第44話 戦う者
「ナドロウ、もうお前じゃ敵わないって」
「エスロフ、それはわからないだろう」
人垣の中では空太と同じくらいの歳の2人の男が剣を手に決闘を行っていた。エスロフと呼ばれた男はすました顔で剣を構え、対峙するもう一人の男――ナドロウは右目の下にある痣を隠すように手で覆いエスロフを見る。
「仕方ない、これで最後だ」
その声とともにエスロフが持っていた剣を構えナドロウへと詰め寄り剣を振り下ろす。
「ぐっ……。ここだ」
ナドロウは振り下ろされた剣を持っていた剣で受け止めるとそのまま滑らせ受け流す。エスロフの体勢が崩れたのを見たナドロウは地面を蹴り横へと飛ぶとそのまま斬りかかる。それを見た周りの人から「おおっ」と期待の声が上がる。誰もがこの一撃で終わると思ったがナドロウの右目の下にある痣から黒い靄が出るとともに剣はエスロフへと振り抜かれる前に止まってしまう。
「やっぱりここまでか。お前はもう戦えないんだ」
そう言うとエスロフはナドロウの腹部に蹴りを入れる。無防備な腹部を蹴られたナドロウはうめき声をあげてその場で横たわる。
「はぁ、やっぱり駄目か。さぁ皆散った散った」
1人の男がそう声を出すと戦いの行方を見ていた人々は少しずつその場を離れていく。戦っていたエスロフも少し残念そうな表情を浮かべると横たわるナドロウに背を向け歩いていった。しばらくするとそこには地面に倒れたナドロウと周りをキョロキョロとみるフォーチュンの二人になった。
「ヒール!……あの、大丈夫ですか?」
フォーチュンは周りに人がいないことを確認すると、ナドロウにヒールをかける。ナドロウは苦悶の表情を浮かべていたがヒールをかけられると徐々に表情が和らいでいく。それとともに右目の下の痣も消えていく。
「……うぅ。助かった、ありがとう」
そう言いながらナドロウは立ち上がると、服についた土埃を手で払い落す。
「改めてありがとう。俺はナドロウ、君は?」
「フォーチュンです。その、大丈夫ですか?無理はしないでください」
「うん、おかげで……」
「ナドロウ、またお前か!」
「やべ、警備兵だ。いつか礼はするから」
ナドロウがそう言いかけたところで遠くの方から大声でナドロウの名前を叫びながら男が走ってくる。それが聞こえた途端ナドロウは男とは反対の方へと走り去っていった。
「戻りましょうか、結構時間も経ちましたし」
そう呟くとフォーチュンは来た道を戻っていった。
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