第7話 二体目

 ギルドを出て昨日と同じように街の外へと通じる門へと向かう。


「今日も薬草の採取か?冒険者証を確認するから見せてくれ」


「いえ、今日は別の依頼です。どうぞ」


「よし、確認したからいいっていいぞ。頑張れよ」


 昨日と同じ門番と話をしながら冒険者証を確認してもらう。門から出てしばらく歩くと空太は周りを見渡し人がいないかを確認しはじめた。


「周りに人は……いないな。今のうちに召喚しておくか。『召喚』」


 空太は周りに人がいないことを確認すると、1枚のカードを取り出し魔法を唱える。するとカードが光の粒子へと変わっていきカードに描かれていたモンスターが現れる。


「砂塵の大鷲、ゲームでかなりお世話になったカードが召喚できるなんて。今回もよろしく頼む」


 召喚された砂塵の大鷲は空太に声をかけられると「まかせろ」と答えるかのように鳴き力強く翼を羽ばたかせる。


「おお、かっこいい。ゲームだと固定のイラストだったけど今は生きているもんな。一応ステータスを見ておくか。『解析』」


 空太は羽ばたく砂塵の大鷲を見ながらステータスを覗き見る。



砂塵の大鷲

コスト:7

Lv.1

HP:90/90

攻撃力:40

スキル:①砂嵐Lv.1 



「ゲームと同じステータスだな。火炎の子犬みたいに攻撃のスキルじゃないけど、砂嵐は対多数でかなり役に立つんだよな。ゲームだと砂嵐を受けた敵からの攻撃は命中率が3割減った状態になるからな。3割の確率で攻撃をかわせるようになるのは大きかったな、ここだとどんな効果になるか分からないけど」


 ゲームとの違いを危惧しつつ依頼を達成するためゴブリンを探し始める。しばらく探しながら歩いていると少し離れたところに1体ゴブリンが歩いているのが見える。


「やっと1体目を見つけれた。砂塵の大鷲、見つからないように上空から攻撃」


 空太は砂塵の大鷲に指示を出しゴブリンへ攻撃を始める。砂塵の大鷲は羽を羽ばたかせ、一瞬のうちにはるか高いところまで飛び立つ。十分な高度まで飛び立つと姿勢を変えて一気にゴブリンめがけて急降下を始める。


「あんなに早いのか。さて、ゴブリンは……気づいてないみたいだな」


 砂塵の大鷲の飛行能力に感心しつつ、目標のゴブリンへ目をやる。ゴブリンは最初見た時と同じように歩いている様子が見える。上空から敵が近づいているとは知らずに歩き続けついにその時が来る。少し離れているにもかかわらず、空太の耳に鈍い音が入り、ゴブリンが吹き飛ぶ光景が目に入る。


「うわぁ、嫌な音だな。それに一撃か」


 飛ばされたゴブリンは宙を舞い地面を転がっていく。完全に停まるとゴブリンはピクリとも動くこともなく体が光の粒子へと変わった。


「とりあえず一体……だよな?召喚したカードで倒しても討伐にカウントされるよな?」


 不安に思い空太は冒険者証の裏面を見る。そこには『討伐数:ゴブリン……1』と書かれてあった。


「よかった。俺自身が倒さないとカウントされないんだったら、召喚したカードがほとんど意味をなさなくなるし。よしこのまま探して討伐を続けるか」


 砂塵の大鷲が撃破で無事討伐数がカウントされることが分かると次のゴブリンを探して歩きだす。


「それにしても全然遭遇しないな。こんな草原の中にはいないのかな。そうだ、砂塵の大鷲、さっきの緑色の生物が周りにいないか空から見てくれないか?」


 すると再び羽を羽ばたかせ飛び上がる。しばらくするとゆっくりと降りてきながら今まで歩いていた方向とは違う方へと移動し始める。


「ん?向こうにいるのか」


 空太は砂塵の大鷲の後をついていく。すると3体のゴブリンの姿が目に入った。


「3体もいる。スキルを使用してみるか。砂塵の大鷲、砂嵐だ」


 空太が指示すると砂塵の大鷲は羽を強く羽ばたかせる。すると羽ばたきによって風が吹き始める。


「こんな風にスキルを発動するのか」


 徐々に風は強くなっていき地面の砂が一緒になって飛び始める。風下にいるゴブリンは砂交じりの風が目に入りのたうち回る


「ゲームだとこれから相手の攻撃が始まるけど、実際にはそんな雰囲気じゃないな。攻撃するどころかのたうち回っているし」


 空太は腰につけていたナイフをスラリと抜きゴブリンへと近づいていく。一番近くのゴブリンへ近づいたときナイフを構えた手は震えていた。


「直接攻撃するのは初めてだな。この世界にいる以上いつかはやらないといけないんだが、いざ目の前にすると手が震えてくる」


 今まで大きな生物へ攻撃などしたことないため異種族のゴブリンに手を出すことにためらいが生じる。


「すー、はー。よし、覚悟を決めた。まずは一発」


 深呼吸をして空太はゴブリンへナイフを突き立てる。目に入った砂で苦しんでいたゴブリンは突然体に鋭い痛みが走り悲鳴が漏れる。


「この感触好きになれそうにないな。できるだけやりたくないな」


 もう一度ナイフを突き立てる。すると苦しんでいたゴブリンはだんだんと動きが止まっていき光の粒子へと変わる。


「1体倒したんだ。砂塵の大鷲、残りは任せる」


 空太はナイフを収め指示を出す。空太の初めての実践は一方的なものだった。


「はぁ、自分で攻撃はあんまりしたくないな。召喚したモンスターに指示を出して戦う方がやりやすい」


 そう思いながら大鷲に指示を出していった。

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