大きければ大きい程な」


「奇遇だな、私も魔族は絶望した時が一番いい顔をしていると思う」


「さて計画は失敗したしここらで一旦戻りますか」


「ここからただで帰れるとでも?」


 ギルド長が指を鳴らす。するとドアが開き武装した人が数人入ってくる。


「おお怖い怖い。でも関係ないな」


 ガディウスはそう言うと、自分の影の中へと体を沈めていく。


「させるか」


 入ってきた人のうちの1人が叫びながらガディウスへと走りこむ。しかしガディウスが一歩早く影の中へと姿を消した。


「魔族が王城に入るとは……。次の戦争も近いかもしれんな」


 ギルド長はガディウスの居た場所をみつめつぶやく。


「私は明日王城へ行き王様と話をしてくる。明日相田君がギルドを訪れたら私に会うよう伝えてくれ」


 こうしてギルドでの話し合いの場は終わりを迎えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る